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レーシングデザイナーが手がけた本物の造形美!
高回転での伸びを重視したエンジンメイクも必見
全国各地から300台近いSR搭載車が集結した『SRヘリテージジャパン2024』。この会場で久々に邂逅を果たした紺碧のS15シルビアは、かつてOPTION2誌(2011年5月号)の表紙を飾ったスーパーチューンドだ。
オーナーは富士スピードウェイを主戦場とするタイムアタッカーだったが、さらなる速さを求めてGT300のエアロ製作を手掛けるデザイナーにエクステリアのモディファイを依頼。幼少期に憧れたJGTCマシンとスーパーGTマシンの意匠をミックスさせ、オンリーワンのスタイルを生み出したのだ。
フロントバンパースポイラーは、大型のセンターダクトのみで構成。インタークーラーに接続されたエアディバイダーの角度やサイドカナードなど、細部まで妥協のない作り込みが光る。
ボンネットは市販のウェットカーボン製品にドライカーボンダクトを追加。エンジンルーム内のヒートエアを効率良く排出できるスペックへとリメイクしている。
トレッドを大幅に拡大するために導入された前後のブリスターフェンダー。ウイング形状でエッジを効かせたデザインは、まさに空力最優先のレーシングフォルム。フラップをフェンダー幅まで拡大したサイドステップも大迫力だ。
GTウイングはGT500マシンに装着されていた本物を型取りして全幅を最適化。ガーニーフラップ脱着部や翼端板の調整部をオミットし、ドライカーボンで製作されたワンオフスペシャルだ。強烈なダウンフォースに負けないよう、マウントステーはトランク貫通でボディと接合される。
ホイールはボルクレーシングのZE40(F10J×18 R11J×18)。取材時のタイヤは街乗り用のディレッツァZIII(F265/35-18 R295/30-18)だったが、サーキット走行時はアドバンA050に変更するそうだ。
ブレーキはAPレーシング製のキャリパ&ローターで容量アップ。車高調はナローボディ時代から愛用しているアラゴスタの製品を仕様変更して継続使用。スプリングレートはフロントが16kg/mm、リヤが14kg/mm+3kg/mmのテンダースプリングを組み合わせている。
かつてはS15エンジンにGT2835タービンを組み合わせた430ps仕様だったが 「上の伸びを重視してNVCSをキャンセルしていたので…」と、その後に思い切ってS13ヘッドへと交換。同時に、東名パワードのムービングパーツで腰下を2.2L化した上で、ヘッドにも特注の280度ハイカムをインストールした。
タービンはHKSのTO4Zシングルで、これにブースト1.5キロをかけて625psを絞り出す。ブーストを1.8〜2.0キロまで高めれば、800ps台にも乗せることができるポテンシャルがあるという。
「扱いにくさはありますが、回し切った時のフィーリングはメチャクチャ気持ち良いですよ」とオーナー。
計器類はレースパックのダッシュロガーで一括表示できるものの「燃圧はアナログの方が見やすい」と、以前から使っていた水温・油温・油圧も含めてアナログ式を残している。シートはルーズなレーシングポジションがお気に入りというブリッドのマキシスIIIで、ラフィックス&60mm延長ボスでステアリング位置を適正化している。
「あれから結婚をして子供もできたので、最近はぜんぜん走れてないんですよね」と語るオーナーだが、掲載時から14年が経過した今もなお極上のコンディションを保ち続けているのだから、その愛情は本物。何より、誰が見ても素直に“カッコ良い”と思わせるマシンメイクは、オーナーのセンス有ってこそのものだろう。
TEXT&PHOTO:山本大介(Daisuke YAMAMOTO)