「コイツがクロスオーバーSUVの始祖か!?」国産車にRVの概念を持ち込んだスプリンターカリブを再興する

ツインキャブ仕様の3A-SUとパートタイム式4WDのコンビ

4WD時のみ使えるエクストラローを装備。悪路走破性を一段と高めた後期モデル!

20系ターセル/コルサのフロント周りと70系カローラのリヤ周りをドッキングさせたシャシーを持つのが、1982年8月に発売された初代AL25G型スプリンターカリブ。

上級AV-IIと普及AV-Iの2グレード構成で、いずれも可変ベンチュリー型シングルキャブレターを持つ1.5L直4SOHCの3A-U型エンジン(85ps/12.0kgm)を搭載。駆動方式はFFベースのパートタイム式4WDで、最低地上高をやや高めの170mmに設定した、国産クロスオーバーSUV(という言い方は当時まだなかったが…)のパイオニアだ。

マイナーチェンジは2回実施。まず1984年8月、AV-IIの5速MT車にツインキャブ仕様の3A-SU型エンジンを搭載。3A-U型を5ps/0.3kgm上回る95ps/12.3kgmを発揮した。さらに1986年5月には、4WD走行時により駆動力を高めるエクストラロー(ギヤ比4.871)を備えた6速MTが搭載されることになった。

取材車両は、2回目のマイナーチェンジを受けた後の後期型AV-IIでMT車。つまり、3A-SU型エンジンとエクストラロー付き6速MTを搭載する。ボディ色はカラードウレタンバンパーとセットオプションだったライディングツートン。さらに、後期型では標準だったドアミラーでなく、あえてのフェンダーミラー仕様というところに興奮を覚える。

そもそも、ツインキャブ仕様の3A-SU型エンジンを生で見たのは今回が初。スプリンターカリブ以外に、AL20系ターセル/コルサ/カローラIIのSRスポーツパッケージにも搭載されたエンジンだ。

てっきりシングルキャブ仕様の3A-U型が搭載されていると思っていたので、ボンネットを開けて“TWIN V CARB”と書かれたエアクリーナーボックスが目に入ってきた時、一気に気分が盛り上がったのは言うまでもない。

ちなみに、取材車両は屋根付き駐車場で26年も放置されていた個体。画像は、それを現オーナーが救出した時のものだ。雨風をしのげていた事で内外装の劣化は最小限だったが、燃料タンクのサビ取りやキャブ&ブレーキのオーバーホールを行なったという。

内装色はベージュを基調としていて落ち着いた雰囲気。メーターナセル両側にはリヤデフォッガーやパーキング゙ライト、リヤワイパーなどのスイッチが確認できる。フロントスピーカーはダッシュパネル左右に装備。

スピードメーターは170km/h、タコメーターは8000rpmフルスケールで左右に水温計と燃料系が配置される。

ダッシュボード中央上部に備わるのは最大30度までの前後&左右傾斜計と、高度&気圧を表示するコンビメーター。後に登場するRVにこぞって装着されたアイテムだ。

シフトレバー後方に設けられた2WD(FF)と4WDの切り替えスイッチ。トランスファーレバーで切り替えるのが一般的だった時代にスイッチ操作でそれを可能にするなど、ヘビーデューティさを感じさせない(しかし、優れた悪路走破性を持つ)ところが目新しかった。

ミッションは通常の5速MTにEL(エクストラロー)を加えた6速だが、エクストラローを使えるのは4WD時だけという注意書きがある。

サイドサポートを残しながら、ショルダー部を落としてアシストグリップを加えた背もたれが特徴的な前席。ヘッドレストは別体式で車名ロゴ入りの純正シートカバーが装着される。

後席はヘッドレスト一体型のハイバックタイプで、背もたれは50:50での分割可倒式。前に倒せばラゲッジスペースを拡大できる。

縦型リヤコンビネーションランプの採用で大きな開口面積を誇るリヤゲート。ラゲッジフロアはスペアタイヤ収納部が盛り上がってるけれど、十分に実用的な容量を持つ。

荷物を隠して外から目に触れないようにするパーセルボードは厚みがあってしっかりした作り。取り外しできるため、ラゲッジスペースを上方向に拡大することも可能だ。

ルーフにはトヨタ純正ベースキャリアを装着。ホイールはセンターキャップにトヨタのロゴが入った純正スチールを履く。タイヤはなんと当時モノのSF-402オールシーズンで、標準175/70R13サイズとなる。

アップライトなポジションの運転席に座って試乗に出る。1.6m強しかない全幅は実寸以上にコンパクトで、4.8mという最小回転半径と合わせて取り回しが非常に楽。未舗装の狭い山道とかに入っていった時、この取り回しの良さは武器になるはずだ。

走りの方は、エンジンの吹け上がりもハンドリングも軽快の一言。3A-SU型は街乗りで多用する2000~3000rpmのトルクがあって、アクセルペダル操作に対するピックアップも良好。

ハンドリングはエンジン縦置きだからか、この時代のFF車にありがちなトルクステアを感じることなく、スムーズに鼻先が向きを変えてくれる。

4WDは駆動系の構成パーツが多くなるためどうしても車重は増えるが、それでもカタログ値でわずか1030kg。当時は重い部類だったとしても、今の基準からすればもう絶対的に軽いわけで、それが走り全般に好影響を及ぼしているのは間違いない。

CXシリーズしかりハリアーしかりアウトランダーしかり、時代は今まさにSUVだ。しかし、初代スプリンターカリブ以上に魅力を感じるクルマは、残念ながらどこにも見当たらない。

■SPECIFICATIONS
車両型式:AL25G
全長×全幅×全高:4310×1615×1500mm
ホイールベース:2430mm
トレッド(F/R):1380/1350mm
車両重量:1030kg
エンジン型式:3A-SU
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ77.5×77.0mm
排気量:1452cc 圧縮比:9.3:1
最高出力:95ps/6000rpm
最大トルク:12.3kgm/4000rpm
トランスミッション:6速MT(5速+エクストラロー)
サスペンション形式(F/R):ストラット/リジッド
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/70R13

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TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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