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今回紹介するのは、ドリフト界のレジェンド”のむけん”こと野村謙選手の愛機。群雄割拠のD1グランプリで頂点を奪取するべく、2004年シーズンから実戦投入(第2戦)されたBLITZワークスの“ER34’04spec”だ。R34スカイラインの中古車相場を引き上げたほどの存在、ジックリと見ていこう。(OPTION誌2004年7月号より抜粋)
ブリッツワークス渾身のD1スペック
1200キロの軽量ボディで2ドア勢と真っ向勝負!
「おいどんの印象は“でかいシルビア”やね。前のマシンに比べてかなり軽くなっとるから、動きがめちゃ早い。クイックイッと向きが変わるとですよ」と、ニューマシンの印象を語るのむけん。
シルビアをはじめとする2ドア勢と真っ向勝負できる戦闘力を求めて、ブリッツが本気で手がけたER34スカイライン2号機、細部を見ていこう。
まずボディ。無駄なパネル類をカットしながら、プレート補強やスポット増し、フル溶接ロールケージ等、レーシングカーさながらの剛性アップ術を敢行。室内は鮮やかなキャンディブルーでペイントされ、非常に美しい仕上がりだ。
軽量化も重要なテーマのため、FRPやドライカーボンといった軽量パーツを大量投入。結果、高剛性を確保しながら、ストック状態から200kg以上減となる車重1200キロを実現。シルビアをはじめとする2ドア勢にも引けを取らないほどの軽さを手にしたのだ。
また、ER34はリヤが軽すぎてトラクションがかかりにくい。対策として従来モデルはウエイトを積んでいたが、その重量増を嫌ってニューマシンは60LのATL製安全タンクをトランク内に設置。ウエイトの役割も兼ねているため、設置位置には相当気を使ったという。
エンジンは水回りの良さと可変バルタイ機構を活かす意味で、ER34のRB25をベースとしている。エンジン本体はRB26用のピストンとクランクを使い、ハイブーストを可能にするべく燃焼室の形状を変えてローコンプ化も実施した。
吸気にはRB26純正の6連スロットルを移植。シングルスロットルに比べると中高回転域のトルクは細くなるが、これは多連スロットル特有のハイレスポンスなフィーリングを優先した結果だという。組み合わされるタービンは、ブリッツのK5-660Rだ。
冷却系のレイアウトも独特。インタークーラーとラジエターのコア位置を極端にオフセットさせて、インタークーラーはグリル位置まで上げられている。効率良く両コアにフレッシュエアを導入するための策だ。
サスペンションはザックスのSP7。2003年モデルに比べて車重が軽くなったので、それに合わせて減衰力とスプリングレートは大幅に弱められている。また、当初はフルピロ仕様だったが、あまりにもピーキーな特性になってしまったため、逃げを作ってマイルドな特性とするべく全て強化ブッシュに変更されている。
セット的にはフロントを重点的に補強していることもあって、前後でかなり変則的。スプリングはフロント9kg/mm、リヤ10kg/mmでテストを進めたが、それでもフロントの入りが悪かったため、フロント8kg/mm、リヤ10kg/mmで落ち着かせている。
エアロパーツはURASのD1スペック2で統一。フェンダーもURAS製で、フロントが片側20mm、リヤが片側40mmというワイド設定だ。ボンネットはヒンジごとBNR34用のカーボンモデルを使う。
ホイールはブリッツが販売する18インチのテクノスピードZ2。ホワイトのボディに美しく映えるメタルシートのグラフィックは、D1の実況を担当する鈴木学氏による作品だ。
このマシンの戦闘力は凄まじく、実質シェイクダウンとなった第2戦のSUGOではベスト4まで駆け上がり、続く第3戦のエビスで見事にD1初優勝を遂げたのだ。悲願が実り、人目をはばからず泣きながら抱き合うブリッツ阿部メカと野村選手の姿はとても印象的で、美しく見えた。
●取材協力:ブリッツ TEL:0422-60-2277
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