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専用エアロ装備のわりにはやる気を感じないスタイル!
カローラ系の珍モデル「シンプレア」の魔力
海外仕様に比べてひと回り小さい国内専用5ナンバーボディを持ち、“アクシオ”というサブネームが与えられた140系カローラ。トヨタを代表する伝統の車種でありながら、クルマ好きでさえそのフォルムをパッと思い出せないであろう薄幸の1台だ。
発売は2006年10月。1.8L直4の2ZR-FE型(136ps/17.8kgm)を搭載するラグゼールと、1.5L直4の1NZ-FE型(110ps/14.3kgm)を載せるG、Xの3グレードで展開し、ミッションは1.8L車に7速マニュアルモード付CVTが、1.5L車にはCVTと、実は5速MTも用意されていた。
その発売に合わせ、各グレードにラインナップされたのがモデリスタによって架装された“シンプレア”だ。『シンプルと上質の調和』をコンセプトとし、専用フロントエアロバンパーやフロントグリル、リヤスカートを装着。ベースとなったカローラアクシオの存在感が希薄なだけに、「見た目が少しスポーティ?」くらいの印象しか受けなかったりする。
というか、ローダウンサスが組まれた『スポーツM』が同時に発売され、2009年1月にはターボ仕様の1NZを載せる『GT(TRDターボ)』が登場したものだから、シンプレアはすっかり忘れ去られた存在になってしまった。その証拠にウィキペディアでカローラを調べてみても、シンプレアに関しては情報が一切ないのだ。
取材車両のオーナーに話を聞くと「車種には拘らず、2.5LまでのMT車を探していたんです。そこで出てきたのがコレ。最初はアクシオって?という感じでしたから、特装車と言われてもピンときませんでしたね」とのこと。
エンジンは、バルブ駆動方式やスロットルが見直された1NZ-FE型。NCP13ヴィッツRSに搭載される同型エンジンに対して最高出力のカタログ値は1psアップの110psとなる。一方の最大トルクは0.1kgmマイナスの14.3kgm。その発生回転数は4200rpmから4400rpmへとわずかに向上している。
ダッシュボード周りはベースのGと共通。曲面を多用したなめらかなデザインとされるなど、大衆セダンのカローラでもキッチリと作り込まれてるのがトヨタ車らしい。
メーターパネルはスピード&タコを中心に、右側に燃料計、左側に水温計を配置。シンプルで視認性に優れる。
上にオプション設定される純正オーディオ(5.8インチディスプレイ+CDプレイヤー+AM/FMチューナー)、下にエアコン操作パネルが並んだセンターコンソール。
よく言えばシンプルだが、コストダウンの跡が見て取れる、なんともそっけないシフトノブ。基本クルマはノーマルで乗りたいというオーナーも「さすがにシフトノブは交換しようと思ってます」とのこと。
シートを始めとした内装もベースのGに準じたもの。ベージュ系の内装色が明るく落ち着いた雰囲気を演出する。実用セダンだから当たり前だが、前席はサポート性よりも座り心地や乗降性を優先した設計。
後席はセンターにもヘッドレストが備わり、アームレスト前端にはドリンクホルダーも設けられる。
専用エアロで見た目は少しスポーティだが、基本やる気が感じられない実用セダン。完全にノーマークだった140系カローラアクシオで、生意気にも持ち込み登録車として扱われるシンプレアは、MT車の中でも意表&盲点を突く1台として要注目だ。
■SPECIFICATIONS
車両型式:NZE141
全長×全幅×全高:4465×1695×1460mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1120kg
エンジン型式:1NZ-FE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:75.0φ×84.7mm
排気量:1496cc 圧縮比:10.5:1
最高出力:110ps/6000rpm
最大トルク:14.3kgm/4400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR185/70R14
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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