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人生最大の不運に見舞われるも見事復活!
ロータリー特有のネガ要素からも解放
アメリカ西海岸で90年代に巻き起こったJDMブームをリアルタイムで体感したジョン・ウーバルディ。当時は高校生で手が出なかったが、長じて後に手に入れた憧れの1台がFD3S型のマツダRX-7である。
手塩にかけてRX-7のチューニングを楽しんでいたジョンだったが、ロータリーエンジンは度重なるブローとリビルトを経験。すでに養うべき家族もあり、徐々に出費対象としての優先順位は下げざるを得なくなった。
そんな時に出会ったのが、古くからの友人が所有していた別のRX-7。エンジンがLS型のV8に載せ換えられた不動車だったが、ロータリーよりメンテに手間がかからないV8はジョンの興味を駆り立てた。2台持ちならロータリーの延命にも繋がると考え、そのRX-7を友人から譲り受けることにしたのである。
だが、そう考えたのもつかの間、全く意外な形で夢のFD2台持ち生活は終りを迎えてしまった。ある日、カーショーに参加するためロータリー仕様のRX-7を走らせていたところ、まさかの炎上! 2本の消火器で必死に鎮火を図るも、シャコタンがゆえにフロア下に消火剤が届かず、あっという間に炎に包まれてしまった。
愛車が丸焦げになり、失意に暮れたジョンだったが、家族や友人から「もう1台の方を同じように作れば良いじゃないか」と勇気づけられて復活。不死鳥の如く蘇るという想いから、新たに「フェニックスセブン」と名付け、「快適でストレスフリーなRX-7」というコンセプトを実現していくことにした。
アルミブロックを持つ5.7L・V8のLSエンジンは、換装作業を行ったアラバマ州のヒンソン・モータースポーツによりチューニングも実施済み。吸排気の強化やECU書き換えも行ったが、あくまでストリートをエンジョイするのが目的なので、最高出力は441ps、最大トルクは57.4kgmと「ほどほど」に抑えられている。
エンジンスワップ車とはいえエアコンは完動状態で、パワーステアリングも油圧を調節できるHEIDT’Sのバルブをバイパスして純正ラックを活用している。
足回りにはフォーチュンオートの車高調をセット。さらにエアカップも備え、スイッチひとつで車高を6インチ(約152mm)アップすることができる。ホイールはBRW03の17インチをリバレルして18インチ化したカスタムモデル(F10.5J R11.5J)で、ブレーキはフロントにウィルウッドの6ポットキャリパーを投入。
ProCarのエボリューションシートやSEIBONのドアパネルなど、内装にはカーボン素材を多用。ステアリングはレナオウンの130Rスウェードタイプを奢る。
リヤセクションにはドレスアップを目的にミラクルクロスバーを張り巡らせた。荷室にはエアピストンリフトシステム用のコンプレッサーやタンクも備わる。
ダッシュボード上の3連メーターは、プロスポーツのデジタルLCDで統一している。
オーディオはATOTOのS8プレミアム。OBD連動アプリ「TORQUE」を起動すれば、車両情報を一元管理することが可能だ。
ボディはオリジナル調色のレッドメタリックキャンディで塗装された後、光の当たり方で見える色味も変わるラッピングを施工。一見派手なラッピングも、塗装を守りつつ手軽にお色直しできるという意味では理にかなっている。
さらに99スペックのフロントバンパー、マツダスピードのカーボンリップ、GroupAモータリングの前後20mmワイドフェンダーやカーボンボンネット、RE雨宮のリヤディフューザーなどを備える。
オーナーのジョン・ウーバルディはサンディエゴ近郊に生まれ、軍人だった父の影響でクルマ好きになった人物。V8仕様のRX-7は燃費も良く、家族にも好評なのだとか。徹底して花より実を取る大人なカスタマイズが実践されたフェニックスセブンは、人生の波乱を経験したジョンならではのオリジナリティを体現しているのだ。
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI