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独創のターボレイアウト、テキサス発のワイドS2K!
若手トップランカーが魅せるFRホンダメイク
86&BRZやNDロードスターなど、空前のレイトモデルFR車のブームに引っ張られるかのように、ここにきて人気ベース車としてさらに熱くなっているのがS2000だ。
カリフォルニア州コロナで開催された、ホンダ系カーガイに絶大な支持を得ている人気サイト『ザ・クロニクルズ』の周年イベントで目撃したトムも、2010年にF22C1を搭載する後期S2000を手に入れ、驚異的なスピードでモディファイを重ねている一人だ。
テキサス州の都市ヒューストンよりも南に位置する片田舎、ロシャロンに住むトムは、西を見ても東を見てもシビックとインテグラだらけのホンダチューニングシーンに一石を投じたい…と、S2000のモディファイを決意。
地元で開催されていた砂漠のゼロヨンレース「テキサス2K」を見て育った若者の根底にあるのは、小さなボディと排気量の日本車が、大排気量のマッスルカーを引き離すあの光景。自らモディファイし、レースを重ねるたびにスキルが上がったトムは、いつしかチューニングショップ「シェイドツリーエンジニアリング」を営むまでになった。
エンジンチューニングもNAでは勝負にならないと、日本で言えばHKSやトラストのポジションを確立している米ターボブランド「プレシジョンターボ」のPT6262タービンで、450psオーバーまでドーピング。しかもタービンは、ワンオフのEXマニホールドを介してエンジン前方にセット。美観を追求してのメイキングだ。
さらに、不要な穴などが全てスムージングされた特筆モノのエンジンベイは、エアコンやブレーキライン、エンジンハーネスはワンオフで引き直し、ABSユニットは見えない場所にリロケート。これだけのクリーンなルックスを手に入れておきながらも、快適装備を一切廃していないことも大きなポイントだ。
足元をキメるのは日本のみならず、海外シーンにおけるクールジャパンホイールのトップ3に必ずやランクインしているであろう『ワークマイスターS1』。センターディスクは、オリジナルグレーでペイント済みだ。
当然ながら、ノーマルフェンダーではどうにもならない超深リム仕様。ついついサイズを欲張って引っ張りすぎてしまうタイヤも、向こうではこのくらいバッチバチに立たせて履かせるのが最近のトレンドなのだとか。スプーンキャリパーとの絶妙なクリアランスも見事だ。
ASMのエアロバンパーに、前置きインタークーラーが只者ではないことを物語るエクステリア。ワイド感に貢献しているフェンダーフレアはサーキットガレージ製で、ムーンクラフトのハードトップとのバランスも絶妙だ。
一方のリヤセクションは、JDMブランド『カーショップグロウ』のLEDテールに、あえての前期リヤバンパー&ジェイズレーシングのディフューザーという組み合わせだ。
インテリアは赤×黒でレーシーにメイキング。 ヴェルテックスの10スターディープステアリングや無限のステアリングハブなどのJDMブランドと、USホンダ系パーツの筆頭ブランド『スカンク2』のシフトノブやチェッカードスポーツのレースフロアプレートなど、日米ブランドのアイテムをセンス良く配している。
シートはレカロのポールポジション(レザー)で、レーシングハーネスにはバディ-クラブ製をセットする。
クスコのロールケージにバンド固定された油圧、ブースト、空燃比の3連メーターは、USシーンでは有名なAEM社製をセレクト。
そんな怒涛のモディファイの甲斐もあって、2012年~2015年にかけて、名だたるイベントやカーショーでベストアワードを持って帰るほどビルダーとして名を馳せた。
さらには2015年のラスベガスで開催されたSEMAショーでも、ケミカルブランドで有名な「マグアイアーズ」ブースでデモカーとして、そのクリーンにフィニッシュされたエクステリアを披露。エンジンパフォーマンスだけでなく、魅せることも長けていることを立証したのである。
ルックスとパフォーマンスとの両立のレベルの高さが突出したトムのS2000。日本のチューニングシーンとは少し味付けの違うメイキングは、参考になるディテールだらけだ。
Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI