「初代カローラバンにスイフトスポーツのエンジンを搭載!?」実力派ショップの技ありレストモッドに迫る!

車重900キロ台のカロバンにスズキのM16A型はベストマッチ!

ミッションにはジムニーシエラ用をセットアップ

名車AE86のパワーユニットとしてはもちろん、コンパクトカーにも換装されるエンジンとして人気の4A-G型だが、困ったことに中古市場でのタマ数が猛烈に減りつつあって価格も絶賛高騰中。ローコストで大幅なパフォーマンスアップを図れるのがエンジンスワップの大きな魅力だと言うのに、肝心の中古エンジンが数的にも価格的にも入手しづらくなってしまったら、あえて4A-Gを選ぶ理由など無い。

そんな状況に危機感を覚え、4A-Gに代わる次期スワップ用エンジンを探していたのが“ダディーモーターワークス”の尾頭(おとう)代表。辿り着いたのはスズキのM16A型だ。いわく「ZC31S、32Sと2世代に渡ってスイフトスポーツに搭載されていたので、まず中古エンジンの数が多い。価格的にも非常にこなれてるので、ベースエンジンにピッタリなんですよ」とのこと。

そんなM16A型をFR車のパワーユニットとして使いたい…というプランを尾頭代表は温め続け、このCE71V型カローラバンでついに形にしたわけだ。

元々、横置きで設計されたエンジンを縦に搭載するのは、AE101や111の4A-Gをハチロクに載せるのと同じ感覚だ。しかし、M16Aは横置き搭載=FF車にしか存在しないため、FR車に載せようとした場合、ミッションをどうするか?という問題が出てくる。

もちろん、ベルハウジングを製作してトヨタのミッションを組み合わせるという手もあるが、お手軽感は半減するし、コストもかさむ。今後、M16Aスワップを積極的に展開していくにあたって重要なのは、「できるだけ安く仕上げられるエンジン換装メニュー」ということ。それが尾頭代表の強い拘りであって、エンジン換装に伴うミッション問題の解決策もすでに頭の中では出来上がっていた。

「確かにM16AはFF車用エンジンなんですけど、同じM型を縦置きしているFR車があるんですよ。それがM13Aを載せた先代ジムニーシエラ。実はそのミッションがM16Aにボルトオンで組み合わせられるんです」。

厳密に言えば、ジムニーシエラはFRベースのパートタイム式4WD。必要に応じて前輪にも駆動トルクを配分するトランスファーを備えているが、幸いなことにミッション本体とトランスファーは別体式となっている。つまり、トランスファーを外せばFR車用のミッションとして使えるのである。

搭載にあたっては、シャシー側のマウントを加工してミッション側のマウントをドッキング。プロペラシャフトは1軸がアルテッツァ用改で長さを調整、2軸にはハチロク用を組み合わせている。

エンジン&ミッションマウントやプロペラシャフトなど、現車に合わせて製作しなくてはならないパーツはあるが、エンジンとミッションをセットで換装できるメリットは言うまでもなく大きい。

なお、カローラバンに搭載されていた1.8L直4SOHCディーゼル(1C型)の出力は65ps/11.5kgmだ。対してZC32S用M16A型は136ps/16.3kgmと、カタログ値で比べるとパワーは2倍強、トルクも40%アップ(グロス表示の1C型とネット表示のM16A型なので、実際にはそれ以上の差)となる。

さらに、換装されたM16AはAE111用4連スロットルとワンオフφ42.7ステンレスEXマニが装着された吸排気チューン仕様。LINK G4モンスーンによるフルコン制御も行われるため、セッティングが決まれば実測140~150ps/18.0kgm前後のスペックを誇るに違いない。

ちなみに、カローラバン1.8Lディーゼル(CE71V)の車重はわずか980kg。しかも、換装によってエンジンもミッションも軽くなるため、少なくとも900kg台前半にまでウエイトダウンするのは確実だったりする。これでパワーが150ps近くもあれば、速くないわけがない。

2倍以上のパワーアップを受け止めるべく、足回りや操作系にも手が入る。フロントサスはメンバーごとハチロク用を移植。ボルトオンで装着でき、ステアリングもラック&ピニオン式に変更される。車高調はブリッツZZ-Rダンパーで、スプリングレートは5kg/mmだ。

フロント同様に、リヤサスもハチロク用ホーシングとリンク類を移植。ただし、コイルスプリングを使うハチロクに対して、CE71Vはリーフスプリング仕様。そのため、ブラケットを一度カットして別の箇所に新規に制作するなどの手間がかけられる。

また、本来リヤデフはKP61などと同じ6インチだが、ハチロク用ホーシングに交換することで6.7インチにサイズアップ。耐久性を向上させている点にも注目だ。

内装の作り込みも抜かりなし。ステアリングハンドルは、クラシカルなデザインのMOMOプロトティーポに交換。ダッシュボードは基本ノーマルのままとされているが、メーターパネルには9000rpmフルスケールのアナログ式タコメーターとデジタル式メーターを備えたエースウェル製オールインワンタイプと、PLX製空燃比計をセット。機能的に車両情報を集中管理する。

さらに、ノブにジムニー用を、ブーツにハチロク用をそれぞれ組み合わせたシフトレバーにも注目。できるだけ純正風に見せることは、細かいところにも貫かれているのだ。

内装で言えば、前席にZC32Sスイフトスポーツ純正を40mmダウンして装着してる点も見逃せない。「ノーマルシートが傷んでいたので、“じゃスイフトスポーツ用でも付けとく?”って軽く言ったんですけど、作業は大変でした」と尾頭代表。過去に何度も純正シート流用を行なってきた中で「難しい部類に入る」と断言したほどだ。

尾頭代表いわく「エンジンを開けてオーバーホールやチューニングする前提なら4A-Gもアリですけど、手軽にポン載せしたいなら断然M16Aがお勧め。車重が軽い旧車なら、エンジンがノーマルでも十分なパフォーマンスを発揮してくれますよ」とのこと。

旧車をオリジナルのまま乗り続けるのも良いが、パーツ供給の問題で維持しづらくなっていくのが現実。ならば、思い切ってエンジン(とミッション)を載せ換えて不安を解消するのはひとつの手だ。さらに、日常ユースでも扱いやすく快適性もアップする。ハードなチューニングだが、旧車を長く楽しむためのメニューとして、M16A型+ジムニーシエラ用ミッションの換装は注目なのだ。

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TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:ダディーモーターワークス 愛知県豊明市沓掛町神明13 TEL:0562-85-9911

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