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ボルトオンターボ仕様で180馬力を発揮
超希少モデルをガチでチューニング!
1995年にスズキが発売したX90(エックス・ナインティ)。基本コンポーネントはジムニーの兄貴分でもあるエスクードショートボディと共用で、モノコック構造ではなく、頑強なラダーフレームの上にボディが載せられている。
そのフロントに縦置き搭載されるエンジンは、1.6LシングルカムのG16A型で100ps/14.0kgmを発生。それに5速MTまたは4速ATが組み合わされ、駆動方式はFRを基本としながら、トランスファーで4WDにも切り替えられるなど、オフロード走行を前提としたタフな設計となっているのが特徴だ。
ところが、個性的で泥臭さをまるで感じさせないのだが、どこかおかしなスタイリングや2シーターという特殊性が大きなアダとなり、販売業績は散々たるものだった。何より、デビューからわずか2年足らずで生産中止に追い込まれたことが全てを物語ってると言っていい。
そんな超珍車であるX90をベースにした稀有なチューンドを捕獲! 製作したのは、追加メーターで有名なDefiの広報マンこと廣江さんだ。
まず、アンダーパワーを解消すべくボルトオンターボ化。エンジン本体はヘッドガスケットまで含めてノーマルのまま、EXマニとフロントパイプをワンオフ製作した上でPS13純正タービンを組み合わせている。
なお、インタークーラーは現状のブースト圧(0.5キロ)が低いためレス仕様だ。また、ラジエターはノーマルのままでも水温は安定してるものの、油温はターボ装着前から120キロ巡航で120度を超えるなどかなり上昇気味。オイルクーラーの装着は必須だ。
合わせて燃料系も強化。ブーストが正圧に入る付近でエアフロ電圧がMAXに達して、純正180ccインジェクターが全噴射となるG16A。そこで、ブースト正圧域では縦軸を圧力、横軸をエンジン回転数としたトラストeマネージのマップで2本の550cc追加インジェクターを制御し、燃料を増量している。
最大パワーは179ps/22kgmを発生。カタログ値で1トン弱のボディに対して、すでに十分な動力性能を与えてくれているが、廣江さんの目標はもっと高いところにあったりする。いわく「このクルマでゼロヨン13秒台を狙いたいなって。だから本当は350psくらい欲しい」とのこと。
足回りはボルトオン装着できるテインのエスクード用ダンパーに、フロントエスペリア、リヤノーマルスプリングをセット。フロントはコイルオーバー化も考えているという。
ちなみに、リヤサスはリジッド式でストロークしても対地キャンバーが変化しないため、まさにゼロヨン向きの足回りだ。
インテリアはデフィの追加メーターが乱舞。9000rpmフルスケールのデフィレーサーゲージタコメーター80φの他、ダッシュパネル右端に燃圧、電圧計、メーターパネル内に水温/ブースト計、タコメーターの下にA/F計、センターコンソール下部に油温、油圧、排気温計がセットされる。また、曲げ加工を施すことでノブ位置を適正化したシフトレバーにも注目。
そしてエクステリア。全長はK12マーチ並みの3710mm、ホイールベースはNA/NB型ロードスターより65mmも短い2200mmと、じつにコンパクト。ホイールは、ジムニーやエスクードで定番のウェッズキラーフィールド。フロント5.5J×15、リヤ7.0J×16と異径サイズで、タイヤはフロントに195/55、リヤに225/50サイズのディレッツァスポーツZ1スタースペックが装着される。
前後異径タイヤによる前傾姿勢やボディサイドに入れられたフレアパターンは、アメリカのホッドロッドを意識してのもの。ワンオフステーを介して装着されたリヤウイングは1300mm幅のボメックス汎用品をベースにしている。
X90というだけでも珍しいのに、それをチューニングしてゼロヨン仕様に仕上げるという発想が面白すぎる。チョロQみたいな格好したクルマが、ドラッグレースでカッ飛んでいく姿を見てみたいものだ。
TEXT:Kentaro HIROSHIMA