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全長600mmストレッチのリムジン
ヨーロピアンとアメリカン、なんと2つのスタイルが存在
“走るシーラカンス”とまで呼ばれた初代の跡を受け、22年ぶりのフルモデルチェンジで駆動方式をFFに改めた2代目デボネアは1986年8月に登場。その1年後、1987年7月に発売されたのが、ここで紹介するデボネアVリムジンだ。
デボネアの最上級グレード、ロイヤルをベースに作られたこのクルマはそもそも生い立ちからして少し変わっていて、企画したのは三菱自動車本体ではなく、愛知(現中部)三菱自動車販売だったりする。つまり、販社スペシャルというわけで、600mmに及ぶボディストレッチはBe-1やフィガロなど日産パイクカーの生産でお馴染みの高田工業によるものだ。
そんなデボネアVリムジンの生産台数を知るべく高田工業と中部三菱自動車販売に連絡するも、どちらも「当時を知る社員がいない」との理由で撃沈。ダメ元で電話した三菱自動車広報部は、「販社スペシャルまでは把握してない」と、これまた暖簾に腕押しな回答だった。
が、取材を依頼したケイズ・ガレージ・インターナショナルによると、「生産台数は5台…らしい」という具体的な数字が…。真偽は定かではないが、あながち的外れでもないと思う。これがもし数十台レベルで売れていたなら、もっと話題になっていたはずだ。
当時のカタログを見ると、外装の仕上げによってヨーロピアンスタイルとアメリカンスタイルという2つのモデルが存在していたことが判明。
ヨーロピアンスタイルが、延長したセンターピラー部にウインドウを配し、Cピラーのリヤクォーターウインドウも残るオーソドックスな8ライト仕様なのに対し、取材車両のアメリカンスタイルは黒いレザートップ仕様でサイドウインドウはドア部のみ残し、さらにCピラーとリヤウインドウも形状が変わるなど、かなり凝った仕上げ。どことなくキャデラックの雰囲気を感じるので、アメリカンというネーミングにも納得だ。
続いて内装…というか後席。本来は装備される前席とのパーテーション兼キャビネットが外されていることもあり(つまり、セドグロロイヤルリムジンのロイヤルセレクションIに相当)、足元スペースが明らかに“おかしい”ことになっている。全長&ホイールベースはPAY31改とほぼ変わらないが、FFパッケージでフロアもほぼフラットゆえ、後席の広さ感は断然デボネアVリムジンに軍配が上がる。
また、センターアームレストにはオーディオ&エアコンのリモコンスイッチが備わり、その後方はティッシュボックスが収まるくらいの容量を持ったフタ付き小物入れとなる。さらに、リヤスピーカーボード中央にはリヤエアコンと連動して缶ジュースなどを冷やしておけるクーラーボックスも完備。
シートはホールド性よりも座り心地を重視したラグジュアリーな仕様。そのデザインも含めて、ソファと呼んだ方が相応しいかもしれない。運転席はリクライニングのみ手動、前後スライドと座面の高さは電動調整式となる。
ダッシュボードは手前にスラントさせることで開放感を演出。ステアリングスポークにはオーディオのリモコンスイッチが設けられる。スピードメーターとタコメーターを中心に、右側に水温計と燃料計、左側に電圧計とエアコンの作動状態を知らせるエアフローインジケーターを配置。
試乗して、強く感じたのはサイクロンV6の愛称で知られるエンジンの特性だ。2バルブSOHCで多球形燃焼室を持った3.0L V6SOHCの6G72(150ps/23.5kgm)なのだが、とにかく下からトルクが湧いてくるような味わい深いフィーリング。ゼロ発進から1600kgのボディをスルスルと加速させ、4速1500rpm、60km/hくらいで流している時が最高に気持ち良い。
それとロールやピッチは大きめだが、ストローク感がたっぷりある足回りも好印象。14インチ70扁平タイヤとのコンビで乗り心地はどこまでもマイルド、そこに3.3m超のロングホイールベースが加わり、安定感のある走りを見せる。
2代目デボネアと言うとAMGとか、イギリスの老舗高級紳士服ブランドが内装を手がけたアクアスキュータムなどもあったが、レア度の高さではデボネアVリムジン、コイツを凌駕するモデルは存在しないのだ。
■SPECIFICATIONS
車両型式:S12A改
全長×全幅×全高:5465×1725×1440mm
ホイールベース:3335mm
トレッド(F/R):1455/1420mm
車両重量:1600kg
エンジン型式:6G72
エンジン形式:V6SOHC
ボア×ストローク:φ91.1×76.0mm
排気量:2972cc 圧縮比:8.9:1
最高出力:150ps/5000rpm
最大トルク:23.5kgm/2500rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/3リンクトーションアクスル
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(F/R):195/70R14
PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:ケイズ・ガレージ・インターナショナル 千葉県柏市藤ヶ谷1573-1 TEL:04-7190-0512
【関連リンク】
ケイズ・ガレージ・インターナショナル
http://www.geocities.jp/ksgarage_international/