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最新の設計と解析技術投入で剛性と強度は9%アップ!
思い描いたラインをトレースできる安心感が最大の武器
鍛造スポーツホイールの王道として知られ、多彩なラインナップを揃えるTE37シリーズ。そのなかでも、ヒストリックカーからヤングタイマーまで幅広い層から支持されているのが「TE37V」だ。TE37が持つ軽量&高剛性を備え、段付き深リムというノスタルジーなスタイルが持つ不変のカッコ良さが、旧車オーナーの心を鷲掴みにしている。
2010年の発売当時、シリーズの軸に据えていたのは初代のフェアレディZやハコスカ/ケンメリではなく、中古車市場で値ごろ感があり、サーキット等の走るステージで多く愛用されていたAE86とNA/NB型ロードスターだった。
とくにAE86オーナーの憧れの存在で、当時もプライベーターから絶大な人気を誇っていたオーバーフェンダーのN2(特殊ツーリングカー)はTE37Vのあるべき姿を具現化した1台であり、今なおAE86人気を牽引している。そして、その姿に憧れたサーキットを走る本気組にとってもTE37Vは欠かせない存在となっているのだ。
そんなTE37Vも発売から14年が経過。自動車アフターマーケットの変化に合わせてアップデートが図られることとなった。その名も「TE37V-PRO」。
「現在のTE37Vについてはユーザーさんから不満の声は届いていませんが、昨今の技術革新により、性能の底上げは著しく、エンジンチューンからタイヤのグリップ力の向上によってサーキットのラップタイムは年々短縮。それに応じて、われわれも新たな商品をつねに投入しなくてはなりません」とは、レイズの南雅志さん。
ただし、TE37やCE28Nについては、普遍的な定番デザインとして広く認識されており、「形を変えてほしくない」ユーザーが多いのも事実。そのため「デザインは変えない、性能は変える」というコンセプトのもと、見た目はそのままで、中身を現代基準の車両に合わせて深化させるビッグマイナーチェンジ的な考えでリニューアル。実際は1からやり直したフルモデルチェンジで、これまでにTE37 SAGA S-plus、CE28N-plusがリリースされてきた。今回のTE37V-PROはその第3弾だ。
最新のリバースエンジニアリング技術を駆使してシミュレーションを行い、設計を変更。スポークの縦断面積の厚みを増やし、インナーリム形状を手直し。これにより剛性を従来品から9%アップさせた。一方で、センターサークルの外周部のDC加工量を増やすことで、重量を従来品と同等に抑えている。
また、瞬間的にホイールへ大きな回転トルクがかかったときにタイヤの空転を防止するため、ビードシート部分に細かい凹凸形状の加工(ローレット加工)を追加。限界域でのタイムロス抑える工夫も盛り込まれている。
つまり、TE37V-PROはコンマ1秒を削り取りたい本気のタイムアタッカーのために用意されたハイエンド仕様というべき存在というわけだ。
カラーはTE37Vを代表するプレスドグラファイトのみの設定で、スポークの9時位置に「TE37V-PRO」のロゴが刻印されているのが従来品との識別点だ。また、一般的には手書きで行うタイヤ&ホイールのマーキング用の専用ステッカーも付属。オーナー好みにアレンジすることで、自分好みのレーシーな雰囲気に仕立てられるのも魅力だ。
今回は、鈴鹿サーキットで行われたTE37V-PRO最終テストの独占取材が実現。AE86の業界では指折りの有力ショップのひとつである“小泉商会”のデモカーにシバタイヤのスリックタイヤを組み合わせている。1850㏄まで排気量アップされた7A-Gエンジンは250psを発揮し、自然吸気のAE86チューンドとしてアガリと言うべきハイチューンスペック。ボディ補強も徹底されており、コーナーリング時のホイールに対する負担は相当なものだ。テストは従来のTE37Vと組み替えながらの比較する形で行われた。
「AE86はTE37Vのメイン車種の1台と位置付けており、ありがたいことに今もサーキットを走るオーナーの多くの方々に装着いただいています。熟成により、限界性能が上がっていますので、PRO仕様の追加は長くサーキット遊びを楽しんでいる方に新しいアイテムを提供したい。そんな思いもありました」とレイズ南さん。
実際にクルマの進化に対して、オーナーはTE37Vに現在物足りなさを感じているのだろうか? 小泉商会の小泉コータローさんはこう語る。
「TE37Vが出る前は、世の中に深リムデザインで、軽量と剛性にこだわった15インチホイールってなかったんですよね。TE37Vは革新的なホイールでした。当時はタイヤのグリップ力が上がり、チューニングのレベルが高まってきている時代でしたので、それを受け止めるホイールとして段違いの性能が引き出せた。そんな印象です」とコータローさん。
AE86に対してはキャパシティも十分あり、オーバークオリティな印象で、これまで全く不満はなかったそう。「今回のTE37V-PROのテストもより進化したホイールが出るなら、比較して試してみたい、そんな気持ちですね」
テストは残念ながらTE37V-PROでの走行は途中赤旗が出たことで、インラップ含めて3周しかできなかったが、その短い周回でも違いは明らかだった。
「従来モデルと比べるとステアリングを切ったときにホイールの剛性感が上がっており、舵角量も減少。クルマが確実に操作に対して追従する感触で、思い描いたラインに導いてくれます。とくに130Rは6速全開で侵入するのですが、ホイールが踏ん張ってくれるので不安感はなし。結果、コーナーリングスピードが速くなる。そんな印象を受けました」
タイムはタイヤの違いもあって直接比較ではないというが、感触的にはホイールを交換するだけで、鈴鹿で0.5秒程度は短縮できる感触だという。
「性能はもちろんですけれど、いつもよりも安心して踏んでいけるという感触がコースを攻めるのには大事な要素。鈴鹿ってエスケープゾーンが小さいので不安だなと感じるとどうじても踏み切れないのですが、TE37V-PROは安心感がステアリングを通じて伝わってくる。とくにS字で横Gがかかったときに粘り強く、切り返したときの応答性もいい。リズムよく走れる心理的な安心も走行会では大事な要素です。ベテランよりも、ちょっと伸びしろのあるドライバー、クルマ作りのステップアップに合わせて、Sタイヤやスリックを履こうと考えているオーナーにTE37V-PROはお勧めしたいですね」。
今回のテストでその差異は体感とタイムにはっきりと表れた。速さを極めたいなら、今あるホイールのなかでTE37V-PROはベストな選択であるとコータローさんは絶賛。PROのサブネームは伊達ではない。現在は15インチのみの設定だが、16・17・18インチも追加予定。ビジュアルと性能を満たす新たな旧車用ホイールとしてはもはや他の追従を許さないだろう。
●問い合わせ:レイズ TEL:06-6787-0019
●製造元:レイズエンジニアリング
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レイズ
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レイズボルクレーシングTE37V-PRO
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