「安くて快適なATモデルを狙え!」日独の2.0L・4気筒・FR・4人乗りクーペ乗り比べ

メジャーな86/BRZだけじゃない!

実用性と価格面が魅力のBMW 120iという選択肢

クルマ好きなら、「一度は乗りたい!!」と思っているだろう2ドアFRスポーツカー。ところが、1990年代のシルビアやスープラ、RX-7、フェアレディZなどは軒並み中古車価格が高騰して、今やすっかり“高嶺の花”となってしまっている。

また、2000年代に入ってからはスカイラインやZなど日産が孤軍奮闘していたが、排気量が3.5~3.7Lへと拡大。維持費がかさむことから、愛車として迎え入れるのに二の足を踏む人も少なくなさそうだ。そうなると、購入対象として現実的に考えられる2ドアFRスポーツカーは、自ずとZN6/ZC6に絞られるわけ。

が、ちょっと待った!! 視野を輸入車まで拡げると、別の選択肢が出てきたりする。それがBMW120iクーペ、UC20だ。日本導入は2012年で、ZN6/ZC6の初期型と年式的には同じ。N43B型2ℓ直4エンジンをフロントミッドに搭載し、ミッションはマニュアルモード付き6速ATが組み合わされる。つまり、4人乗りの2ドアクーペとして、唯一ZN6/ZC6のライバルと言える存在なのだ。

両車に大きな違いがあるとすればUC20にはMTの設定がないことだが、この企画の趣旨が「ATモデルを選ぼう」ということだから問題ではない。ここで取り上げるにはもちろん理由があって、まずは中古車価格の安さだ。大雑把に走行距離5万km前後の個体で比べると、ZN6/ZC6の150~200万円に対して、UC20はその半額の70~100万円がボリュームゾーンになる。

また、カタログ上のパワーは170psと、FA20が30ps上回るが、逆にトルクはN43Bが1.4kgmのアドバンテージを持つ。しかも、FA20より2000rpm以上低い回転数でそれを発生する。

ダッシュボードを手前にスラントさせて開放感を演出。ステアリングスポークにはオーディオやエアコン、ハンズフリーフォンなどの操作スイッチが付く。パドルシフトはZN6/ZC6と同じく右がアップ、左がダウンとなる。スピードメーターは260km/h、タコメーターは7500rpmフルスケールで、あとは燃料計のみというシンプルなメーターパネル。

アクセルペダルは開度を一定に保ちやすいオルガン式を採用。また、操作時の剛性感が抜群に高く、タッチもリニアなブレーキはBMWの伝統と言っていい。

前席はサポート部をレザー、センター部をファブリックとしたコンビタイプ。スライドやリクライニングなどの調整は電動となる。

一方、後席は大人2人がそれほど窮屈な思いをせずに乗れるスペースを確保。ヘッドレストも備わるなど、乗車を前提とした設計であることが分かる。背もたれは60:40分割可倒式で乗車人数や荷物に合わせてアレンジ可能。

トランクルームは左右タイヤハウスの張り出しが大きいが、奥行きと高さで容量を稼ぐ。全長4.4m弱のフル4シーターFR車として極めて秀逸なパッケージングであることを強く実感する部分だ。当然、実用性ではZN6/ZC6を上回る。

一方のZN6/ZC6。着座位置が低く、運転席に腰を下ろした瞬間からスポーツカーらしさを楽しめる。ステアリングホイールにはパドルシフトが設けられ、右でアップ、左でダウンのマニュアル操作を行なえる。メーターパネルには9000rpmフルスケールのタコメーターを中心として、左側にスピードメーター、右側に燃料計と水温計が配置される。

アルミプレートを配してスポーティ感を演出するペダル&フットレスト。アクセルペダルは吊り下げ式、ブレーキペダルは国産車では一般的なAT用幅広タイプとなる。

サポート性を重視したデザインで、表皮には滑りにくい素材を使った前席。前後スライド、リクライニング、座面の高さを手動で調整でき、チルト&テレスコピック機能を持ったステアリングと併せてベストなポジションを見付け出せる。

後席は前後&天地方向ともスペース的に厳しく、プラス2と割り切るのが正解。背もたれは一体可倒式で荷室の拡大が可能。

開口部が大きく荷物の積み降ろしはしやすそうなトランクルーム。そういえば発売当初、「後席背もたれを倒せば、標準サイズのホイール&タイヤを4本積める」と謳ってた。容量は過不足なさそうだけど、高さがやや足りない印象を受ける。

そんな2台をワインディングで乗り比べ。スポーツカーとして分かりやすく演出されているのは断然ZN6/ZC6だ。特に中高回転域で吹け上がりに鋭さが増すエンジンフィールや、サウンドチューニングが施され5000rpmを超えたあたりで耳に飛び込んでくる吸気音など。

一方のUC20は、全体的にもう少し穏やかなイメージ。低中回転域のトルク感はFA20を凌ぎ、7000rpm手前まで割とフラットに回る切る。6速ATはZN6/ZC6より全体的にローギヤードな設定で、カタログ値のパワーから想像される以上の加速を見せてくれる。

ちなみに、車重はZN6/ZC6の1240kgに対してUC20は1410kg。実に170kgもの差があるが、UC20は前軸重710kg、後軸重700kgと、限りなく50:50に近い前後重量配分を実現しているあたりがさすがBMW。そのため、コーナー進入時のブレーキングからターンイン、脱出に至るまで一連の挙動が非常にナチュラルで安定感も抜群に高い。

一方のZN6/ZC6は前軸重700kg、後軸重540kg。前後重量配分は56.5:43.5となる。実はフロントの重さはUC20と変わらず、リヤの軽さがそのまま車重差として現われているのだ。いつの時代もクルマにとって軽さは正義だし、それが軽快なハンドリングを生み出しているのは間違いない。ただし、前後バランスに注目すると、圧倒的優位に立つのはUC20なのも事実だったりする。

このご時世、手軽に乗れる2ドアFRスポーツカーとしてZN6/ZC6は鉄板だ。しかし、その半額で同じパッケージングを持つUC20が買えるとなれば、候補に挙げない手はないと思う。

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⚫︎取材協力:サカタオートサービス 東京都あきる野市横沢欠ノ上43-1 TEL:042-519-9826

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