「これは先代86チューニングの到達点かもしれない・・・」独立スロットル化で官能性200%アップ!

自然吸気の味わいを極める

FA20が持つ楽しさを徹底的に引き出す!

27歳の若さで、これまでAE86に始まり、R32とER34のスカイライン、S130のフェアレディZを乗り継いできたという冨田尚智さん。とにかく乗りたいクルマに全部乗ってやろう…と、古めのクルマばかり選んできたが、現在の愛車はグッと現代的なZN6のトヨタ86だ。

「クルマ好きになったのも、最初に買ったクルマがAE86というのも父の影響でした。自分でいじるのも好きで、AE86は5バルブヘッドの4スロ仕様で走ってたんですけど、その頃にAE86ビルダーとして有名なイナズマワークスの池田さんと知り合ったんです」。

(左)ビルダー・池田さん/(右)オーナー・冨田さん

イナズマワークスの池田将隆さんは、AE86を始めとするトヨタ車を多く手掛けるプライベートビルダー。これまでは自分のクルマを作ってショーに出展するスタイルを貫いてきたが、ここ数年はカスタマーのクルマも手掛けている。

実は冨田さんが所有するZN6は、もともと池田さんが“足”として使うつもりで所有していたもの。エンジンブローした前期型を安く手に入れ、後期型エンジンへの換装と外観の後期ルック化を行なうなど、池田さんとしてはライトなカスタムに留めておいた車両だった。そして、S130を売却して次の愛車を探していた冨田さんが候補のひとつに上げていたのがZN6。池田さんとコミュニケーションを取る中で、様々な想いが膨らんでいったそうだ。

「自分は古いクルマが好きというより、パッと見てカッコ良いと思えるかどうかを基準にしています。ZN6の見た目はもともと好きでしたし、池田さんからフルコン制御で4スロ化もできるよ、という話を聞いたのが決定打になりました」。

AE86を4スロにしていた冨田さんにとって、ZN6でも4スロというのが古くて新しい感覚を呼び起こし「それやってみたい!」とカスタム魂に火がついたわけだ。結局、ある程度イジるベースが出来上がっていた池田さんのクルマを譲ってもらう格好となり、ひとまずホイール、車高調、マフラーなどは冨田さんが自ら交換作業を行なった。

一方、池田さんは元自分のクルマだった86をベースに、サード製の4スロットルキットをインストールする作業に着手。キットには取り付けに必要な部品が取り揃えられているが、データインストール済みECU付きと、別途フルコンでの制御を前提としたECUなしを選ぶことができる。池田さんが選択したのは、スウェーデンのMaxxECU(マキシスECU)というフルコンで制御する後者の方法だった。

「同じ和歌山にマキシスECUの代理店であるネオスタイルさんがあって、距離が近くて日本語で対応してもらえるのは、セッティングなどのサポートを受ける上でも好都合なんです。現車合わせでのセッティングも行なうんですけど、ZN6に4スロを付けた場合のマップデータが既にあって、直噴を使わないようにする分、容量をアップしたポート噴射用インジェクターとデリバリーも用意されています。もはや専用キットと言っても過言ではないくらい内容が充実しているんですよ」。

マキシスECUは複数種類のECUをラインナップするが、吸排気の両側にVVTを搭載するFA20の制御には今回の『RACE』など、上位クラスのモデルが必要とのこと。RACEは8気筒分のシーケンシャル噴射&独立点火に対応し、ワイドバンド空燃比コントローラーを標準で内蔵。デュアル電動スロットルやフレックス燃料にも対応するなど、カバーする領域の広いECUだ。

エキマニはイーカスタムのステンレス製4-1等長タイプ3を採用。5000rpm以上のトルクアップを実現する。A/FセンサーとO2センサーの取り付け部も装備。マフラーは4本出しの見た目と音に拘り、ROWENのフルチタンマフラーを装着した。

Raceseng(レースセング)の軽量クランクプーリーを装着。その他、各種リザーバー類のキャップにVERUSエンジニアリングのアルミビレット製を使用することで、エンジンルーム全体の色味をモノトーンで統一させている。

FA20は直噴とポート噴射を組み合わせたD-4Sを採用するが、4スロ化するに当たって直噴側のインジェクターは無効化。その分、ポート噴射側のインジェクターを増量してある。エンジンルームに向かって左側のデリバリー横に備わる黒い筐体が直噴用ECUだが、それも働いていない状態となる。エアフロと吸気温センサーを共用しているが、カプラーを繋ぎかえることでエアフロを読まずに、吸気温センサーとしてだけ使うように変更。

池田さんが所有していた時からP.C.D.を5H-100から5H-114.3にコンバート済み。冨田さんが選んだホイールはTE37ウルトラトラックエディションIIで、サイズは前後とも9.5J×19+22。タイヤはトーヨーのプロクセススポーツ2。ブレーキは86用のキャリパーブラケットを調達した上でブレンボを装着し、フロント6ポット、リヤ4ポットにドリルドローターを組み合わせる。

クラシックなイタルボランテのステアリングホイールを備えるほか、2015年に発表された86の特別仕様車『86 style Cb』の純正メーターを装着。レトロな文字盤と電球色に光る感じが旧車感を醸し出す。

フロントシートはレカロ・SR-6を装着。そのカラーリングと合わせるように赤色のメッシュが入っている後期型GT用リヤシートも備えることで、カラーリングのコーディネートを図っている。

「僕の中でZN6の86は『ザク』なんですよね。量産型なんですけど、実はエース級の個性的なキャラもいて、この86なんかは『ククルス・ドアンの島』に出てきた陸戦用の高機動型ザクのイメージです。伝わりますかね?(笑)。要するに作り手のセンスがダイレクトに反映されて、カッコ良くもなればダサくもなるベースなんです。このクルマを冨田くんに売った後、また自分用に1台ZN6を買ったので、カスタムの引き出しを増やす作業は続けていきますよ」とはビルダーの池田さん。

ひとまずインストールとセッティングが完成した4スロ仕様に乗って、冨田さんは「やっぱりレスポンスが全然違います。ノーマルのもっさりした感じが払拭されました。あとはやっぱり吸気音。旧車に乗っているような感覚も味わえます」と顔を綻ばせた。

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Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI

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