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あえての非ワイドボディ&エアサス!
純正フェンダーのシンプル&クリーンさで魅せる
ワイドボディやエアサスには一切目をくれず、様々な制約がつきまとう純正ナローフェンダーと生足でシンプルクリーンなスタイルを追求するシルビア。S15に惚れ込んだオーナーの想いに、大阪の老舗シャコタンショップ“バランス”が応えて導き出した作品だ。
「学生時代にドリフトしているシーンを見て、S15に一目惚れ。即ドリ仕様の中古車をフルローンで購入したのですが、本格的なドリフトはお金もかかるし、僕には難しかったんです。そこで大好きなクルマを好きな仕様で綺麗に乗っていこうと方向変換。純正同色でオールペンしたり、車高を走れるギリギリまで下げてみたり、マイペースに少しずつ仕上げてきました」。
そんなオーナーの転機となったのは、DIYで装着した調整式アームのアライメント調整だった。一般的なショップでは作業不可能と考えてバランスの門を叩くのだが、山﨑代表と話しているうちに、これまで漠然としていたカスタムの理想形がハッキリ浮かび上がっていったのだ。
「ドリフトやS15に対する強い想いを聞き、D1GPやフォーミュラDといった競技系スタイルを、ストックフェンダーのままストリートで魅せていこうとなりました。競技車両は切れ角やストロークを考えて高めの車高ですが、ストリートで魅せるなら、低さや深み、キャンバーが欠かせない。そこで競技イメージのフロントワイド、リヤナローに、ワークマイスターM1 3ピースのリバレルといったアプローチで攻めました」とは山﨑代表。
ホイールはシンプルで高級感のあるワークマイスターM1 3Pをチョイス。ただ、購入当時は車高が高かった上にネガティブキャンバーも付けていなかったため、フロント8.0Jプラス23×18インチ、リヤ9.0Jプラス26×18インチという無難なサイズをセレクトしていた。
「マイスターM1 3Pはリバレルができるので、もっと攻めてみたいと考えていました」というオーナーのリクエストに応え、バランスは現車セッティングでマッチング計算した後に、フロント9.0Jプラス11×18インチ、リヤ10Jプラマイ0×18インチでリバレル。フロント71mm、リヤ109mmのリム深度を引き出した。
フロントの足回りを詳しく見ていく。すでに装着されていたGPスポーツのGマスターを活かす形で、ホイールと干渉しやすいスプリングシート位置は150mmハイトのスプリングに交換して対処。スプリングレートはレバー比も考慮して8kg/mmから12kg/mmに引き上げた。
フロントワイドのドリフトスタイルに欠かせないのは、延長ロワアームと延長タイロッドエンドだ。35mm延長されたロワアームとアッパーマウント調整によって、12度のネガティブキャンバー角を生み出した。
インナーフェンダーの撤去やハーネスの引き上げといった、車高を下げるための準備はオーナーがDIYで施工。フェンダーに関してもツメをカットすると強度低下に繋がるため、ツメ折り状態をキープしている。
フロントホイールのリバレル時に使ったリムは、元々リヤに履いていたもの。ただし、そのままだとディスクとキャリパーのクリアランスが稼げないため、ディスクのみフロントで使っていたAディスクとした。
マルチリンクで履きこなしに余裕があるリヤは、低く走るためのレートアップのみで対応。GPスポーツのGマスター車高調は変えることなく、7kg/mmから12kg/mmへのスプリング変更が行なわれた。
リメイク前から投入されていた調整式アームだが、攻めのホイールマッチングには必要不可欠なものだ。キャンバーなどのアライメントに幅が持たせられるだけでなく、ゴムブッシュのような意図せぬ可動域から生じる干渉不安も払拭できる。
リヤホイールは9.0Jから10.5Jへとサイズアップしてリバレル。これは「ステップリムは100〜120mmのリム深さがベストバランス。クルマが最もカッコ良く見えるアングルで、足元の深みにディスクがちらりと覗くと綺麗なんです」という山﨑代表の考えに基づくものだ。
攻め込んだ際のフェンダークリアランスや低さの煮詰めにはタイヤチョイスも重要だ。前後とも40扁平から35扁平にして外径ダウンさせるだけでなく、リムガードの出面やショルダー形状まで吟味してナンカンNSIIをマッチング。理想はリムガードの出面が薄いニットーNT555G2だったが、リヤの225/35R18がラインナップになく選べなかった。
競技系ドリフトのエッセンスを純正フェンダーのままストリートスタイルに落とし込んだS15。非常にシンプルな構成ながら、只者ではないオーラを放つ。カスタム=「足し算」ではないことを思い知らされるクオリティだ。
PHOTO:伊勢馬場健次
●取材協力:バランスオートパーツウェアハウス 大阪府高槻市西面中1-2-1 TEL:072-679-1600
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