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運動性能を追求してエンジン本体を100mm後方に移設!
ハイレベルな運動性能+ビッグパワーを実現
鈴鹿サーキットのお膝元である三重県鈴鹿市に店舗を構える“エスプリ”。谷田部の最高速テストやゼロヨン、各地のサーキットアタック等で優れた記録をマークしてトップチューナーとしての地位を築き上げてきた名門だ。
エンジンチューナーというイメージが強いが、実はエアロパーツ開発にも積極的で、社内にドライカーボンの製作環境を整えているほど。そんな同社のチューニングスタイルを象徴しているのが、この美しいJZA80スープラだ。細部を見ていこう。
まず心臓部の2JZ-GTEは、搭載位置を100mm後方へオフセット。前後重量配分を最適化し、動力性能を磨き上げているのだ。
なお、エンジン本体は腰下にHKSの鍛造ピストンやコンロッドを組み込んだ上で、ヘッドには10.8mmリフトのハイカム(IN272度 EX264度)を投入。そこにTO4Zタービンをセットして、740ps/82kgmを発揮させている。レブリミットは7200rpmだ。
吸気系は、純正サージタンクにオリジナルアダプターを介してインフィニティ用90φスロットルをドッキング。エンジン本体前のスペースには、スーパーGTマシンのように走行風を抜くドライカーボン製のエアガイドを設置している。
フロントバンパーの開口部から覗くインタークーラーは、トラスト製のコアを使ったワンオフ品。一般的なチューンドスープラ用と比べるとかなり小型だが、これはラジエターへの送風を優先しての選択だ。もちろん、このサイズでもクーリング性能は問題ない。
エンジン搭載位置を大きく変更すると、各部の辻褄が合わなくなる。その代表的な箇所がオイルパンだ。10cmも後方に動かすとサスメンバーにオイルパンが干渉するため、エスプリはメンバーをかわす形状の大容量オイルパンをワンオフ製作して対応した。
サスペンションはHKSのハイパーマックスベースで、フロントに24kg/mm、リヤに18kg/mmのスプリングを合わせる。ブレーキは前後ともエンドレス製キャリパーで、フロントが6ポット、リヤが4ポットという構成だ。
トラクション性能を高めるため、リヤのサスアーム類は全て調整式に変更してトレッド幅を拡大。アーム類のロングスパン化は、アライメント変化を減らす働きもあり結果も上々とのこと。もちろん、各取り付け部はピロ化されている。
室内はスパルタンでありながらも、目を見張るほど美しい作り込み。ミッションはHKSの6速シーケンシャルドグが装備される。細かい部分であるが、タコメーターはデフィの高回転スケールモデルを純正位置に収めている。
ロールケージはフル溶接留め。トランクルームにはコレクタータンクを軸に燃料系パーツを美しくレイアウトし、そのエンド部にはGTウイングが生み出す強大なダウンフォースを受け止めるためのマウントを溶接固定。この辺りの美しい造作がいかにもエスプリだ。
リヤディフューザーやアンダーパネルなどの空力パーツは、軽量かつ高強度のドライカーボンで製作。さらにドアパネルやフェンダーをFRP製へ、ウインドウ類はフロント以外ポリカーボネイト製へと変更して軽量化を推進。エスプリの前川代表によると、完全なフラットボトム化も考えているとのこと。
各部の美しい作り込みに目を奪われるが、その本質は速さを徹底追求した本気のサーキットスペック。老舗エスプリの技術力と拘りが詰まった珠玉の1台だ。
●取材協力:エスプリ 三重県鈴鹿市住吉3-19-1 TEL:0593-70-8080
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