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S660はフレームのみ使用!?
フルスクラッチで進化した隼エンジン搭載のモンスター
数々のエンジンスワップを実践してきた実力派“ダディモーターワークス”が手がけるのは、ベック550をイメージしたカウルを纏ったこのマシン。その正体は、GSX1300R隼のエンジンを搭載するS660だ。
このプロジェクトのきっかけは、ある海外企業が「イギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのドリフトクラスにポルシェ550でエントリーしたい。エンジンはハヤブサのエンジンを積んでほしい」というオファーを持ちかけられたことから始まる。とはいえ、本物のポルシェ550は現存数も少なく、数億円で取引されている代物。そのため、ポルシェ550の精巧なレプリカでもあるベック550をベースにする案へとシフトした。
しかし、このベック550も70年前のポルシェの設計を引き継いでいるため、ボディの強度や剛性を考えるとハイパワーエンジンでのドリフトには不向き。そこで、最終的な決定案となったのが、S660をベースにエンジンスワップ&ボディワークによって、希望通りの隼+550スタイルのパッケージングを完成させるプランというわけだ。
ボディワークに関してはS660の骨格に合わせ、アルミパネルを使って完全ワンオフ。担当したのはボディワークのスペシャリスト“アートレーシング”。
本来ならば現車を元に採寸したいところだったが、時間の制約もあった今回のプロジェクトではネットで見つけた設計図やスケールモデルを参考にボディ製作が進められた。ディティールをアレンジしながら完成したフォルムは、カスタムされたベッグ550という雰囲気をしっかりと醸し出し、当初の企画より数段上のインパクトを与えている。
ヘッドライトのリムなどはベック550同様に空冷VWから流用。また、ダクトにはオイルクーラーをセットし、油圧上昇対策も万全。ラジエターなどはリアに移設して、低いフロントフードを再現している。
ハーネスやECU、メーターなどは隼の純正を流用し、エンジンスワップのための工数を減らしているのもポイントだ。
シートはレカロSPGのシェルをペイントしてセット。ドリフトで使うことを想定し、ハーネスはシンプソンの5点式を与えている。
アルミで製作されたインパネには、イグニッションや冷却ファン、ライトといった操作系スイッチが新設される。また、ドリフトに合わせて油圧サイドブレーキを追加しているが、このレバーはドライバーの要望に合わせて右側にも移動することができるスペシャル仕様だ。
心臓部は、2007年にモデルチェンジした第二世代の1340㏄モデルから流用した197ps仕様。搭載位置の関係でフレームの一部をカットしているが、結果重量物を運転席側へとオフセットできることとなった。
ミッションも隼の純正を使っているが、当然のことながらバイク用ミッションのためリバースギアが存在しない。その対策として、クワイフ製バックギアボックスを組み込んでいる。
フロントフード内にはフューエルタンクを設置。このタンクに繋げるセンディングユニットは、隼からそのまま利用することで、残量計などもしっかりと稼働する。
S660ベースとは言っても、最終的に使用したのは骨格のみ。まさに、フルスクラッチ級の工程で誕生した魔改造S660。スタイリングはもちろん、隼の1.3Lエンジンは197psのパワーを絞り出し、切れ角アップナックルや油圧サイドなどドリフト用のセットアップも抜かりなし。 このスタイリングとパフォーマンスならグッドウッドでも注目を集めること間違いなしだ。
●取材協力:ダディーモーターワークス 愛知県豊明市沓掛町神明13 TEL:0562-85-9911
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