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運動性能を突き詰めて2JZから3S-GTEにスイッチ!
当時のJGTCマシン同様に、3S-GTEエンジンを搭載したJZA80タイムアタック仕様の登場だ。手がけたのは老舗ショップ“トライアル”。2000年代前半の関西サーキットシーンで圧倒的な強さを見せたスーパーチューンド、細部を見ていこう。(OPTION誌2002年5月号)
軽量コンパクトな600馬力ユニットを詰め込んだサーキットスペック
このJZA80スープラは、エンジンを2JZ-GTEから3S-GTEに積み換え、サーキットスペックとして西日本で暴れまわる名将“トライアル”の一番機だ。
エンジン換装の狙いは、言うまでもなく“軽さ”。前後重量配分でポジティブに作用することも考慮されての決断だ。
選んだ3S-GTEは、SW20のIII型用。本体は87φ×ストローク91mmの2162ccに排気量アップし、カムはHKSの272度を用いる。組み合わされるタービンは、低回転からの立ち上がりに定評のあるGT3240タービン。最大ブースト圧1.6キロ時に約600psものパワーを発生させる。
2気筒分空いたスペースには、インタークーラーとラジエターをVマウントで配置。冬のサーキットアタックでは冷えすぎるほどの冷却性能で、ラジエターにはテープを貼って蓋をするという。また、サクションパイプのショート化という役割も担っており、レスポンスアップに大きく貢献している。
高回転の伸びと気筒ごとの均等な燃焼を実現するため、サージタンクはワンオフ製作。スロットルは2JZ純正を使う。もちろん、燃料系も850ccのメインインジェクターやボッシュ製ポンプで強化済みだ。
制御系はエンジンハーネスをSW20用に引き直した上、3S-GTEのメインECUにF-CON Vプロを組み合わせて燃調や点火時期のセッティングを煮詰めている。パワーバンドは4500〜8500rpmと非常に広い。
足回りは、クァンタム車高調にノヴァスプリングという盤石の組み合わせでセットアップ。バネレートは秘密とのことだが、サーキットでも非常にしなやか、かつ安定した動きを見せていた。また、設定車高に合わせてアーム類の取り付け位置を見直し、ジオメトリーも変更している。LSDはTRD製(2WAY)をチョイス。
ブレーキはフロントにF50用ブレンボキャリパーを装備。パッドはPFC製のものを使用している。制動力を安定させるために、ローター冷却用のブレーキダクトも配備する。
インテリアはワンシーター化され、センターパネルのスイッチ類やダッシュボードの3連メーター類がある以外、フロアカーペット等も残されたストリートカー+αといった雰囲気。
とはいえ、ボディはフルストリップ状態から徹底補強を敢行していたりする。つまり、わざわざカーペットを敷き直して内装の美観を追求したのである。
ハッチバックという構造上、どうしても剛性が不足するリヤ周りは溶接留めロールケージ&フルスポット増しで対応。この辺りの溶接補強は、普段カバーを被せているため視認することはできない。まさに、羊の皮を被った狼だ。
一方のエクステリアは、トライアルのオリジナルエアロパーツでフル武装。フロントはフルバンパーにカナードやブレーキダクトを増設し、空力と冷却を考慮したメイキングが施されている。
フロントフェンダーは長穴加工して取り付け位置を外側にオフセット。こうして、265サイズのワイドなSタイヤを履けるようにしている。
サーキットスペックということで、助手席側のヘッドライトはキャンセルしてエアインテーク化。そのすぐ奥にはタービンへと直結するエアクリーナーが待ち構えている。別経路でタービン回りへフレッシュエアを導くためのダクトを這わせ、EXマニやウエストゲートなどの冷却も行う。
リヤフェンダーは叩き出し加工でワイド化。トライアルのBAZOOKAマフラーがスマートに収まるリヤバンパー&ディフューザーもオリジナル製品だ。
ルーフとほぼ同じ高さというハイマウントなGTウイングはカーボン製の逸品。ダウンフォースを増強するためのガーニーフラップも取り付けられている。
「軽いというだけの理由で3Sを載せたわけじゃなく、エンジンが完全にホイールベース内に収まることによるステアフィールやブレーキバランスの改善。さらに目標出力600psということを考えた結果、このパッケージになったんよ」とは、トライアル牧原代表。
TIサーキット英田(現・岡山国際)で1分38秒台を安定して叩き出す実力は、チューニング技術にレースカー的な理論とメイキングを組み合わせることによって実現したものというわけだ。
●問い合わせ:トライアル 大阪府堺市美原区丹上87-1 TEL:072-362-7779
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トライアル
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