「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?

ランエボパーツ流用でG63Bエンジンを365馬力まで増強

部品取り車を集めているうちに、ナローボディとワイドボディをコンプリート!?

今やグレビーシマウマ並みの絶滅危惧種!? となっている三菱スタリオン。現物を目の当たりにするのは、果たして何年ぶりのことか。個人的にはトヨタ2000GT以上にレアな存在な気がするが……。

スタリオンと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはり1984年に公開された映画『キャノンボール2』だろう。ジャッキー・チェンがコドライバーを務める黒のスタリオンは、三菱ワークスが密かに送り込んだ秘密兵器満載のハイテクマシンだった。

ちなみに、車名のスタリオン(STARION)は“種馬”を意味する“STALLION”ではなく、“STAR(星)”とギリシャ神話の英雄ヘラクレスの愛馬“ARION”を合わせた造語である。

A16系ギャランΣのプラットフォームを利用し、1982年にデビューしたスタリオンは、普通車としては三菱最後のFRスポーツモデル。1990年の生産終了までの約8年間で様々なバリエーション展開がなされたが、大きく分けると標準とワイドという2タイプのボディと、2.0Lと2.6Lの2タイプのエンジンということになる。

中でも最もレアな存在が、2.0LのG63B型インタークーラー付きターボエンジンを搭載したワイドボディの2000GSR-VR。車両型式はA184A。1987年に限定50台で発売し、実際には約70台が生産された。

全幅はナローボディの1695mmに対し、ワイドボディは1745mmの3ナンバーサイズ。ただし、同じワイドボディでも2600GSR-VRとはフロントスポイラーの形状が異なっていたりする。

そんな貴重なマシンをベースとしたチューンドマシンに、今も現役で乗り続けているのがNさん。高校時代から憧れ続け、26年前に友人が乗っていたものを譲り受けた。

ところが、期待に反してそれまで乗っていたマツダのFC3S型サバンナRX-7に比べると力不足だったため、パワーを求めてチューニングを開始。ブーストアップやタービン交換などを経て、ついにはエンジンから駆動系、足回り、ブレーキまで、全てを自らの手でフルチューンしてしまったのだ。

その中でも注目すべきは、ギャランVR-4のDOHCヘッド流用だ。同じG63系エンジンとはいえ、横置き用にレイアウトされたヘッドを縦置きブロックに組み合わせるには、ブロック側の水穴加工や冷却水の取り回し変更が不可欠となる。

そしてDOHC化において最大の壁となるのがインマニの加工。一般的にはVR-4用をベースに逆転させるが、Nさんの場合はランサーエボリューションIII以降のインマニを削り出しのポート変換アダプターを介して装着しているのがポイントと言える。

腰下は東名製1mmオーバーサイズピストン装着で2043ccに排気量アップ。コンロッドは純正を鏡面加工、クランクシャフトはバランス取りしたものが組み込まれる。

また、ウォーターポンプ加工によってウォーターラインも独自の取り回しとしている点に注目だ。

タービンは純正のTD05よりも大型のTD06Hをセット。EXマニをワンオフ製作してオーバーヘッドマウントとしている。それに合わせてインタークーラーも大容量のランエボIV用を流用。パワーはノーマルの170psから365psまで向上している。

この他、エンジン制御の要となるエアフロメーターは、エボVI純正のホットワイヤータイプ。インタークーラーはエボIV純正。ドライブトレインもミッションとデフ、ドライブシャフトまでフルに2600GSR-VR用を総移植。前後ブレーキキャリパー&ローターはGTO用に変更と、オール三菱大流用祭!?な仕上がりとなっているのだ。

パワーを主張する砲弾型マフラーはステンレス製のワンオフ品。ミッションやデフ、ドライブシャフトは2600GSR-VR用を流用。クラッチはFC3S用の強化品を加工して流用している。

追加メーターがずらっと並び、ロールバーも装着されたインテリア。純正メーターは中央にブースト計を配したアナログ3眼タイプで、コーンソールに各種スイッチを配置。2000GSR-VRは5速MTのみの設定だった。

「パーツの無さがマイナー車種の泣きどころ。10年以上前から他車種と供用のものしか出ないので、いざという時に備えて部品取り車を集めてたら…」と、意味深に語るNさん。聞けば、こうしてスタリオンを集めまくった結果、実働状態でナローボディ(NA、ターボ)、ワイド(2.0L、2.6L)をコンプリートしてしまったというから、これは改めて取材するしかないですな……。

■SPECIFICATIONS
車両型式:A184A
全長×全幅×全高:4410×1745×1320mm
ホイールベース:2435mm
トレッド(F/R):1465/1425mm
車両重量:1240kg
エンジン型式:G63B
エンジン形式:直4SOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ85.0×88.0mm
排気量:1997cc 圧縮比:7.5:1
最高出力:170ps/5800rpm
最大トルク:26.0kgm/3000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(FR):ストラット
ブレーキ(FR):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(FR):215/60R15
※数値はノーマル車のもの。

1 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の1枚めの画像

2 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の2枚めの画像

3 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の3枚めの画像

4 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の4枚めの画像

5 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の5枚めの画像

6 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の6枚めの画像

7 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の7枚めの画像

8 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の8枚めの画像

9 / 9

「「限定50台のスタリオン2000GSR-VRをイジる!」4G63ヘッドを載せてDOHC化!?」の9枚めの画像

TEXT:川崎英俊(Hidetoshi KAWASAKI)/PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

「これぞ現代版の三菱スタリオン2600GSR-VR!」350馬力をイージーに楽しめるデジタル仕様の全て

記事が選択されていません

「三菱スタリオンに魅了された男の情熱」エンジンはグループAパーツで鍛え上げた至宝の340馬力仕様!

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption