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突き詰めた運動性能。
鋭いエンジンレスポンスとクイックなハンドリングが病み付き!
初代ASの後を受け、1987年9月に登場したのが2代目EF型、通称“サイバースポーツ”CR-Xだ。当初Si(EF7)はASと同じZC型エンジンだったが、1987年9月のマイナーチェンジでVTEC採用のB16A型を搭載。車両型式はEF8、グレードはSiRを名乗った。
今回取材したのは、“スペックD”代表を務める土居清明さんの愛車。JAF四国ジムカーナ選手権に参戦し、2023~2024年と2年連続でR2クラスを制したチャンピオンマシンだ。
「EF8はコレで7台目…いや8台目か? になるんやけど、軽いボディと短いホイールベース、パワーのあるVTECエンジンでジムカーナではまだまだ現役よ。俺がその速さを証明しとるやろ!!」と清明さん。
勝ち星を獲りに行くためのマシンゆえ、R2クラスのレギュレーション範囲内でチューニングを実施。エンジンはEK9(B16B)純正ピストンを組んだハイコンプ仕様とされ、カムシャフトはEG6純正を流用する。
エキゾーストマフラーは、元HRCのスタッフに作ってもらったワンオフ品。メインパイプ径は50φから徐々に拡大するメガホン構造を採用する。リヤオーバーハング部の重量増を嫌った小型メインサイレンサーが本気の証だ。
見どころは駆動系で、まずDAインテグラ後期型用ミッションケースを使い、中身にATS製クロスギヤをセット。5速のみDC2 96スペック純正とし、高速巡航時のエンジン回転上昇を抑える。ファイナルは純正4.2から大幅なロ―ギヤード化を実現するATS製4.9。クラッチはATSカーボンシングル、LSDはクスコタイプRSだ。
また、足回りもジムカーナに照準を合わせて大幅に手が入る。中でも注目は純正アームのブッシュ打ち替えによるフルピロ化。無駄な遊びを徹底的に排除し、ステアリング操作に対して素早く忠実な反応を示すようにセットアップされる。
車高調はオーリンズ製をセット。スプリングはフロントスイフト製22kg/mm、リヤKYB製8kg/mmとなる。また、ブレーキもASの前ディスク式、後ドラム式からEF系では4輪ディスク式に進化。
ASに比べ、より立体的なデザインとなったダッシュボード。ステアリングホイールはナルディクラシック360φ、シフトノブは樹脂製球状タイプに交換され、確実な操作をアシストする。
運転席はサイドターン時の操作性を考え、左側ショルダーサポートを小型化した左右非対称デザインのブリッドアーティスIIIをセレクト。助手席にはジータIIIローマックスが装着される。
エアロは前後バンパースポイラー、サイドステップ、リヤスポイラーで構成される無限フルキットを装着。「EF8と言うより、無限のエアロを付けたEF8が好きなんよ」と清明さん。
限界までポジションを落としたフルバケットシートに収まって走り出す。右足の動きに即応するエンジンレスポンスと、1-4速を近づけたギヤ比&4.9ファイナルのコンビネーションは、どこからアクセルを踏み込んでも強烈に加速する。
ハンドリングはクイックの一言。しかも、ステアリングを切った分だけ、どこまでもノーズがグイグイとインに向かっていく。これは痛快すぎる!! 「完全にコントロール下に置けとるよ」という清明さんの言葉と、限界域が想像の及ばない高いところにあることだけは理解できた。
信号待ちで明生さんのAS前期型Siが隣に並ぶ。速さを知るモノサシにはちょうどいい相手だ。信号が青に変わってスタート。出だしはほぼ一緒。1速は瞬間で吹け切るB16A。8000rpm目安でシフトアップしていくとギヤが一つ上がる度、サイドミラーの中のASが徐々に小さくなる。さすがジムカーナ仕様。とてもテンロクNAとは思えない加速を見せてくれた。
だが、こうも思った。「クロスミッションだから引き離せたけど、もしノーマルだったらASも良い勝負をするんじゃないか?」と。助手席の清明さんが口を開く。「あと1000rpm、9000rpmまで使えるんやけどなぁ」。え~、それ先に聞いておきたかったです…。
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)