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JDM愛ほとばしる“アメリカ流”の最新式S2Kチューニング
i-VTECと排気量のアドバンテージを求めてK24型エンジン換装!
アメリカのJDMシーンの中心にいるのは、今も昔もホンダ車だ。スポーツコンパクトブームの頃から、安くて速いシビックやインテグラが間口となり、この世界を大きくしてきた。
そんなアメリカのホンダ乗りにとって『リアルJDM』はステイタス性が高く、アメリカでは設定の無かったタイプRの赤ヘッドエンジンをスワップするアプローチは、早い段階で定番となっていた。
しかし、B型エンジンの後継モデルとなるK型エンジンがデビューすると、オールドホンダへのエンジンスワップは一気にK型が主役となる。K型は日本から輸入しなくても北米仕様車に搭載されていること、そして排気量のメリットも大きいことから、アメリカのホンダ乗りの間でK型スワップが現在進行形のトレンドとなっている。
とはいえ、これはFF車の、しかもノーマルエンジンでは非力なシビックやインテグラでの話だ。しかしアメリカのホンダチューニングシーンで名を馳せる名門ショップ“バラードスポーツ”は、さらに踏み込んだメニューを完成させた。それがS2000へのK型スワップである。
アメリカではS2Kとも呼ばれるS2000は、シビックやインテグラよりも格上で至高のF型エンジンに惚れ込んでいるファンも多い。バラードスポーツ代表のアレックスもその中の一人なわけだが、誰よりもS2000を愛するが故に、S2000へのK型スワップをメニューとして完成させたのだ。
その理由はシンプル。S2000は2009年に生産中止となり、F20C&F22Cも生産が止まったため、今後もS2000を乗り続けるために現行エンジンであったK型に着目したのである。排気量もF型より大きく、より進化したi-VTEC機構を搭載しており、何よりも「価格がチープ」なことも魅力のため、このアイディアを実現。
しかも、アレックスは自分の愛車のためだけのチューンに留めず、K型を縦置きスワップする為に必要な物を全てキット化してリリース。まだまだF型も現役だが、今後を見据えてK型の縦置きスワップのレールを敷いたというわけだ。
ヘッドカバー形状がF型とは明らかに異なるので多少の違和感はあるが、エンジンルームに収まったその姿はあくまで自然。インマニ一体のビレットサージタンク、EXマニ、マウント、エンジンハーネス、エアコン&パワステ移設キットなど必要なパーツが全てコンプリートされ、ボルトオンでのインストールを可能としている。
ミッションはS2000用の6速MTをそのまま使用し、専用のアダプタープレートも付属する。エンジン本体がノーマルなら純正ECUでも動くが、チューニング仕様なら社外のマネージメントシステムが必要。K型はブロック長がF型よりも高いが、オイルパンは無加工のまま搭載可能で、ボンネットもそのまま閉まる。
外装はほぼ全てスプーン製で作り上げた。ホンダファンが多いアメリカ西海岸といえども、“本物”クーペハードトップを装着したS2000はなかなか見かけない存在だ。ウイングステーのみバラードスポーツ製で、スプーンの物より76mm高くなっている。
ちなみに、このS2000は“ストリート&トラック”をコンセプトに作られたデモカーで、サーキットも頻繁に走る本気マシン。かなり速いクルマとして有名である。
ショーカーではないため派手さは追求せず、走りに必要な装備のみをしっかりとセットアップしたインテリア。助手席はレス化されている。S2000ならではのデジタルメータークラスターは、北米仕様は8000rpmからレッドゾーンなので9000rpmレッドの英国仕様に交換。
助手席エアバッグは外され、中にヒューズボックスを移設。こうした細かいテクニックを駆使してエンジンルームをスッキリと綺麗に見せているのだ。
ホイールはボルクレーシングCE28(9.0J×17+35)、タイヤはポテンザRE-11A(255/40R17)、ブレーキキャリパーはスプーンと、とことんJDMパーツに拘っているのが分かる。ワイドフェンダー装着に伴いホイールは9.0Jサイズを飲み込むが、あくまで走りを優先していることから生まれたチョイスだ。
K型が縦置きで使えるとなると、旧車へのスワップ用エンジンとしても需要が見込める。アレックスが実現した『K型エンジン縦置きキット』は、ホンダ以外にも波及していく偉大な発明と言えるだろう。
PHOTO:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI