「日米豪のセンスと技術が融合!」レストモッドを極めたフルチューンBNR32を捕獲

パワーが全てではない!?

ガチになったアメリカ人の本気を見よ!

いわゆる25年ルール(製造から25年が経過したクルマは連邦自動車安全基準の適合を証明しなくても輸入できる規定)により、アメリカへ渡る中古車が増えて久しいR32型スカイラインGT-R。輸入のハードルは下がったとはいえ、そもそもの車両価格やコストが高いので、アメリカでもコレクターズアイテム化しているのが現実だ。

右がオーナーのミッキー・アンドラーデ。左がエンジンワークを担当したクイン・クラーク。ともにThrotlのメンバーとして、日々クルマ作りとYouTubeのコンテンツメイクに汗を流す。JDM好きのミッキーは昔からグループAにも興味があり、R32はいつか所有してみたいドリームカーのひとつだったそうだ。

カスタマイズもR32としての価値を保ちながら、いい所をブラッシュアップさせるレストモッド的な手法が好まれている。その好例とも言えるのがカリフォルニア州の「throtl(スロットル)」でコンテンツメイクを統率するミッキー・アンドラーデのR32だ。

スロットルは登録者数238万人のYouTubeチャンネルを展開するコンテンツ集団だが、類が類を呼び、オーストラリアの「Motive Video(モーティブ・ビデオ)」ともコラボ。米豪合作のプロジェクトに発展したR32の製作過程を、それぞれのチャンネルでレポートしている。

アメリカとは異なり、R32を含む第二世代スカイラインが正規輸入されていたオーストラリアでは、現在もRBのパフォーマンスチューンが盛んだ。ミッキーも米豪コラボの意義について、その点を強調する。「オーストラリアはRBチューン技術の最先端。PRP(プラチナム・レーシング・プロダクツ)のような存在がシーンを牽引して、ビッグパワーやモータースポーツに貢献しているんだ」。

PRPは自前の切削技術を活かしたビレットパーツの開発やエンジン加工で有名なアフターメーカー。最近は鋳造のRBヘッドとブロックを開発したことでも注目を浴びている。

ミッキーのR32が積むエンジンもPRPが豪州内で用意したもので、実はRB25DETのブロックに加工を施し、RB26のクランクを組んだ仕様だ。3週間で製作を終え、テレビ出演に間に合わせるための苦肉の策でもあったそうだが、祝日が異なる米豪で製作を同時進行できたのもメリットだったと語る。

仕様的には1000psオーバーも達成できるが、現時点ではタービン風量21lbs/minと、容量的に余裕を残したチューニングで684psを達成している。それでいてFrenchy’sパフォーマンスガレージのエアコンリプレイスメントキットを使用し、真夏のサンディエゴでも快適なクルージングを実現!

純正スロットルに取り付けるサージタンク、11mmのフューエルデリバリーなどはグレッディ製。インジェクターはダッチワークスの2000ccに増量されている。各種ホースとフィッティングはアメリカのDyme PSI製だ。

エンジンルームのアイキャッチにもなっているドライカーボン製のコールドエアインテークはオーストラリアのArtecパフォーマンス製。R32のエンジンルームに沿う形にデザインされており、内部にはK&N製の6インチエアフィルターが仕込まれている。

ECUはハルテック・エリート2500を使用。より精密な点火制御を得るため、36-2歯(36本の歯から2本欠けた34本歯)のトリガーホイールを備えるPRPのクランク角センサーも備える。調整式のカムギヤとタイミングベルトはグレッディ製。クリア仕様のタイミングベルトカバーはHPI製だ。

PRP製のビレットカムカバーは、高回転時でもブローバイを適正に排出できるよう、内部にバッフルが仕込まれている。R35同等のイグニッションコイルとビレットの取り付けプレートをセットにしたIGN-35Aハイアウトプットコイルキットも装着。シリンダーヘッドはGPPのレースヘッドパッケージ加工が施され、GSCのカスタムカムがインストールされている。

リバースローテーションのタービンはギャレットのG35-900。4種類あるA/R比の中で2番目に高回転型となる1.01の仕様。それをマウントするエキマニはカーボン製インテークと同じArtec製で、SUS347ステンレスを使用した鋳造品。最初からリバースローテーションを取り付ける前提となっており、50〜55mm径Vバンドマウントのタービンに適合する。

オイルキャッチタンクはオーストラリアのCroydon Racing Developmentsの製品。地元のドラッグレースシーンやワールドタイムアタックで実績を残すショップで、ハルテックのチューニングも担当した。

エキゾーストはLeaskSpecのTitanRSという4インチのオールチタン製を採用。ダウンパイプなどはSpectrumモータースポーツ製を使用している。

ビレット削り出しの本体が美しいトランスミッションはPPGの6速シーケンシャルドグ。それに合わせた長さで作られたカーボン製のプロペラシャフトと前後の強化型ドライブシャフトは、アメリカのドライブシャフトショップ製だ。クワイフの前後LSDも使用。

LeaskSpecの大容量オイルパンを溶接して取り付け。エンジンの高出力化に伴い、アテーサの機能を最適化する『ETS-Pro Plusアテーサトルクスプリットコントローラー』というサブコンを導入している。

純正ダッシュをキープし、ロールケージも入っていないシンプルなインテリア。80mmディープコーンのステアリング、レザー製のシフト/サイドブレーキブーツはグレッディ製。センターコンソールにはパイオニアのディスプレイオーディオを装着している。

Makoモータースポーツのダッシュマウントに、ハルテックのIC-7デジタルダッシュを装着。汎用のギアポジションインジケーターもインストール済みだ。

シートは運転席にクロス張りのレカロProfi SPG、助手席がレザーのレカロSportsterCSを使用。リヤシートや内装は全てそのまま残され、IMPERIAL MATSというメーカーのフロアマットも使用している。

ホイールはボルクレーシングTE37Vで、サイズは前後ともに10.5プラス20。組み合わせるタイヤはファルケンAzenisのRT660で、サイズは275/40R17だ。

ブレーキはLeaskSpecがウィルウッドをベースにキット化しているビッグブレーキを採用。フロントが6ポットキャリパーと355mmローター、リヤが4ポットキャリパーと327mmローターの組み合わせ。

サスペンションにはShockWorksの車高調、GKTechの調整式アームとHICASデリートを採用。カナードやガナドールミラー、カーボン製のサイドスカート、LEDテールなども備える。

多くのパーツをPRPが供給した一方、グレッディやレイズなど、我々日本人にも正統派を印象付けるパーツを贅沢に使用されている。日本の伝統をベースに、美しいフィニッシュに拘るアメリカのセンス、他の追随を許さないオーストラリアの技術が融合されたR32は、セットアップ次第で1000psオーバーも夢ではない。これぞ真のレストモッドと表現するに相応しい仕上がりだ。

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Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI

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