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今や、過去の遺物的な扱いに成り下がってしまったセダン。時代の流れでミニバンが市民権を得て、SUVが幅を利かせるご時世となれば、それも致し方ないとは思う。でも、日本の自動車史を振り返ると、そこには必ず強烈なインパクトを放ったセダンが存在したのも事実。様々な意見があるだろうが、WEB OPTIONが思うそんなセダンを紹介したい。
1981年発売スカイラインRS【DR30】
改良モデルを次々に投入
ケンメリGT-RのS20以来、8年ぶりとなる4バルブDOHC、2.0L直4のFJ20(150ps&18.5kgm)を搭載。折しも国産メーカーが仁義なきパワー競争を繰り広げてた時代的背景もあり、ユーザーのことなどガン無視で、立て続けにRSターボ(インタークーラーなし190ps&23.0kgm)、RSターボC(インタークーラー付き205ps&25.0kgm)をリリース。
何が何でもライバルの一歩先を行きたい日産の都合だけで次々とパフォーマンスアップを図っていくなど、なりふり構わなかった猪突猛進ぶりが素敵すぎる。
1987年発売ギャランVR-4【E39A】
世界で戦った競技ベース車
グループA規定で争われるWRC(世界ラリー選手権)参戦のために開発。4バルブDOHC化された2.0L直4の4G63ターボを初めて搭載し、フルタイム4WDで駆動するハイパフォーマンスセダン。
当初、205ps&30.0kgmだったエンジンスペックは中期型で220ps&30.0kgmへと向上し、後期型では240ps&31.0kgmに達した。さらに、ABSや4WSなど当時の最新技術も惜しみなく投入されるなど、すでに三菱の電子デバイス好きな一面が見え隠れしていた。これがなければランエボは生まれなかった! という意味でも功績は大。
1990年発売オートザムレビュー【DB5PA】
バブルマツダの申し子
運転しながら、思わず「キィィィィ~ン」と口走ってしまうこと必至。レビューで一番の見どころは、Dr.スランプアラレちゃんに出てきそうな丸っこい外装デザインに尽きる!! 元を正すと基本コンポーネンツは初代フェスティバで、バブル景気に浮れ、拡大路線(5チャンネル化)を突き進むマツダが勢いで出した1台。その後、バブル崩壊と共にメーカー存亡の危機に直面したことも忘れずに記しておきたい。
また、このシャシーをケチ臭く使い回すことで初代デミオが生まれ、瀕死のマツダを救う一助になったと思うと非常に感慨深い。1.5L直4のB5は88ps&12.0kgm。この他、1.3L版のB3(76ps&10.2kgm)も搭載された。いずれもSOHC16バルブ仕様。
1993年発売ラファーガ【CE4】
にじみ出るホンダらしさ
そもそも直5エンジンを縦置きしたFF車というだけで、お腹一杯。さらに、フロントミッドシップ化によりFFの弱点であるトラクション性能を向上させ…など真面目に語っている時点で、「このメーカー、大丈夫なのか!?」とホンダに対して疑いの目を向けたクルマ好きはきっと多かったはず。
そのパッケージングから、「本当はFRセダンを作りたかったのでは?」という疑問を当時の開発者にぶつけてみたが、その考えは一切なかったとの返答を得た。ちなみに、無限は直5エンジン用エキマニをしっかり用意。それが何台分売れたのかは不明。
1997年発売スカイラインGT-Rオーテックバージョン【BCNR33改】
復活した4ドアGT-R
スカイライン誕生40周年を記念したモデル。てっきりR33の4ドアがベースかと思ったら、何とBCNR33を4ドア化していたりする。
2ドアモデルと同じようなブリスター形状を再現するためリヤドアとリヤフェンダーは専用品を起こすなど、手間暇コストの掛け方がもはや変態の領域に達していて、そこがオーテックらしい。それでいながら車両本体価格はBCNR33に対してたったの10万円アップ。その手の込みようを考えたら、「オーテックの儲けはトントンどころか間違いなくマイナスなのでは!?」と心配になった。生産台数は約400台。
2001年発売クラウンアスリートVX【JZS171】
走りを追求した変異種
JZS171後期クラウンアスリートVをベースに、ヤマハがエンジンとシャシーに手を入れた300台限定モデル。1JZ-GTEにはレスポンス向上を狙ってインデュース径を絞った専用タービンがセットされ、ノーマル比15ps/1.5kgmアップの300ps/40.0kgmを発揮する。
さらに、足回りにはJZA80後期型に採用された左右連結サスREASの発展型と言えるX-REASを投入。これは右前と左後、左前と右後のダンパーをX状に連結。その途中に減衰力発生ユニットを設けることで、挙動や4輪の接地荷重配分を最適に制御するのだ。
2007年発売レクサスIS F【USE20】
問答無用の5.0L・V8を搭載
世界のハイパフォーマンスサルーンに肩を並べる国産初の大排気量スポーツセダン。423ps&52.0kgmを誇る5.0L・V8の2UR-GSEと8速ATを搭載する。「足回りはユーザーの好みで交換できるよう、あえて電子制御式は採用しませんでした」と言い切る開発主査・矢口氏の男気に惚れした。
ちなみに、矢口氏はかつてJZX100も手掛けたという話を聞いて納得。ともかく、同時期に発売されたR35GT-Rの開発主管である水野氏が新車発表会の場で、「チューニングはさせません!」と宣言していたのとはえらい違いだった。