目次
セッティングのしやすさを考えてウェーバー48IDAをチョイス
高回転・高出力型の特性を求めてA型から13B-MSPへとスワップ!?
今では、街中で見かける機会すらほとんどないレアな存在となってしまったB310サニー。TSレースの影響も大きかったのであろう、大衆車でありながらかつては走り屋のチューニングベースとして高い人気を誇った名車だ。
ノスタルジーな外観だが、オーナーは20代の若者。旧車のスタイリングが好きで初めての愛車にサニトラを選び、その魅力にどっぷりハマってしまったそうだ。そして5年前、昭和53年式のサニー1400SGLを知人から譲り受けた。
オーナーは旧車好きであり、生粋のドリフト野郎でもある。パワーを求めてエンジンをA14からA15改16に載せ換えて走り回っていたものの、シルビアやツアラーVなどのターボ勢にはどうしても付いていけない。そこで、子供の頃から憧れていたロータリーエンジンへの換装を決意。選んだユニットはRX-8の心臓部、NAの13B-MSP。換装は知り合いのプライベーターに頼んだそうだ。
エンジンスペックも個性的で、13B-MSP本来のインジェクションシステムは完全撤去し、代わりに往年のウェーバー48IDAダウンドラフト仕様を構築。当初は、最新フルコンでの制御も考えたそうだが、予算面や自由度の高さでキャブ化の道を進んだという。ウェーバー本体は、12A用のインマニにアルミ削り出しのワンオフブラケットを介して13B-MSPとドッキングさせている。
セッティング用のジェット類は常に携帯。「ジェットなどが4つ必要なA型と比べて、ロータリーは2つで済むので楽ですね」とオーナー。気になるフィーリングは、ハイカム入りのA14改15よりも低速トルクが厚く、9000rpmまでストレスなく回る(レブリミットは1万rpm!)ため大満足とのこと。
点火系は、バイク用のピックアップ(エキセンプーリーに固定)を使ったオリジナルシステムとなる。 大胆なメイキングだが、性能面ではとくに問題ないそうだ。ちなみに、プラゴコード手前でタイラップ固定されているコカ・コーラの瓶はオイルキャッチタンクだ。
冷却強化も抜かりなく、FC3S純正オイルクーラーを追加。ラジエターは純正改3層で、冷却水はEWPの電動ウォーターポンプで循環させる。ただし、これでも日光サーキットでドリフトしていると水温が100度を超えてしまうそうで、その対策が今後の課題なのだとか。
昭和レトロを強く感じるインテリア。純正はダルなフィーリングなので、AE86用のラック&ピニオンを移植してクイックな操舵フィールを手に入れた。快適性の向上を狙ってアルト用の電動パワステも移植済みだ。ステアリングはMOMO、追加メーターはオートゲージをチョイスする。
ミッションもRX-8純正を流用。シフトレバー部に確認できるステーは、ステアリング位置やシートポジションを後方にオフセットさせたことで発生した「3速が遠すぎる問題」を解決するための策だ。
足回りは、太いホイールを履くためにナロー仕様のサニトラ用ホーシングを移植。そうして収めたRSワタナベ8スポークは、フロントが8.0J×14でリヤが9J×14。タイヤサイズは前後とも185/50だ。その他、サスやブレーキはAE86用をごっそり移植している。
見た目は錆だらけのジャンクボディ風だが、その実はキャブ仕様の13Bロータリーが換装された生粋のドリフトスペック。そんなギャップが魅力的すぎる1台だ。
PHOTO&REPORT:石川大輔