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トヨタの最高傑作“2000GT”を自分色に染め上げる
名匠たちが作り上げた憧れの貴婦人
数々の名車を生み出してきた国産スポーツカー史において、誕生から約50年が経過した今もなお一等星のごとく強い輝きを放ち続けている存在、トヨタ2000GTだ。
このクルマはトヨタがヤマハとの共同開発によって誕生し、エンジンは当時最新鋭だった直列6気筒2.0Lの3Mエンジンに、ヤマハが開発したツインカムヘッドとソレックス40φキャブを組み合わせることによって150psのパワーを発揮。なんと、これこそがレース用を除く、日本初の市販6気筒ツインカムエンジンなのだ。
市販される前年にはOPTION誌でも馴染み深い谷田部高速周回路にて、FIA公認のスピードトライアルにチャレンジして3つの世界記録を樹立することに成功。カタログで220km/h以上とうたわれていた最高速は、約20年後となるFC3SやZ31が登場する時代まで国産車トップの座をキープしていたのだから、その速さたるやまさに空前絶後。誰もが驚く超高性能マシンだったのである。
そして、2000GTのもうひとつの大きな魅力である流麗なフォルムは、パネルの成型から溶接に至るまで、全て熟練した職人によって作られていた。さらに、インパネのローズウッドパネルもヤマハが持っていたピアノ作りの技術を活かして仕上げられていたというのは有名な話だ。
当時の新車販売価格は238万円。現在の紙幣価値で換算すると1500万円とも2000万円とも言われている高価格もあるが、実際問題として手作業の部分が多かったために大量量産することは難しく、1967年からの4年間で生産されたのは、わずか337台にすぎない。この数はフェラーリF40/F50/エンツォよりも少ないのである。
今回取材させてもらったのは、有名チューニングパーツメーカーの番頭として活躍し、現在はプライベートガレージで旧車チューニングを楽しんでいる方の愛車だ。完全ノーマルではなく、各部に手が入れられている珍しいチューニングカーでもある。
ちなみに、2000GTには前期と後期が存在するが、それらを見分ける最も分かりやすいポイントがクリアカバー内のフォグランプの大きさ。取材車両は小型ユニットとなっているので後期だ。
フロントフェンダーのエンブレムは七宝焼。フロントタイヤの後ろにあるリッド内には右がバッテリー、左には本来エアクリーナーなどが収まっているのだが、この車両はエアクリーナーではなくオイルキャッチタンクが収められていた。
軽量化のために鋳造マグネシウムホイールを純正採用。さらにブレーキは国産初の4輪ディスクとなっていることからも、当時としては2000GTがいかに先進的だったかが理解できるだろう。
今回はオーナーのご厚意によって2000GTのハンドルを握ることができたのだが、そのフィーリングは意外にも穏やかなものだった。純正ソレックスではなくOER45φが組まれた3Mエンジンは1発で目覚め、トップエンドまで気持ち良く吹け上がる。とても40年以上も前のものとは思えない速さと楽しさだ。
クルマ好きなら誰もが憧れる国産スポーツカーの金字塔だが、それを手に入れ、動態保存することなく自分色に改造して各地を走り回るオーナーの心意気には感服だ。
■SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:4175×1600×1170mm
ホイールベース:2330mm
車両重量:1145kg
エンジン型式:3M
エンジン形式:直列6気筒DOHC24バルブ
排気量:1988cc
最高出力:150ps/6600rpm
最大トルク:18.0kgm/5000rpm
ミッション形式:5速MT
サスペンション形式:FRダブルウィッシュボーン
ブレーキ(FR):ディスク
ホイールサイズ(FR):5.0J
タイヤサイズ(FR):165HR15