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ワンオフの技術をフル投入!
自分だけの独創ワイドボディを実現!
ここ数年、何度となく復活の噂が流れては消えていく日産シルビア。トヨタやスバル、マツダだって頑張っているのだから、日産のコンパクトFRスポーツ復活を期待する声が上がり続けるのも無理はないだろう。だが、そんな世間の無いものねだりはどこ吹く風と、自身のS14に度重なるアップデートを繰り返し、オンリーワンのカスタマイズを追求しているカーガイが大河原さんだ。
SR20DET搭載のS14を購入してから17年程が経つが、フェイスやリヤセクション、インパネを前期型から後期型にチェンジしたのを手始めに、ドリフトができる足回りを作り込むなど、毎年のように様々な改良を施してきた。
そして、最近で最も大きなバージョンアップが完成したのが2年前。大河原さんは「もしもシルビアが現代に存在して、今のスーパーGT300クラスに参戦していたら、こんな感じ?」というイメージを、ワンオフのエアロキットで具現化してしまった。
「元々、市販されているエアロを複数組み合わせて自分なりのスタイルを表現してきたんですけど、やはりそれには限界がありました。縁あって愛知県豊川市のA・BASEでワンオフのエアロを作ってもらうことになったので、現在のスーパーGTと往年のシルエットフォーミュラをミックスしたような、ワンオフだからこそできる自分好みのデザインを形にしました」。
そんな大河原さんの想いが最も如実に伝わるのが、やはりワイドフェンダーの造形。前後とも高い位置で後方まで長く伸び、最後に先端が尖ったようにピュッと隆起する形状は、まさにGTマシンの最新空力トレンドそのもの。当時のJGTCに出場していたS14シルビアとも全く異なる、現代的なワイドボディを実現した。
ただ、それも実在するスタイルを闇雲に真似しているわけではなく、前後バンパーやプレスラインとの繋がり方を計算し、適度に絞りを入れることで流れるような造形美を表現。ボテッとした印象を回避する高度なテクニックと、大河原さんの飽くなき追求心が盛り込まれている。
フェンダーの出面は、深リムのホイールに合わせて設定。それまではかなりネガティブキャンバーを付けて収めていたが、自然なキャンバーに戻した上で、ホイールやタイヤの幅に合わせてフェンダーをイチから製作していった。理想的なスタンスに、ボディ側で辻褄を合わせていけるのも、ワンオフならではの楽しみと言えるだろう。
後期型の顔面に変えられていたフロントには、リップスポイラーも一体成形されているフロントバンパーを装着。フェンダーとの繋がりを意識し、両サイド部分を絞ってあるのが特徴だ。カナードも追加され、アグレッシブなムードを高めている。ボンネットはBNスポーツ製をベースにエアダクトを拡大し、HPIのEVOLVEラジエターのクーリング性能を向上。
アメリカのevasiveがオリジナル商品として展開しているevs tuningのカーボン製GTLMエアロミラーを装着。商品が開発されたかなり初期にオーダーを入れ、国内でインストールしたのが最初期というのも自慢のひとつ。本来は車種専用の設定だが、ステーの下に挟み込んで角度を変えられるシムが複数付属されているため、クルマに合わせた微調整が可能とのこと。
エスプリで特注した超ワイドなGTウイングで、アイコニックなリヤビューを演出。ワンオフのステーを使い、リヤバンパー裏に備わるバッシュバーにマウントしてある。バッシュバーはジャッキポイントとしても使え、リヤディフューザーが付いたままでもフロアジャッキを掛けることが可能だ。
以前はワークのマイスターS1を履き、フェンダーもそれに合わせて製作したが、メッシュを履きたくなって同ブランドのM1にスイッチ。サイズはフロントが10.5Jマイナス25×18インチ、リヤが11.5Jマイナス80×18インチという、驚異的な太さと深さだ。タイヤはトーヨーのプロクセスR888Rを組み合わせる。
サスペンションはGPスポーツの車高調の他、イケヤフォーミュラのタイロッド、リヤアッパーアーム、メーガンレーシングのトーコントロールアームなどを採用。
エンドレスの6POTキャリパーは特注色のレーシングアルマイトで塗装し、ワイドボディと深リムの迫力に負けないルックスも獲得。296mmの大径ディスクローターを組み合わせる。
ベバストのサンルーフを後付けで装着。この辺りはUSを意識したカスタマイズだが、SNSを見ていて興味をそそられるクルマが、ほとんど海外のオーナーが製作したもので、逆に自分のS14に食いついてくるのも海外のオーナーが多いそうだ。
エンジンルームの作り込みは、広島県のE.PRIMEで実施。HKSのキットを利用したGT2タービンのトップマウント化、エアフロレスとLINKによるフルコン制御化、そして艶々のサイクルフェンダー化を実現している。トラストのGReddyエアインクスと、ワンオフで作られたエアフロレスタイプのサクションパイプもエンジンルームの美観に一役買っている。
MOMOのステアリングや追加メーターが備わり、ドリフトやタイムアタックにも臨める状態のコクピット。だが、エアコンレスのためさすがに昨今の酷暑では乗るのも大変だそうだ。メーターは各種フルコンとプラグインで接続できて、画面のデザインのカスタマイズ性にも長けたPowerTune Digitalを備える。
サイトウロールケージのクロモリ製ロールケージを組んだインテリアには、ブリッドのフルバケットシートも装着。エンジンルームと同じ、赤で統一されたカラーコーディネイトもチャームポイントだ。
「このスタイルが完成してからは、むしろ海外の人から同じエアロが欲しいとか、どこで買えるんだといった問い合わせが凄くて驚きました。発泡ウレタンで造形してFRPを巻いた正真正銘のワンオフエアロなので、残念ながら同じエアロはないんだゴメンねと答えるのはいつも心苦しいんですけど、SNSを通じてそういったリアクションをたくさんもらえるのは、やっぱり嬉しいですね」。
この世に存在しないクルマを自らクリエイトする。そんな夢を実現するには、やはり大河原さんのようなクルマに対する並外れた情熱が必要だ。
●取材協力:Carbase Zerozero8 愛知県刈谷市小垣江町堀川1-1 TEL:0566-45-6820
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