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見た目はノーマル風だけど中身は本気のレーシングスペック!
5バルブの5A-G仕様をNOSでさらにパワーアップ
小振りなボディにFR駆動というパッケージを採用するAE86は、長年ドライバーを育てる手頃なベース車として親しまれてきた。「頭文字D」などの影響もあり、近年では中古車相場が高騰しているが、それでもハチロクを求める人は後を絶たない。
ここで紹介するAE86は、その軽量なボディに目を付けて関西の実力派ショップ“トレーシースポーツ”が製作した生粋のサーキットスペックだ。
元々、N1レース用マシンに搭載されていたというエンジンは、AE111の5バルブ4A-Gをベースとした5A-G仕様。ホットスタッフ製81.5φピストンにJUN製H断面コンロッド、5A-Gクランクシャフトを組み込み、排気量を1720ccへと拡大している。
一方のヘッドには燃焼室加工やポート研磨などを施し、TRD製カムシャフト(IN/EX304度)をセット。吸気は4連スロットルで、点火系もダイレクトイグニッション化済みだ。
ドーピングアイテムとして、ダイレクトショット式のNOSを搭載しているのもこのチューンドの見どころ。サーキットでのタイムアタックを行う際の最終兵器として投入され、スロットル開度85%以上、エンジン回転数5000rpm以上で作動。全噴射時のパワーは推定270psに達するそうだ。
なお、4連スロットルにはアルミの導風板を設けることで、ダクトから取り入れたフレッシュエアを効率良く4スロに送り込めるようにしているのもポイント。ちなみに、ファンネルの手前に出ている金属棒は吸気温センサーだ。
ファンネルと同様に、ラジエターとオイルクーラーにも効率良くフレッシュエアを送り込むための導風板をセット。純正フロントバンパーのためダクト面積は限られているが、効果は。
街乗りのことは考えず、サーキット走行のみを想定してセッティングされたこのパワーユニットは、6000rpm以上でその真価を発揮し、1万rpmまでまわせる超高回転仕様だ。NOS投入の効果もあって、シフトチェンジでアクセルペダルを踏み直すたびに強烈なトルクが即座に立ち上がり、イッキに加速していく。
エンジン以外にも注目ポイントは多数だ。例えばボディ補強は、レーシングカー製作も行うトレーシースポーツのノウハウがふんだんに投入され、エンジンスペックやタイヤとのバランスを考えながら施工。ホワイトボディ状態からフルスポット増しを行い、同時にワンオフロールケージが組み込まれている。
サスペンションのアッパーマウント取り付け部には、室内からバルクヘッドを貫通して伸びるロールバーが溶接留めされている。レース車両製作の技術をフィードバックし、ハチロクの特性にベストマッチするボディ剛性を実現するためのレイアウトだ。
ロールケージの他、車体の横方向に伸びる補強バーをリヤシート位置に追加。ドライバッテリーもここに設置してある。シートベルトのアイボルトの下にあるボックスは、等長リンクを装着するためのものだ。
ドア周りは、スポット増しにプラスして接合面を溶接することでさらなる強度アップを狙っている。同様の補強はリヤハッチ周辺にも施されている。
足回りは、前後ともにジールファンクションのオリジナル減衰仕様とハイパコスプリング(F7.1kg/mm R5.3kg/mm)の組み合わせ。リヤに等長リンクを取り入れることでセッティング幅を広げるのと同時に、低応力スプリングを導入。リバンプストロークをマイルドにしてテールスライドを抑え、トラクションアップを狙う。
ホイールはワークマイスターS1(8.0J×15+10)で、タイヤはポテンザRE-01R(195/50-15)。ブレーキはフロントにトラストの6ポット+282mmローター、リヤにAE111キャリパー+260mmローターをセットする。
追加メーターや各種スイッチは、センターにカーボンパネルともにインストール。さらに、スタータースイッチを新設し、シフトインジケーターは純正メーター横にセットするなど、インパネ周りはレーシーなメイキングだ。
オーナーの意向で、エクステリアには手を加えずにどこまで速く走れるかを突き詰めたハイスペック。“羊の皮を被った狼”とはまさにこのことだ。
●取材協力:トレーシースポーツ 大阪府摂津市鳥飼本町1丁目12-14 TEL:072-654-9424
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