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シートレールオフセットで作った極狭ドラポジがお好み!?
シリーズチャンピオンを狙って新車投入を計画!
90年代から幕を開けたドリフトブームも年月が経ち、ドリフト経験者を親に持つ二世ドライバーが多く活躍するようになった昨今。親が現役ドリフト選手という境遇を活かし、10代のうちから若くして頭角を表すドライバーも現れ、時代が大きく動きつつある印象だ。
そんな中、2024年3月3日に日光サーキットで開催されたD1地方戦セントラル開幕戦にて、ブレイク必至のニューカマーを発見! それが単走予選を1位で勝ち抜き、追走ベスト8進出の5位という成績を残した“茂木真那斗”選手。彼の年齢は何と12歳で、間もなく卒業を迎える現役小学6年生。父親は、現役D1GPドライバーとして知られる茂木武士さんだ。
真那斗選手がドリフトにチャレンジを始めたのは小学4年生の頃。だが、父の武士さんが話すのは、それ以前から感じていた彼のドリフトに対する“熱意”だった。
「実は僕が競技ドリフトの頂点を目指したきっかけは、息子から“お父さんがD1GPに出てるところを見たい!”と言われたからなんです」とのことで、父親が実際にD1GPへ参戦するようになってからは“自分もその場で活躍してみたい!”と、プロドライバーを本気で目指すようになったという。
それならば…と、父親が用意したのはオートマでノーマルのZ33。2ペダルでのドリフト練習は、アクセルとブレーキコントロールでの荷重移動を覚えるために最適で、群馬サイクルスポーツセンターの広場コースを拠点に、定常円、8の字、パイロン卍といった基礎を徹底的に教え込んでいった。
そんな真那斗選手のデビュー戦は、2023年のD1地方戦セントラル最終ラウンド(日光サーキット)。初参戦ながら単走予選2位通過/追走ベスト16進出という華々しい結果を残し、周囲のエントラントを驚かせたのだ。
参戦車両は、父親がD1GPの練習用として製作したS15シルビアだ。140cmという真那斗選手の身長に合わせて、ドライバーズポジションは大きく見直されている。
ちなみに、シート位置の調整は全てレール側で行なっていたりする。小柄なドライバー向けのフルバケを前&上方へオフセットし、普通なら膝がハンドルと干渉してしまうようなポジションへ。その一方で、シートのクッションはホールド機能を損なわないよう底上げなどはしていない。
ステアリングはディープコーンのMOMOドリフティング。かなり手前にステアリングを近づけているが、これは真那斗選手の好みとのこと。
ABCペダルは未加工で、市販のプレートを後付け。ただし、そのままではカカト部分が床面まで届かないため、アルミプレートをワンオフして操作性を高めている。
エンジンはSR20DETから2JZ-GTEへと換装済み。排気量アップ等は行っていないが、G25-1050タービンに最大ブースト圧1.5キロをかけて600psまで出力を稼いでいる。ミッションはサムソナス製のシーケンシャルドグだ。
フロントの足回りはワイズファブのアングルキットを装備し、フロントタイヤが転がりやすくドリフト中に踏んでいけるアッカーマンアングルでセットアップ。
リヤサスは調整式の3点アームのみで、車高調はDG-5ベースのウィステリアスペックでまとめあげる。
タイヤはフロントにシバタイヤR31の265/35R18、リヤにシバタイヤR23Tの285/35R19を履く。これらはD1GPマシンで使ったお下がりで、リヤのトレッドウェア280は本番用よりも硬いスペックだが、「日光ではこの状態でもエア圧を上げる(グリップを落とす)必要があった」というほど、マシンそのもののトラクション性能は高いそうだ。
2024年の目標は、ずばり地方戦セントラルのシリーズチャンピオン。また、父親の練習機を借りる立場から脱却するために、真那斗選手用の本番機をS14シルビアベースで現在製作中とのこと。若手の注目株として、さらなる活躍に期待したいところだ。(取材協力:FLUKE走行会)
TEXT&PHOTO:長谷川 実路 (Miro HASEGAWA)