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妖艶な色と光で魅了するV6ツインターボS2000!
とにもかくにもシンメトリーすぎる・・・
アメリカでも人気の高いS2000には、様々なエンジンスワップの実例が存在する。今回紹介するのは、同じホンダの横置き用V6エンジンを搭載したケースだ。しかも、左右対称にレイアウトされた美麗極まるツインターボ仕様なのだから恐れ入る。
ビルドしたのは、ペンシルベニア州で自身のショップ『シュマック・ビルト』を経営するジェイソン。高校のワークショップで溶接を習い始めてから“ものづくり”の面白さに目覚め、「物を作ることそのものを愛しているから、それが仕事における最大のモチベーション」と話す32歳(取材時)のピュアな職人だ。
細部を見ていく。エンジンは、アキュラTLタイプSから移植されたJ32A2型V6だ。J型はアメリカでは多彩な車種に搭載されているため、手に入れやすいそうだ。
Vバンク中央にジェイソンが製作したカスタムインテークを備え、中央を通るチタンパイプがエンジンルームを綺麗にセパレート。ギャレットのミラード(鏡合わせ)タービンを筆頭に、ビブラント・パフォーマンスのチタンマフラー、インタークーラーに直付けされたタイアル製ブローオフバルブなど、あらゆるパーツが左右対称に配置されている。
エンジン制御にはAEMインフィニティとライワイヤのハーネスを使用。J型は冷却用の補機類がトランスミッション側に備わるため、デリートしてから車体へインストールした。
ホイール&タイヤは、17インチのディスモンド・リーガマスター(F7.0J R10.0J)とアドバンネオバAD08R(F215/45-17 R255/40-17)の組み合わせ。Kスポーツの車高調でローダウンし、レーシーなスタイルを構築する。
トランスミッションはS2000の6速MTだが、Xパフォーマンスが販売しているコンバージョンキットを使用してリヤデフをフォード8.8インチに交換。手前に確認できる電動ファンとコアはラジエター用。冷却ラインを新たにカスタムメイドし、ラジエターをリアバンパー下に左右対称でマウントしているのだ。
カーボン製トランクフードやハードトップが備わるエクステリアは、BMW純正のアイオニックブルーでペイント。フロントフェンダーからサイド出しされるマフラーも、パフォーマンス重視のイーストコースト・スタイルを感じさせるポイントだ。
JSCレーシングによる10点式カスタムロールケージ、ドラッグシーンで名高いカーキーのバケットシートを装着。助手席は撤去され、足元のスペースにAEMインフィニティのユニットが備え付けられている。ステアリングのカーボンプレートは、カーボン・ファイバー・エレメント製だ。
こうして完成した渾身のS2000は、PRIショー(アメリカで毎年開催されているチューニングパーツの特化したイベント)にエントリー。PRIに集まる目の肥えた玄人たちをうならせると同時に、SNSを通じて幅広い層の目にも触れ、大きな話題となった。
「おかげでビジネスは順調なんだけど、できればもっと仕事に集中したいかな(笑)。溶接で製作するパーツは均等なクオリティを保ちながら大量に作ることが難しいからね。上達への道に終わりはないから、毎回毎回もっと上手に作ろうとトライしているんだ」。
トップビルダーへの道が目の前に開かれたジェイソン。周囲も認める溶接技術を武器に、さらなるクオリティの高みを追求する。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI