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攻めの姿勢を崩さない徹底したロワードで目立つ!
走りもビジュアルも妥協しないトラックスタンスなセブン!
昨今の中古車価格高騰と純正部品の製廃などにより、サーキット走行を楽しむ層が減少の一途をたどるネオヒストリック世代のスポーツカー達。
こうした状況を受け、多くのユーザーが向かった先が「置き系イベント」。簡単に言えば、手塩にかけた自慢のカスタムカーを披露し、同じ趣味趣向を持つ仲間と交流を楽しむことを目的としており、何よりクルマを壊す心配がないので、無駄な費用がかからないことも人気のポイントだ。こうした理由から、スタンスやUSDMといったドレスアップカーイベントの人気が高まり、その数も全国的に拡大している。
ドレスアップカーイベントの一般化が進むにつれ、カスタムのスタイルはさらに細分化。そのひとつが「トラックスタンス」。しゃかりきにタイムを競うのではなく、自分の好きなスタイルで、サーキット走行も満足に楽しみたいと考える層が、元サーキット派を中心に増えつつある。
今回取り上げるFD3Sも、走れるシャコタンを目指してカスタマイズされた1台だ。写真をご覧いただければ分かるように、極限までロワードされている。しかも、この車高で足回りはエアサスでなく「ナマ足」。オーナーは自動車整備関係の仕事に従事しており、DIYであれこれと作業を繰り返した結果、異様なまでの低車高とサーキット走行もこなせる足回りの最適値を導き出したという。
「買った時はここまで下げるつもりはなかったのですが、SNSやネットでロワードされたクルマを見るたびにカッコ良いな、真似したいなと思い、あれこれやっているうちに気が付いたらここまで低くなっちゃいました」とのこと。
足回りは、フロントのロアアームを偏心ピロに交換した上で、ピロアッパーを目いっぱい寝かしたのみ。リヤは調整式のロアアーム、ショート化されたアッパーアームを装着。フロントフェンダーは藤田エンジニアリングの加工で、リヤは純正フェンダーを若干叩いて20~25mm程度広げているが、タイヤハウス内の加工は行われていない。サスペンションはトラストの車高調にスウィフトのスプリングを組み合わせ、可能な限りローダウンしている。
ホイールはワークの「VS-KF」で、前後10.5J×18インチとかなり攻めたサイズを採用。オフセットはフロントがマイナス2(20mmスペーサーを装着)、リヤがマイナス12と、FRらしくリヤのリムを深くするスタイルを演出している点もポイントだ。
フロントバンパーは往年のマツダスピードで、オリジナルのイカリングを添えたコンビネーションランプが顔の印象を変えている。リヤは純正バンパーにRE雨宮のディフューザープロをセット。ウイングは、オリジナルのマウントにマツダスピード製のRX-8ウイングを流用しているが、違和感なくフィットしている。
ボンネットは純正品を加工して自作したダクト付き仕様。サンルーフも純正品を手に入れて移植するなど、自動車整備士のスキルを存分に発揮。ボディカラーは一見すると純正のイノセントブルーマイカだが、微妙に調合を変更している。まさに「分かる人にしか分からない」拘りであり、カスタムの神髄を体現している。
「車高が低すぎて、フロントバンパーとリアディフューザーが擦るのは日常茶飯事。これまで10回以上は割り、20回以上は塗り直しています。本音を言えば交換したいのですが、純正品はすでに廃盤。程度のいい中古品を探すという手もありますが、高額で手が出せないため、消耗品だと思って直しています」とオーナーは苦笑いで語る。
走りも重視しているので、エンジンチューンも手抜きなし。13B-REW本体をオーバーホールした上で、ウエストゲート式のTD06-20RXタービンをセット。その他、Vマウント式のインタークーラー/ラジエーターなど、冷却系もトラストで統一。サーキットを連続周回してもへこたれない環境を整えているのだ。
室内もボディカラーに合わせてブルー基調の仕上げ。リヤシート位置には5点式ロールバーが組み込まれ、シートは運転席がブリットのジータ3で、助手席がストラディア2をセレクト。ラメ入りのブルーでペイントされたパネルや気泡&グラデーションのシフトノブなど、ドレスアップ要素を上手に取り入れている。
「この車高ですから、出先で困る場面に遭遇する機会は多いので、フロントバンパーはすぐに取り外せるように細工済みです。エアサスにすれば、この問題も解決するのですが、走っている時の姿もカッコ良いほうがいいと考え、ナマ足に拘っています。カスタムはほぼやり切ったで、次は傷みの目立つ外装のリフレッシュを考えています」と語る。
自分で何でも対応できるからこそ可能となった攻めのロワード。イベントでひと際目立つ理由はそこにある。
●取材協力:三好自動車 岡山県倉敷市下庄947-6 TEL:086-462-0708