「この圧倒的な色気は何なんだ!」初代NSXに愛を捧げ続けるホンダマニアの物語

チューニングの原点は日本のOPTION誌だった!?

心臓部はC32B改スーパーチャージャー仕様で425馬力!

アメリカのクルマ好きにとっても、NSXは別格の存在だ。それは今回のロケ中に、「おい見ろよ、NSXだぞ!」と言っては立ち止まり、我々に声を掛けてきた人の多さでも窺い知れた。

ただ、それは単にNSXだからというだけではなく、オーナーであるアンソニー・バレンズエラが作り上げた迫力溢れるワイドボディのオーラがそうさせたのかもしれない。

初めて買ったシビックでクルマいじりを覚え、90年代にはフルチューンしたインテグラでストリートレースに興じてきたアンソニー。彼がそんな道に進むきっかけを作ったのが、何を隠そうOPTION誌である。

「子供の頃に連れて行ってもらったカーショーで、たまたま誰かがOPTIONを持ってたんだよ。ページを開いた瞬間に頭がぶっ飛んじゃったんだ(笑)“なんだこの世界は!”ってね」。それからというもの、リトルトーキョーにあった日系スーパーで欠かさずOPTIONを購入。日本語の意味は分からずとも想像力を掻き立て、チューニングに邁進してきた。

現在所有しているNSXは2台目だが、シビック、インテグラと続いてNSXに到達したことを、アンソニーは「ナチュラル・エボリューション(自然な進化)」と表現。生粋のホンダ好きとして理想的なステップアップを果たし、それらをベースにずっとチューニングを楽しみ続けていることへの自負を滲ませる。

リヤミッドに搭載されるC32B型V6エンジンには、コンプテックのスーパーチャージャーキットを搭載。レキサンポリカーボネート製のハッチ越しに見えるスーパーチャージャーにポリッシュを加え、ショー映えする色気も加えた。

北米仕様のNA2はノーマルの最高出力が290hp(約294ps)だが、スーパーチャージャーだけでも60〜70psの上乗せを期待できる。だが、アンソニーはそれでも飽き足らず、燃え方が穏やかなことから高出力化に向いているE85を燃料に使ったフレックスフューエルも採用。

そして、吸気中に取り込む酸素量を強制的に増やすAEMのウォーターメタノールインジェクションも追加し、最高出力は420hp(約425ps)に達している。

ARCのインダクションボックスとチタンエキゾースト、フロントにマウントされるラジエターも備え、ワンオフのシュラウドと電動ファンも追加。Studio RSRのエンジンバーの色は、室内のカスタムロールケージとともに、ブレンボのキャリパーと合わせてイエローで統一した。

ホイールはフロント17インチ、リヤ18インチのボルクレーシングCE28を装着。タイヤにはトーヨーのプロクセスR888Rを組み合わせる。車高はBCのコイルオーバーで下げているが、スタンスパーツ製のエアカップも組み込む。

ブレーキはドリルドローター採用のブレンボ製ビッグブレーキ。右リヤのインナーフェンダーにはセトラブのオイルクーラーを設置する。

レカロのポールポジション・フルバケットシートはNSX-Rをイメージしつつ、レザーとアルカンターラで上質な質感を狙った。合計8本持っているというステアリングホイールはその日の気分で変え、撮影時はナルディクラシックのウッドステアリングをチョイスした。

純正の灰皿があった位置には、エアリフト用の昇降スイッチをスマートにインストール。トランク内にエアタンクを仕込み、前後それぞれ3インチほどのリフトアップを実現する。

ユニークなのは本来純正のナビゲーションが収まるモニター部分で、gaugeARTのCAN Videoゲージアダプターを使ってデジタル端末にAEMインフィニティからの信号をVGA出力。グラフィックもオリジナルデザインで、真ん中のブースト計にNSX SUPERCHARGEDと表示されている。

エクステリアには、日本のマルガヒルズ製片側30mm前後ワイドボディキットを装着。ミラーはガナドール、カーボンエンジンスクープはアイズインパクト製だ。

さらに脱着式のタルガトップに代わり、何とドライカーボンで製作した4ピースのルーフパネルまでもインストール。北米仕様のNSXはアキュラからリリースされているが、あえてHマークが付く日本仕様のテールでJDM化しているのだ。

かなりアグレッシブなルックスを手に入れたが、それでいてペイントは敢えて元色である純正のシルバーストーンメタリックを使用。カリフォルニアの陽の光を浴びると色っぽく陰影が浮かび、道行く人々の足を止めてしまう。

「今も月に1〜2回は峠を走りに行くんだ。ショーカーにするつもりは全くないよ。走ってなんぼだからね!」。OPTION誌を教科書に育ったアメリカ人が体現する、速さとカッコ良さを兼ね備えたJDMチューン。もはや日本のマニアにとっても垂涎の拘りが炸裂している。

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PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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