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ミニカトップの5速MT仕様はレアすぎる
量産エンジンでは世界初の5バルブ搭載!
1990年に排気量が550ccから660ccに拡大され、ボディ全長も3.2mから3.3mへと改められた軽自動車規格。そのタイミングで三菱から登場したのが初代ミニカトッポだ。
車名とフロントマスクから分かる通り、ベースは6代目H20系ミニカ。Aピラー以降を大きく立ち上げて全高を1.7m前後にまで高め、室内空間の天地方向に大きなゆとりを持たせたハイト系ワゴンの駆け出しとも言えるモデルだ。そんなミニカトッポに乗るのが青木親子。購入したのは父親の順さんだけど、今では息子の健吾さんも仕事にプライベートに乗っている。
「自分はまだ小さかったんで記憶が曖昧なんですけど、実はこれが2台目。1台目は事故で全損してしまい、どうしてももう一度ミニカトッポに乗りたかった父が、ちょうど手放そうとしてた知り合いからタイミング良く譲り受けたようです」とは取材に応じてくれた健吾さん。
最終型でも30年以上が経過しているから、さすがに街で見かけなくなったけど、青木親子が乗るミニカトッポは、おそらく当時でも珍しかっただろう5速MT車で、しかもあちこちに手が入っていたりする。
ホイールは受注品となる13インチのRSワタナベエイトスポーク。タイヤは165/60サイズのアドバンネオバAD07が組み合わされる。ホイールハウスの中にチラッと見えるのは水色のダンパーケースでお馴染みのKYBニューSRスペシャル。
カムカバーの文字が誇らしげな660cc直3DOHCの3G83型は、量産市販車では世界初となる5バルブを採用したことで知られるエンジン。ミニカダンガンに搭載されたターボ仕様の印象が強いけど、取材車両のようにNA仕様も存在した。ボア径65.0φ、ストローク量66.0mmで、ほぼスクエアストロークの設計。スペックは52ps&5.7kgm。
今時の軽自動車に比べると、だいぶ凝ったデザインのダッシュボード。メーターナセルは独立式で、助手席の目の前にはアシストグリップも設けられる。ステアリングホイールはナルディクラシックに交換。9000rpmからレッドソーンが始まる1万1000rpmフルスケールのタコメーターが、5バブルヘッドを持つ高回転型ユニットを搭載している証だ。
シートは運転席にレカロSR-3、助手席にSR-2を装着。全幅が狭い旧規格の軽自動車だけに、外側ショルダーサポートとサイドウインドウのクリアランスはギリギリだ。また、運転席はローポジション化が図られ、ミニカトッポとは思えないような好戦的ドライビングポジションとされる。
「1人か2人で乗ることが多いので、リヤシートは常に畳んだままです」と健吾さん。高さは言うまでもなく奥行きも十分にあるから積載性は非常に高く、荷物をたくさん積めるという話にも納得だ。リヤゲートは右ヒンジの左右開閉式。
健吾さんが言う。「ひと月に2~3回、仕事で神奈川と宮城を往復してるのですが、そこでもミニカトッポが大活躍。片道300kmちょっとで5~6時間かかりますけど、のんびり走るにはちょうどいいですよ。荷物もたくさん載せられますし」。
ただ、県外ナンバーであまり見かけないクルマだからか、警察の職質を受けたことも一度や二度でなく、知り合いの目に留まれば、「どこそこにいたでしょ?」とすぐに面が割れるなど、良くも悪くも(!?)目立つことだけは間違いないようだ。
走りがどんなもんか、ちょっと試乗させてもらう。まずゼロ発進からしてやたらと軽快。車検証で確認したら、車重たったの710kgなんだから当然だ。軽快と言えば3気筒5バルブDOHC、3G83型エンジンの吹け上がりもそう。これを5速MTで操るのは単純に楽しい。
「思い入れのあるクルマなので手放すのは惜しい。動かなくなるまで乗り続けたいです」と話す健吾さん。これからも青木家で、ミニカトッポが活躍してくれることを願うばかりだ。