「廃車寸前の個体を3年かけて路上復帰!」ボルト一本までSA22Cを知り尽くした男の愛機に迫る

腐ったボディを修復し、万全のコンディションを構築!

40年以上前の当時モノアイテムも惜しげなく投入!

待ち合わせ場所のコンビニ駐車場に入ってきたSA22Cは、記憶の中のサイズよりはるかにコンパクトで、何よりも低かった。

取材車両は後期型のNAモデル、SE GTをベースにチューニングが施された1台だ。エンジンはオーナー自らが組んだ12Aペリ仕様からブリッジポート仕様を経て、今はサイドポートを拡大した13Bキャブ仕様がボンネットの下に収まる。

河尻さんいわく、「街乗りしやすくて、排ガス濃度をクリアできる程度」にポートが拡大された13B。そこには、数え切れないほどのロータリーエンジンを手掛けてきたノウハウが投入される。燃料供給はダウンドラフト式のウェーバー48φキャブレターが担当。

オーナーの河尻さんは広島マツダに入社し、ディーラーでロータリーエンジンのオーバーホールを行なう一方でモータースポーツにも関わり、SA22Cについてはダートラ車両の製作なども手掛けてきた。さらに、マツダが1970年に発表したRX500(10A型エンジンをリヤミッド搭載したコンセプトカー)のレストア作業にも深く携わり、現在はマツダオートザム福山南の相談役という肩書を持つ。

そんな河尻さんが穏やかな口調で話す。「若い頃から仕事でロータリーを触り続けてきたので“もういいや”と思い、知人からTE27を譲り受けて20年くらい乗ってました。2T-G改2.0L仕様で、カムもサンマルヨン(IN304度)にニパッパ(EX288度)を組んでね。でも、還暦を過ぎて、ふと思ったんですよ。“死ぬ前にもう一度ロータリーに乗らにゃあかんな”と。それで8年前、62歳の時にこのSA22Cを手に入れたんです」。

ところが、手元に来たSA22Cは酷い状態だった。ボディは錆だらけ。リヤフェンダーにはガムテープを貼った上にパテが盛られ、エンジンも排ガス対策系のパーツが全て取り外されている有り様だった。それでも幸いなのは、河尻さんにとってSA22Cが、「ビス1本まで分かる」というほど知り尽くしたクルマだったこと。ボディの修復だけは知り合いの鈑金業者に依頼したけど、それ以外の作業は河尻さん自らが手掛け、3年もの時間をかけて路上復帰させたのだ。

ステアリングホイールはナルディクラシックに交換。シフトノブはデミオ用を流用する。センターコンソールにはパネルを加工した上でデフィDINゲージ(水温/油温/油圧計)をセット。また、メインメーターは8000rpmフルスケールのタコメーター(下側に電圧計)を中心として、右側にスピードメーター、左側に油圧/水温/燃料計が並ぶ。

運転席に装着されるのはレカロSR3で助手席は純正シート。サンルーフは手動開閉式となっていてダイヤルを回すことでチルトアップできる他、ルーフパネルを取り外すことでオープン状態も可能だ。

後方から見たチルトアップ状態。ボディ状態が酷かったため、サンルーフパネルはトヨタ車のボンネットから切り出し、職人が叩き出しで作ったという。「正直、ノーマルよりも出来がいいですね」と河尻さん。

リヤゲートは後にFC3Sにも受け継がれるガラスハッチを採用。ラゲッジスペースは、クルマの性格とボディサイズを考えれば十分に実用的と言える。一体型の後席背もたれを前倒しすればスペースも拡大できる。

マフラーは40年前のレーシングビート製。「当時、社長と懇意にしてたナイトスポーツで買ってたんですよ」と河尻さん。エンジン換装にあたってフロントパイプは同じくレーシングビート製13B用を組み合わせる。

NAモデルは110という特殊PCDを採用していることから、ホイールの選択肢が極めて限定されてしまう。そこで、後期型ターボ用の足回りを総移植してPCD114.3化なども施されている。ちなみに、エンジンは13Bに載せ換えられているけど、ミッションはSA22C純正5速MTをセット。LSDは純正スポーツキットが組み込まれる。

「ひょんなキッカケで、またロータリーに乗ることになりましたけどね」と河尻さん。それはきっと必然だったに違いない。

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