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ボンゴにロータリー&MTミッションを搭載!
羊の皮を被った狼とはまさにこのこと!?
それは2021年5月、ゴールデンウィークのこと。ワンボックス車の後ろ姿を撮影した1枚の画像がLINEで届いた。送り主は、以前紹介したハードトップ20B換装仕様&セダンV6-3000ロイヤルクラシックを所有する変態的HCルーチェのオーナーだ。
それがボンゴブローニイワゴンということはすぐに分かったのだが、ひとつ解せなかったのがリヤゲートに貼られた『BRAWNY RE』という、カッティングシートで自作したであろうステッカー。
「ロータリーエンジン仕様? まさかなぁ…」と思ったら、その“まさか”だったのだ。もちろん、こんな極上のネタを放っておくはずがなく、取材班は北海道へと急行。目指すは、そんな笑撃の問題作を手がけた旭川の“アルファ自動車”。元々、マツダディーラーに勤めていた代表の高島さんが1987年に創業したショップだ。
そして、いよいよ待ちに待ったボンゴブローニイワゴンとご対面。助手席座面を引き上げてもらうと、見慣れたインマニ&スロットルボディが現れた。そのありえない光景にゾクゾク感が止まらなかったのは言うまでもない。
ベースエンジンはFD3Sに搭載される13B-REWだが、まずシーケンシャルツインターボユニットを取り外してNA化。輸出用ローターを組むことで、圧縮比を9.0から9.7へと高めている。制御系を担当するのはお約束のパワーFCだ。
ミッション本体はSA22C用5速MT。その後端にシフトを動かすメカユニットが組み合わされる。元のミッションに比べると1速がハイギヤード(3.958→3.674)だが、ゼロ発進時にとくに気を遣うことはない。むしろ高回転域を得意とする13Bとの相性は良く、1速でも伸び感を味わえる。
高島さんいわく、「苦労したのはシフトリンケージの取り回しだね」とのこと。2本のロッドで繋がった複雑なリンクを見れば、その言葉にも納得だ。RF型エンジン搭載の時と変らなかったミッション後端の位置。そのため、プロペラシャフトはブローニイワゴン用をそのまま使うことになった。
エキゾーストマフラーはワンオフの左右2本出し。恐らくスペース的な制約からだと思うが、サイレンサーを90度傾けて縦型に配置してるところが技あり感満点だ。リヤサスペンションはリーフリジッド式、ファイナル比はノーマル4.777で変更なし。
内装は基本的にノーマル。メータークラスターは右側にリヤデフォッガー、左側にリヤワイパー&ウォッシャーの各スイッチが設けられる。フロアシフトは前後、左右方向ともにストロークが大きい。ちなみに、シート配列は3-3-3で9人乗りとなる。
お待ちかねの試乗タイムだ。アイポイントが高く、腰かけるようなポジションは紛れもなくワンボックス車のそれ。キーをひねると、くもりがちな音で圧縮感が希薄なクランキングのあと13Bが目を覚ます。クラッチペダルを踏み込み、長いシフトレバーで1速を選択。軽くアクセルペダルを煽りながらクラッチを繋ぐと、ブローニイはスルリと動き出した。
まずは3000rpmを目安にシフトアップ。思っていた以上に低中速トルクがあり、3人乗車で走る分には不満なし。しばらく流したら、今度はアクセルを深く踏み込んでみる。タコメーターの針が4000…5000を軽く超え、パワーを一段と高めながら6500rpmオーバーの領域に突入していく。
これは文句なしに速い!! さすがロータリーエンジン、その吹け上がりに全くストレスを感じないし、まだまだ上まで回せるのも確実だ。さらに、ワンオフマフラーが奏でる乾いたロータリーサウンドが痛快すぎる。
一方、足回りはノーマルなので、乗り心地が良い代わりにロールもピッチングも大きく、ハンドリングはワンボックス車そのもの。ひとつ付け加えるなら、ボディ四隅の感覚が掴みやすく前輪も大きく切れてくれるため、やたらと取り回しが良いことだ。
オーナーの長年の夢がカタチになった13B搭載のボンゴブローニイワゴン。こんなクルマを生み出してしまうのだから、やはりチューニングは面白い!
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)