「この軽トラはクレイジーすぎる・・・!」隼エンジン換装の三菱ミニキャブが全米タイムアタックシーンを揺るがす!?

これが軽トラ究極バトルフォームだ!?

攻撃的ワイド&ロースタンスも見どころ!

日本伝統のワークホースである“軽トラ”。なぜか最近アメリカで妙に流行っており、一般的には広大な農地の移動手段などとして使われている。だが、我々の知る限りタイムアタックマシンとして使おうとしているのは、フロリダ州でプロショップ『アタッキング・ザ・クロック・レーシング』を経営するショーン・バセットをおいて他にいない。

ショーンは自ら製作したマシンで全米のタイムアタックシリーズに参戦する他、ヒルクライムの一大イベントであるパイクスピークでも実績を残すビルダー兼ドライバーだ。彼の代表作はフルカーボンワイドボディを纏ったダットサン240Z(S30型フェアレディZ)で、アメリカでは抜群の知名度を誇っている。

そんな彼が満を持して2023年のSEMAショーに出展したのが、カーボン製のワイドボディを備えた90年式三菱ミニキャブ。世間は「なんじゃそりゃ!?」と蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

ショーンがミニキャブを購入したのは1年半ほど前のこと。ショップやピットでタイヤを運ぶのに良さそうと面白半分で購入したのだが、あまりに運転が楽しくて毎日通勤に使っていたそうだ。

「いつもショップに240Zと並べて止めてあったんだけど、毎日見比べてたら軽トラもZと同じカーボンボディだったらクールだろうなって妄想が止まらなくなったんだ(笑)。それから“Kei Truck Time Attack”で検索しまくったんだけど何にもヒットしなくて、もしかしたら前人未到のチャレンジかもって思っちゃったんだよね」。

そうは言うものの「まるでスクールバスを運転しているみたい」なミニキャブが、タイムアタックには圧倒的に不利であることはショーン自身がよく分かっていた。いまいち踏ん切りがつかなったところ、「やってみたら」と励ましてくれたのが奥さんのジェイミーである。

愛妻の一言に背中を押され、ミニキャブにメスを入れる決心がついたショーン。来年のタイムアタックシーズンを見据えるプロジェクトはまだ現在進行形だが、その詳細を明かしてくれた。

まず、リヤサスペンションはS13のサブフレームを利用したオリジナルの4リンクにコンバート。フロントも純正サブフレームを加工して当面はノーマルのジオメトリーを保っているが、ブレーキと合わせて今後の改善点とのことだ。車高はモートンの車高調で7インチ(約18cm)ダウン。元々4WDだが、フロントアクスルを取り除いて後輪駆動に変えてある。

最大の見せ場であるワイドフェンダーとエアロパーツは、ショーンが自らカーボンパネルで製作。荷台とインテリアのダッシュパネルもカーボン製だ。

エンジンはスズキハヤブサの1.3Lに換装予定。カーボン製の荷台には、燃料を供給するインタンクコレクター付きのRadium製6ガロンフューエルセルを搭載してある。

CSFのデュアルパスラジエターとオイルクーラーも荷台の両サイドに備え、風が届くようカーボンダクトも設置。フィッティングやホース、オイルキャッチタンク、リモートオイルフィルターなどは、ショーンがアメリカ国内の代理店を務めるイギリスのHELパフォーマンス製を使用する。

ファニーな見た目がショーンのお気に入りでもある丸目フェイスには、カーボンに置き換えたバンパーとLEDヘッドライトを装備。さらにエアダム、スプリッター、カナード、フロントフェンダーも全てカーボンでワンオフ製作した。

荷台を取り囲むサイドパネルとサイドシル、ベッド、アオリ、さらには軽トラにあるまじき攻撃的なリヤディフューザー&マフラーも、ショーンのハンドメイドだ。大型のGTウイングとドアミラーだけはAPR製で、テールライトのクリアレンズは「ネットで探しまくって、唯一見つけることができたミニキャブ用アフターパーツ」とのこと。

これほどタイムアタックに不向きな環境もないであろう軽トラの室内に、サベルトのフルバケットシート2脚を装備。カーボンで作ったダッシュパネルにはハルテックのフルコンであるエリート750、PDMのPD16とスイッチパネル、デジタルメーターのIC-7をマウントする。

ステアリングにはショーンが経営するショップのオリジナル商品であるボタンボックスを装着。ボタンは配線次第でクラクションや無線、あるいはNOSやブーストコントローラーなどに使用できる。

「やるべきことはたくさん残っているけど、240Zと一緒にグリッドライフ(全米各地で開催されるタイムアタックイベント)やパイクスピークに持って行くのが今の目標。きっちりタイムを出して、みんなに目標とされる軽トラにならなきゃね(笑)」。

ミニキャブについて話すショーンはいつも、ただただクルマが好きな少年のような笑顔だ。

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PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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