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Fの遺伝子をIS500に注入!
官能的なV8エンジンの魔力を引き出す極意
Dセグメントのスポーツセダンに大排気量NAエンジンを搭載する。この組み合わせが流行ったのは、レクサスIS Fが登場した2007年付近だろう。当時メルセデスベンツのW204型C63AMGや、BMWのE92型M3などが登場し、ミドルクラスのボディにはオーバースペックな4.0L~6.2Lの大排気量V8エンジンを搭載。圧倒的な加速力と美しいエンジンサウンドは多くの人を魅了し、実用性の高い室内空間をも持ち合わせることで人気を博した。
しかし、その後はダウンサイジングコンセプトが隆盛。排気量や気筒数を減らし、ターボでエンジンパワーを引き出すようになった。そんな中、今でも5.0L・V8のNAエンジン『2UR-GSE』を搭載するレクサスIS500は、時代の波に流されなかった生き残りに他ならない。独特な加速感とフィーリングを未だに楽しめる唯一無二の存在だ。
ただしIS500は、IS Fほどの尖ったイメージは鳴りを潜め、全体的にマイルドな作り込みになったように感じる。2UR-GSEの基本スペック(IS F:423ps&51.5kgm/IS500:481ps&54.6kgm)こそ向上していて、大排気量NAエンジンならではの走りは健在だが、内装の高級感やサスペンションの乗り味、価格面など、より多くの人が受け入れやすいように作り直された…という表現が正しい。だからこそ、尖ったクルマにだけ付けられた『F』の称号ではなく、『500』という排気量を表す数字になったのだろう。
しかし、IS Fのアイデンティティを知っている人ならば、「IS500をFと同じように仕立てたい」という想いは強くなる。高級感はもちろん、エンジンフィールや、エキゾーストノート、サスペンションまで“F化”するにはどうしたら良いのか? その要望に応えるように作り込まれたのが、レムスのデモカーであるこのIS500だ。
レムスのIS500における開発コンセプトは、IS F同等のアイデンティティにまで引き上げる「F化」だ。エンジン周りのチューニングは、吸気抵抗低減によるパワーアップを狙うインテークパイプと、アイコードと共同開発しているチタンマフラーを合わせた吸排気系の高効率化が主軸となる。
ドライカーボン製のインテークパイプはパイプ内壁面まで滑らかな作りとしつつ、内径を最適化することで、純正比で実測13psアップを実現する。エンジンが瞬間的に要求する空気を適正に供給できるパイプ径にすることで、パワーアップのみならずレスポンスアップも叶えてくれる。
また、焼き色の付いたチタン製のインテークパイプもラインアップしていて、こちらは吸入効率の向上とビジュアルの引き締めも実現するアイテムとなる。
チタンマフラーはリヤセクションのみを交換するタイプで、高速クルージングで多用する低回転域のこもり音を抑えつつ、高回転でV8らしい音質になるようサウンドチューニング。ノーマル比で約11kgもの軽量化を実現している点も見逃せない。この吸排気チューンと合わせて、アイコード製のスピードリミッターカットを装着することで2UR-GSEの実力を解放している。
スピリットベースのオリジナル車高調はIS500のキャラクターに合わせて、街乗りからサーキットまで対応できる懐の広い減衰力設定が特徴。素直はハンドリングと快適な乗り心地を両立する。スプリングはフロント14kg/mm、リヤ16kg/mmが標準仕様となる。
また、レムスが得意とするエアロチューンも、F化には欠かせないポイント。ドライカーボン製リップスポイラーの形状は、ボディラインを崩さずにスタイリングと空力特性を高めてくれる。まるで純正オプション設定のようなさり気無さで、素直にカッコいいと思わせるデザインだ。同じくドライカーボン製となるドアミラーカバーも、まるで純正のようなフィット感が魅力。
エアロをのみならず、レムスが展開するインテリアパーツも全てオートクレーブ成形で作られた本物のドライカーボン製。パーツ単体を手にすると、その軽さに驚かされる。
「以前IS Fの開発主査を務めた矢口幸彦さんとお話させていただいた際、“私達なら重くなるエアロは作らない”とおっしゃられていたんです」とはレムス代表の小宮さん。かつてはウェットカーボン製エアロも展開していたレムスだったが、それ以降は専門のドライカーボン工房を構えパーツ開発に取り組んできたのだとか。
軽量を前提とした高機能の追求は、まさにFの遺伝子と呼べるもの。今や希少なV8スポーツセダンの官能と機能を磨いて、現代のIS Fへと仕立て上げる。まだまだ序章と言えるレムスのIS500に向けたパーツ開発、その動向に注目だ。
●取材協力:レムス 神奈川県平塚市天沼3-37 1F-A TEL:0463-38-0250
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