「全幅は驚異の2メートルに迫る!?」我が道を突き進むGTOマニアの愛機

GTOチューンの名手ピットロードMのノウハウを凝縮!

片側70mmのワイド化で迫力のスタイリングを構築

三菱のスポーツカーのフラッグシップとして1990年に発売されたGTO。ターボモデルは280ps&42.5kgmという当時国内トップクラスのスペックを誇った3.0L・V6ツインターボの6G72とゲトラグ製MTを搭載し、フルタイム4WDで駆動。さらに4WSやダンパー減衰力を自動で3段階に切り替えるECSを始め、アクティブエアロシステムやアクティブエキゾーストシステムなどハイテク装備を満載していたのが三菱らしい。ところが、GTOは発売当初から好き嫌いがハッキリと分かれ、メジャーな存在とは言い難かった。その理由は明らかだ。

一つはエンジン横置きFFベースの4WDであったから。今以上にスポーツカーはエンジン縦置きのFR、もしくはFRベースの4WDという認識が強かった時代だけに仕方ない。もう一つの理由はボディが大きく重かったこと。北米市場を強く意識して設計、開発されたことで全幅は1840mm、車重は1700kgに達した。この数値、今でこそ取り立てて言うほどのものではないけど、30年前の国産車としては大柄でヘビー級だったのは事実だ。

以上の理由から人気がイマイチだったGTO。そんな状況だったからこそ、一部の熱狂的なファンから絶大な支持を受けることになったと言える。

そんなコアなファンの一人が、赤いフルエアロワイドボディ仕様に乗る大西さん。かつて前期型に乗り、これが2台目というから気合の入り方が違う。

「1989年、東京モーターショーの三菱ブースに展示されたHSX(GTOのスタディモデル)を見て、いつか乗りたいなと思ったんです。ホンダブースにはNSXも並んでましたけど、僕には断然HSXの方がカッコ良く見えましたね」。

そう話してくれた大西さんのGTOは中期型で、ヘッドライトやBピラーパネルの交換によって最終型ルックへと変更。チューニングやメンテは、GTOと言えば真っ先に名前が上がるピットロードMが担当する。

「GTOはマフラー交換で320ps。大西さんのようなブーストアップだと燃料ポンプは交換しないと駄目だけど、純正インジェクターのまま400psが狙える。制御はブースト圧1.1キロまでなら純正ECU書き替えでオッケー。それ以上ブーストを上げたり、先々タービン交換まで考えてるならVプロ制御をお勧めするよ」と森下さん。

大西さんのGTOはブーストアップ仕様。ノーマルはオーバーシュートで0.8キロ→0.6キロでブースト圧が落ち着くけど、ブリッツSBC i-Dで1.1キロまで高められる。エンジン制御は純正書き替えのM-SPLブーストアップデータCPUが担当。燃料系はポンプを大容量化して純正インジェクター使い切りの400psを発揮する。

6G72型エンジンは基本的に丈夫だが、特有のウィークポイントがある。森下さんいわく、「前期型は経年劣化でクランクプーリーのゴム部分がよくちぎれる。それとタイミングベルトの油圧テンショナーのパンクも多い。そうするとタイミングベルトが外れ、バルブがピストンを突いてしまう。また、前期型はVベルトだけど、オルタネーターやパワステポンプ、エアコンコンプレッサーなどの交換を含めて、中期型以降のリブベルト仕様に変更することもある」とのこと。

また、とくにパワー&トルクを高めたチューンドカーでは駆動系のトラブルにも注意。中でもトランスファーが壊れるとリヤに駆動トルクが伝わらず、走行不能になってしまう。「フロントだけで走れそうな気もするけど、車重があるからか動かなる。トランスファーはパーツが無くて修理もできないからハードなチューニングは控えた方が良いね」と森下さん。

足回りは、倒立式ダンパーを採用したバーディクラブ全長調整式車高調ベースのM-SPLコイルオーバーサスペンションキットタイプIIIを装着。バネレートはフロント18kg/mm、リヤ16kg/mm。また、ブレーキはフロント6ポットキャリパー+355mmローター、リヤ4ポットキャリパー+330mmローターのM-SPL GReddyブレーキシステムキットで強化される。

室内は、後席を取り払い2名乗車で公認を取得。前席はレカロTS-Gに交換される。大西さんいわく、「SP-GやRS-Gに比べて背もたれを丸め込んだ形状になるので、よりアイポイントが低くなるんですよ」とのこと。ロールバーはクスコ製で、斜行バーとアルミ製サイドバーを加えた7点式となる。

空力性能の向上を狙って装着されたワンオフフロントアンダーパネルと公認取得済みのリヤディフューザー。リヤバンパーにもダクト加工を施し、パラシュート効果を低減する。マフラーはメイン75→85φ、テール115φ左右出しのM-SPLエンジェルマフラーデュアルで、音量を抑えるためECVを追加。

もう1台紹介したいのが、グレーにオールペンされたワイドボディ仕様は中期型MR。オリジナルタービンへの交換と、それに伴う各部仕様変更のために入庫してきた。

純正TD04タービンをベースにハイフロー加工を施したM-SPL 500PS戦闘機タービン(純正タービン要下取り)。燃料ポンプ&インジェクターの大容量化やFコンVプロでの制御などが必須になるけど、ブーストアップ仕様から100psのパワーアップを実現する。

イグニッションプロジェクツ製R34用パワーコイルを加工流用して、2気筒ずつの同時点火を独立点火に変更するM-SPLダイレクトイグニッションコイルシステム。エンジンルームのスペースやパイピングレイアウトに合わせ、車両ごとに最適な場所へと配置される。

エンジン制御にはF-CON Vプロ3.4を使用。「タービン交換仕様は大容量インジェクターが必要になる。でも、今は低抵抗のトップフィードタイプがない。なもんで、高抵抗のレジスターを取って使うんやけど、Vプロならその制御ができるんよ」と森下さん。

パワーアップに合わせて駆動系も強化。通称“赤カバー”と呼ばれるツインプレートクラッチ、M-SPL R2CDSは日常域での扱い易さを損なうことなく500psまで対応する。同時にクラッチラインもM-SPLに交換。また、700ps対応のR2CD、その上にはトリプルプレートクラッチも用意される。

ストリートメインでスポーツ走行にも対応したM-SPLコイルオーバーサスペンションキットタイプⅣ。全長調整式でバネレートはフロント12kg/mm、リヤ8kg/mmの設定。ブレーキはフロント6ポット、リヤ4ポットキャリパーで共に356mmローターを組み合わせたD2製キットで制動性能を高める。

50km/h以上で後輪を前輪と同位相させることでコーナリング時の挙動の安定化を狙った4WS。当時、国産各メーカーがこぞって採用した技術で理論的には優れていたものの、ドライバーの意思と一致しない不自然な動きを見せたり、GTOに採用された油圧式ではオイル漏れが発生するなどトラブルの原因にもなった。そこでピットロードMでは4WSキャンセラーを用意。オイルラインの加工も施される。

1990年代に登場した国産スポーツカーの中で独特な存在感を放ち続けるGTO。コレでなければならないオーナーは相変わらず多く、クルマのコンディションを維持して彼らが長く楽しめるようにと、森下さんは日々奮闘しているのだ。

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●取材協力:ピットロードM 兵庫県姫路市安富町安志912 TEL:0790-66-3359

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【関連リンク】
ピットロードM
http://www.pitroadm.com

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