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グレッディ・パフォーマンス・プロダクツの渾身作
補修用2JZ-GTE「クレートモーター」を独自開発!?
90年代のスター選手が、もはやコレクションとして保全されるフェーズへ突入している昨今。アメリカでも事情は似たり寄ったりで、個体数の減少と反比例してヴィンテージとしての価値を高めている車種もある。その代表格がJZA80型スープラだ。
試しに、ロサンゼルス近郊で売りに出されている個体を検索してみると、唯一ヒットしたのは過走行のAT車1台のみ。それでも3万9900ドル(執筆時のレートで約570万円)の値がつけられ、もはや雲の上の存在という現実を思い知らされる。
その一方で、絶対数こそ少ないかもしれないが、生涯をかけてスープラに乗り続けることを誓うエンスージアストがいるのも事実。それに応えるひとつの回答を用意しているのが、カリフォルニア州に拠点を置くGPP(グレッディ・パフォーマンス・プロダクツ)だ。
GPPは近年、載せ替えに使う補修用エンジンを意味する「クレートモーター」の独自開発に力を入れている。最初に手がけたのがRB26の2.8L仕様。そちらは以前、本サイトでガレージアクティブのBNR32ドライカーボンRを紹介した際にレポートした。
そのシリーズ第二弾となるのが、2JZのクレートモーター。アメリカ国内のモータースポーツ活動を通して得た各種リソースを活用し、シリンダーヘッドのCNC加工、バルブリフターのDLC処理などを事前に施した、チューンド・コンプリートユニットとして完成させている。
ボア×ストロークはノーマルの86.0φ×86.0mmから86.15φ×91.0mmに拡大し、それに伴い排気量は2998ccから3175.5ccへと増量。アメリカ製の鍛造ピストン、ビレット削り出しのコンロッドとハイカムを組み、最高許容回転数は7200rpmから9500rpmへと引き上げられている。
CNS加工を施したシリンダーヘッドを含むロングブロックとして市販化されており、嫌が上にもスペシャル感が増すビレット削り出しのヘッドカバーとタイミングベルトカバー、調整式カムギヤや強化型ベルトなどの補機類も付属されている。シリンダー壁面にはクロスハッチを施す表面の再処理を行ない、フルカウンターウェイトのビレット削り出しクランクも組み込まれる。
ワンオフのエキマニを介して装着されるタービンはGPPオリジナルのGP78R。吸気系は、GReddy製サージタンクに電子制御スロットルを備える最新仕様だ。
また、オイルや燃料の取り回しに使われているホースとアルミ削り出しのフィッティングもGPPのオリジナル商品だ。ホースナットに逆ネジが切ってあり、反時計回りにホースに捩じ込むと簡単に装着できる。漏れの原因になるロウ付を採用せず、削り出し部品で完結させているのも特徴である。
足元には、KMG(KOSTRITZER MASCHINEN GESELLSCHAFT)というメーカーのマグネシウム製ホイール『KMGT-1』を装着。マグネシウムのディスクとアルミのリムを組み合わせた2ピースで、チタン製のハードウェアで固定するという、拘りの逸品。タイヤはNITTO製で、特にリヤにはNT555Rというドラッグラジアルを備える。サスペンションはアメリカにも進出しているRS★Rのコイルオーバーを使用し、ローダウンさせている。
この車両のためにTRA京都の三浦さんがデザインし、ワンオフで製作したバンパー、サイドスカート、リヤウイングを装着。それにSEIBONのカーボンボンネットも組み合わせ、ショーカーらしいグラフィックとともに仕上げた。大開口のフロントバンパーから覗くインタークーラーも、もちろんGReddy製だ。
レザーステアリングはGReddyとMOMOのコラボ商品で、モンテカルロをベースにGReddyカラーのステッチが施されている。センターマークがスエードというのもオシャレ。シートもGReddyとBRIDEがコラボしたオリジナル商品。この車両にはセミバケットのSTRADIA3が装着されていた。シフトノブもおなじみのAタイプと、GReddyオールスター揃い踏みといった印象。
今や顧客はアメリカや日本に限らず、世界中に存在するGPPだが、クレートモーターはセッティング次第で1200psもターゲットに入るという。磨き上げられたセンスとノウハウでスープラと向き合うGPPは、拘りの強いオーナーにとっても心強い存在である。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI