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ジェミニZZ/Rの戦闘力は想像以上に高いんです!
ワイドボディ仕様も現在製作中!?
GM(ゼネラルモータース)の世界戦略車“Tカー”として、1974年に登場したオペルカデットC。その内外装を日本向けに手直ししたのが初代ジェミニ(1975年までは正式車名ベレットジェミニ)だ。
ボディは2ドアクーペと4ドアセダンの2種類で、当初は1.6Lモデル(車両型式PF50)のみでの展開だったが、1977年に1.8Lモデル(同PF60)が追加。翌1979年に1.8Lディーゼル(同PFD60)と、スポーティグレードのZZ系(同PF60)がシリーズに加わった。
ZZ系には競技ベースZZ/Rと、一般ユース向けZZ/Tが存在。後に装備の充実化を図ったZZ/Lも用意された。いずれも1.8L直4DOHCのG180Wが搭載され、ミッションは5速MTのみの設定とされた。また、1982~1983年には3回に渡り、ラリースペシャルという限定車が登場。生産台数はセダンが186台、クーペに至ってはわずか16台という超希少モデルだ。
そんなジェミニを愛してやまないのが日笠さん。置き場には困らないのをいいことに(!?)、今回メインで取材した普段乗りの1982年式ZZ/Rを含め、5台のジェミニを所有している。24歳という若さにして、だ。
「高校生の時に逆スラントマスクのクルマを見かけて、なんてカッコ良いんだと。調べたら、それが前期型マイチェン後のジェミニだったんです。興味を持ったきっかけはそこですね。その後、実は父親も昔ジェミニに乗っていたことを知りました」と語ってくれた日笠さん。
普段乗っているZZ/RはG200W用ピストンを組んで2.0L化。スロットルボディはラリースペシャル用に、ラジエターはサイズ的に合った610ブルーバード用アルミ3層に交換される。また、ノーマルでは青いカムカバーとサージタンクを黒い結晶塗装仕上げとすることで、ラリースペシャルの通称ブラックヘッドを再現。
手前に大きくスラントし、独立したメーターナセルを持つダッシュボード。メーターナセル右側には水温計(付き電動ファンコントローラー)と電圧計が純正風に埋め込まれている。ステアリングはモモキャバリーノに交換。また、フロントバーがチラッと見えるが、11点式ロールケージも装着される。
外装は海外モデルのパーツが盛り沢山。例えば、ヘッドライトを覆うのはホールデン・ジェミナイ用プロテクター、サイドミラーはオペル・カデット純正という具合。また、リスタード製カーボンボンネットやG5製レース用フロントスポイラーも装着。さらに、フロント&サイドのクリアウインカーレンズやFRP製トランクパネルなどは日笠さんの自作だったりする。
ホイールはワークマイスターCR01。前後8Jでオフセット違い(フロント+10、リヤ+20)となる。そこに組み合わされるのは195/50サイズのシバタイヤだ。また、ブレーキはフロントがFC3S純正4ポットキャリパー+S13用ローター、リヤはピアッツァ用キャリパー&ローターが組まれ、サイドブレーキのインナードラム化が図られている。
リヤコンビネーションランプはホールデン・ジェミナイ用。ボディラインを含め、メルセデスベンツ190にも似た雰囲気を醸し出す。排気系はメーカー不明4-2-1エキマニにピアッツァ純正触媒、メインパイプ以降はフジツボ製となり、リヤピースは同社のRM-01となる。
こちらは、日笠さんがコツコツとレストアを進めている1986年式の最終型ZZ/R。日笠さんが初めて買った思い出深いジェミニだったりする。ちなみに、仮合わせ状態のオーバーフェンダーはジェミニの兄弟車、オペルカデットのレース用。「すんなり装着できると思ったら、チリが全く合わずに苦労しました」とのこと。
今回はタイトコーナーが続く峠で試乗する機会に恵まれたが、エンジンは低中速トルクがあって、高回転域のパワー感も満点。二つのバルブが同時に開くラリースペシャル用スロットルと、最終型ブラックヘッド用ECUを使っているからだろう、アクセル操作に対するレスポンスもやたらと鋭い。もっとマイルドな性格を想像していたため、このエンジン特性には驚いた。
それから、ミッションの中身は後期型よりもクロスしたギヤ比を持つ前期型用が組まれ、ステアリングギヤボックスもレシオが速い前期型用に交換。純正パーツを賢く流用することで峠を楽しく、気持ち良く走れる仕様になっているのだ。
もちろん、ポテンシャルの高さがあってこそだと思うが、イジリ方一つで大きく生まれ変わるジェミニZZ/R。それを身をもって知れたことが、今回の取材で一番の収穫だった。
TEXT&PHOTO:廣嶋ケン太郎