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東京オートサロン2018にてカスタムカーグランプリの最優秀賞(チューニング部門)に輝いたフェニックスパワー作のトヨタ86(ZN6)。高速周回路で86として日本で最初に300㎞/hのカベを突破したこのチューンドは、時代背景を考慮し、保安基準を意識した仕様でターボチューニングされていたのがポイントだ。
空力改善とタイヤ径拡大で319.03キロに到達!
保安基準適合の範囲で最高速に挑戦
この純白のトヨタ86は、OPTION誌が主催する86/BRZ最高速トライアルの頂点に君臨するチューンド。名門“フェニックスパワー”が手がけたワークスカーだ。
記録は319.03キロ。2.0LのFRスポーツモデルでは考えられない数値だが、さらに驚かされるのは、この86が完全な合法仕様であるという事実だ。細部を見ていく。
エンジンは腰下にマーレーの86.05φピストンとH断面コンロッド、90mmストロークのクランクを組み合わせて排気量を2115㏄まで拡大。ヘッドもHKSハイカム(IN260度 EX266度)を中心にくまなく手を入れている。
NAのままではパワーが稼げないため、オリジナルEXマニを介してトラストのTD06-25Gタービンをドッキング。HKSのEVC6-IRでブースト制御を行い、555ps&60.78㎏mという強烈な出力を絞り出している。最大ブースト圧は1.7キロだ。
重要なエンジンマネージメントは、高出力対応のVABエアフロを流用した上で純正ECUをリプログラム。高度や気象条件に左右されず出力を安定発揮させることができる全域エアフロ制御仕様としているのだ。
インタークーラーは3層タイプで、80φパイピングと合わせて圧力損失を抑えるスペック。ラジエターはノーマルで、エアコンも装備したままだ。
足回りは、アラゴスタのTYPE-Sをベースにしたオリジナル車高調(FR14kg/mm)を軸に構築。高速周回路は横Gに加えて強烈な縦Gも車体を襲うため、バンプ側の減衰を締める方向でセッティングしているのがポイントだ。
ホイールはボルクレーシングTE037 6061(F8.5J×19+45 R9.5J×19+35)で、タイヤにはミシュランパイロットスポーツ4S(235/40R19)をセットする。
以前は265/35を装着していたが、ハイギヤード効果を狙ってタイヤ外径が大きくなる235/40をチョイスしたとのこと。ファイナルは最高速狙いの3.5を選択しているが、高トルクエンジンのため実用性も備えている。
エアロパーツはイングスのN-SPECシリーズで統一。空力と冷却性など機能性の高さは、S耐マシンへの高い装着率が証明している。
リヤバンパーは、パラシュート現象の対策として下部を大胆にカット。純正スポイラーは高速安定性を確保する最後の砦として維持。エンドマフラーの大型サイレンサーがストリート仕様を物語る。
インテリアはシートをレカロのフルバケとしている程度で、リヤシートなども残されたストリート然としたスタイルだ。ミッションは純正でクラッチにはATSカーボンツインを奢る。
横山代表は笑いながら言う。「目標の200マイルには届いていないので、複雑な気持ちですね。机上の計算では6速7000rpmで320キロ超えでしたが、空気の壁は想像以上なんです。これ以上の記録を出すためには600psオーバーが必要かな。でも、チューニング費用を考えると現実的ではないので難しいですね」。
一方、アタッカーを務めたOPTIONグループ総帥の稲田大二郎は「86やBRZでの最高速は本当に怖いんだ。ホイールベースの関係もあって真っ直ぐ走らないからね。でも、このクルマは不思議と安定していた。空力とサスペンションのセットアップがうまく決まっているんだと思う。あと1キロ伸びたら200マイルって考えると悔しいけど、これはすごい記録だと思うよ」とコメント。
保安基準に拘りつつ、誰もが真似できる現実的なチューニングで200マイル寸前まで加速を続けるトヨタ86。実にトップチューナーらしいメイキングだ。
●取材協力:フェニックスパワー 福井店:福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店:京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157
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