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MR-Sからエンジンと2ペダル式MTを移植!
トラブルフリーでAW11を楽しむためのチューニング
国産車初の量産ミッドシップマシンとして1984年に登場した初代MR2(AW11型)。リヤアクスル前方に横置き搭載されたエンジンは、前期型ではNAの4A-GEのみだったが、後期型ではスーパーチャージャーを装備した4A-GZEも追加された。
エンジンスワップの名門“C&Yスポーツ”が手掛けた1台は、後期型の4速AT仕様がベース。「年式が古いから、いつトラブルを起こすか分からない。そんな不安を抱えることなくAW11を楽しみたい」というオーナーのリクエストに応えて、パワートレイン総移植という大がかりなチューニングが施されることになった。
ドナーとして選ばれたのは“AW11の孫”にあたるMR-S(ZZW30)。そこから1ZZ-FEとSMT(2ペダル式6速シーケンシャルMT)をスワップすることで正常進化を果たしているのだ。
元々、載っていた4A-GZEに対して吸排気系が前後逆転する1ZZ-FE。スペース的に大きな問題はないが、手前に見えるEXマニの遮熱板を一部カットして、バルクヘッドに耐熱マットを貼るくらいの手直しは必要。また、1ZZでは燃料のリターンパイプが存在しないため、デリバリーパイプを製作した上で新規に引き直されている。
トランクルームの隅にエアクリーナーとバッテリーを設置。エアクリーナーは純正もこの位置にあるため、機能的なデメリットは一切なしだ。ちなみに、エアフロはトヨタ・ウィッシュ用をサクションパイプごと移植している。
排気系は、第一触媒が一体になったEXマニと第二触媒がZZW30用で、HKSのAW11用マフラーをボルトオンで装着できるように加工済みだ。
「ボディ側の加工は必要ないし、マウント類も1ヵ所作ればOK。エンジンもミッションもほとんどボルトオン感覚で載せることができたんですが、その先で大きな壁が2つ待ち受けていました…。それは、SMTの制御と大きすぎるシフトレバーユニットです」と、C&Yスポーツは製作時を振り返る。
SMTの制御とは、すなわちクラッチの断続を自動制御するために必要な配線の製作だ。C&Yスポーツは、AW11とZZW30の配線図を並べて「電気的にちゃんと作動するかどうか?」を見極めながら慎重に作業を進めていったそうだ。
最終的にはAW11のメインハーネスを軸に、必要なところだけZZW30のハーネスを追加することでこの問題をクリアした。
シフトレバーユニットが想像以上に大きかったことにも頭を悩ませた。SMTは、シフトレバーの下にリンケージを動かすための巨大な油圧ユニットが設けられており、そのまま載せようとすると操作に支障をきたすほどシフトレバーの位置が高くなってしまうのだ。
「ユニット自体を沈めようと思っても、AW11はセンタートンネル内に燃料タンクが配置されているので限界があって。結局、燃料タンクの上側を加工してクリアランスを稼いで、違和感なく操作できる位置までシフトレバーを下げました」。
室内を覗くと、シフト周辺はノーマルと思えるくらい綺麗に仕上がってるが、その裏には名ビルダーの想像力と技が詰め込まれている、というわけだ。
なお、SMT作動用の油圧ポンプは、エンジンルームの左側、ちょうど助手席の後ろあたりにセット。ここで発生した油圧がシフトレバー下のユニットに送られ、リンケージを動かしている。また、クラッチはシフト操作を感知するセンサーの信号によって断続するようになっている。
メーター類もZZW30用をごっそり移植。C&Yスポーツいわく「タコメーターの中にあるシフトインジケーターだけを使いたかったんだけど、ユニットと一体になっているから、それだけを外すことができなくて。シーケンシャルミッションでシフトポジションが分からないと大変だから、メーターごと移植したんです」とのこと。
ZZW30用メーターの中で唯一動かせなかったのが燃料計。そこで、ステアリングコラム左側のダッシュパネル部にAW11用を移設して対処している。
こうして誕生したトラブルフリーのAW11。見た目も走りもコンセプトも、ネオ旧車チューンドとしては完成形のひとつと言えるだろう。
●取材協力:C&Yスポーツ 愛知県愛知郡東郷町大字春木太子32 TEL:0561-38-8325
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