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シャーシ裏まで磨きを掛けた全米トップクラスのカスタムマシン
100本を超えるトロフィーは魅せることへの執念の証明
OPTION誌に度々登場しているJDM系カークラブ『R-Rydes』は、レベルの高いクルマばかりが所属している事で知られる。カーショーに10台体制でエントリーすれば、10本トロフィーをゲットしてくるようなクラブと言えば、その凄さが伝わるだろう。
このG35は、そのR-Rydes創設者にして総帥であるランディの愛車であり、全米トップクラスのカスタムカーとして知られる1台だ。
ランディがこのクルマで「最も気に入っている」パートであり「最も苦労した」と語るのがエンジン。VQ35DEはVORTECのスーパーチャージャーで過給しているが、補機類が増えているのにも関わらず巧みなディテーリングで、エンジンルームはここまで“魅せる”作りになっている。
全てのメタルパーツは美しくポリッシュされ、造形物としての美しさを追求。カバー等の樹脂パーツもボディ同色にペイントし、アクセントとしてパープルアルマイトのパーツを配置している。バッテリーカバーは透明のアクリルで作り直すなど、ショーカーとしてのアイディアが随所に活かされた美しすぎるエンジンルームだ。
独特のカラーリングは、ランボルギーニ・ムルシエラゴ用の『ブルー・ケフェウス』。ボディはワンオフでワイド化され、フロントフェンダーはメタルワークで仕上げられる。
エンブレム類は全て外し、ドアノブもスムージングして滑らかなボディラインを追求。ホイールは3ピース構造を活かしてディスク面はシルバー、リム部分はパープルでコーディネートする。ウィルウッドのビッグブレーキキットでは、キャリパーもパープルにペイント済みだ。
下回りの美しさも異常だ。リヤのサブフレームを始め、追加されたアーム類などは全てポリッシュ加工。スタビライザーはボディ同色でのパウダーコート仕上げだ。エアもハイドロを使わない“ナマ足”での低車高だが、この美しさを維持しているのは驚異的。ランディは下回りの手入れ用に、常にラダーレールを持って歩いているのだから驚く。
インテリアも全パートに手が入る。レカロシートはレザー&スウェードで張り替え、ダッシュやドアパネル、ルーフライニング、ステアリングハンドルもスウェードでブラッシュアップ。ため息ものの贅沢空間を生み出した。
ドアのキックプレートは、レーザーカットで『R-RYDES』のロゴが入った特注品をインストールしている。
オーディオ&モニター関係も抜かりなく、アンプやプレステのコントローラーまでリペイントしているあたりが凄い。
もはや各部の磨きっぷりは執念すら感じるレベルだが、この全身ピカピカのG35はれっきとしたストリートカーなのである。今回の撮影にも、積載車に載せて登場したのではなく、自走でやってきたのだ。
それどころかロングドライブもこなし、1000km以上も離れた場所への遠征も度々敢行。SEMAに出展した際も、ロサンゼルスからラスベガスまでの往復を自走している。もちろん車高もこのままで…である。
日常的に乗っているのに、なぜここまで美しさを保持できるのか。それは、とにかく徹底的にクルマに手を掛けているからだ。この日も撮影クルーが来る前から現場に到着し、細部までクリーンアップ。もちろん自宅で仕上げてから来るのだが、自走により汚れた部分を全て撮影前に磨き直すのだ。
ランディは冗談めかして「2時間乗ったら、その後2時間磨くんだ」と言っていたが、これは冗談抜きでそれくらいのスタンスで愛車と向き合っているということだろう。
このような“じっくり”としたクルマとの向き合い方も特徴で、このG35は実は2003年に新車で購入したもの。以来、少しずつカスタムを進め、ついには究極の1台へと仕上げたのだ。これまでカーショーで獲得したトロフィーはなんと100本以上。カーショーにおける最高の栄誉“ベスト・オブ・ショー”も20回以上獲得しているというから、このG35がアメリカのJDMシーンでどれだけの存在か分かるだろう。
トレンドを手軽に纏い一瞬だけ輝くカスタムカーが多い中、このG35は長い時間を掛けて丁寧に作り上げてきたことで本物のオーラを手にしているのだ。
PHOTO:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI
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