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ワンオフボディ加工で独創スタイルを構築
ATのZN6型86からMTのサイオンFR-Sに乗り替え!
集合場所で我々の到着を待っていてくれたピンクゴールドのZN6。ワイドボディをエアサスで着地させたインパクトある見た目に目を奪われていると、左側のドアからさっと降りてきたオーナーが20代の女性なものだから、あらかじめ知っていたとはいえ改めて新鮮な驚きを覚えてしまった。
トヨタ86の北米仕様であるサイオンFR-SのMT車に乗る“クルミ”さんは、スタンス系86女子の先駆け的存在。これまでインスタにアップしてきた映え写真は愛車のFR-Sで埋め尽くされており、カスタマイズの遍歴を追うこともできる。
「クーペに乗りたいと思って86とCR-Zで悩んだ結果、86を選びました。最初はATの86に乗っていたんですけど、スポーツカーはやっぱりMTだ!って思って。それでたまたま見つかったのが左ハンドルだったんです」。
愛車との出会いをそう振り返るクルミさん。今でこそ86に乗っている女性の友人は増えたそうだが、当時は周りにいる86仲間は男性ばかり。徐々にカスタマイズも始め、「確かテールランプを変えたのが始まりだったかな?」と、もはや仕様変更を何度したか思い出せない程の深い沼にハマっていった。
エアロパーツはフジムラオートのロケットダンサーが最初から装着されていたため、さらなる変わり映えを求めてエアサス化に着手。大阪府摂津市のAPガレージがオリジナルで展開するニューマテックのエアサスペンションを導入し、地を這うようなローダウンを実現した。
その頃から各種メディアの取材も受けるようになるのだが、ショーでアワードが取れるような完成度とオリジナリティを目指し、今度はワイドボディ化を決意した。
フロントバンパーはロケットダンサーをベースに、A-BASEがエキゾチックカー的な要素を盛り込んだワンオフの加工を実施。ノーズが尖った雰囲気とワイドに広がった開口部がマッチし、リップスポイラーも一体成形されている。ワイドフェンダー、サイドステップ、リヤディフューザー、トランクスポイラーなどはラリーバッカーのバージョン2を使用。フィット純正色のピンクゴールドメタリックⅡでオールペイントも行なった。
国内で削り出しを行なう鍛造ホイールメーカー、バラマンディデザインの『STARMARLIN』を装着。切削感の伝わる5本スポークのディスクに、ブラッシュド仕上げにしたリムを組み合わせ、細かいところまでこだわって他との違いを出している。
アメリカのブレーキメーカー、ROTORA(ロートラ)のブレーキキットを装着。フロントに4ポット、リヤに2ポットの鍛造キャリパーを備え、軽量大径な2ピースローターと組み合わせる。
グレーのバックスキンを採用したAvus Rennstrecke(アーヴス レンストラック)のセミバケットシートを装着。インパネもその雰囲気に合わせたウルトラスエードの張り替えを行ない、インテリア全体の統一感を表現。
ステアリングホイールとシフターはポップなデザイン性で知られるLIKEWISEを使用。「左ハンでしかMTに乗ったことがないので、もう右ハンのMTには乗れません」とクルミさん。エアサスのマネージメントはAirlift製で、専用コントローラーも備わる。
機関系では、東名パワードの不等長エキゾーストマニホールドとフジツボのマフラーを装着。リヤバンパーに合わせてリヤピースを延長させており、見た目と太いサウンドを両立させた。
「今の仕様になってからは、SNSを通じて海外の人からの反響がすごくて、このエアロはどこで買えるの?とか問い合わせがたくさんありました。あと、私のことを知ってくれてる女性オーナーさんも増えて、イベントで声をかけてもらったりしてすごく嬉しいですね」。ふわっとした、とても女性らしい雰囲気のクルミさんだが、クルマに関しては男女関係なく平等に評価されたいと言うのが本音だという。
「クルマをイジり始めた時から周りは男の人ばかりでしたから、人よりカッコ良くイジる=男の人よりカッコ良くイジるが当たり前で、それが昔からのモットーでした。その気持ちに今も変わりはありません」。クルミさんが胸に秘めるクルマ愛は、男女関係なく誰よりも熱い。
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI