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D1GPを退いた今もオモチャ感覚で進化中
軽量化と低重心化を求めたトラックボディ!
ドライカーボン製ボディパーツを纏った18インチ履きのハコスカでドリフトを決めたり、S15シルビアにハコスカのボディをドッキングした“ハコビア”を生み出したり…と、常識に捉われないカスタム&チューンを展開する“H・D・O”の板倉さん。今回クローズアップするのは、そんな実力派ビルダーが20年以上前に製作したAE86トラック、通称“8トラ”だ。
ファイヤーパターンをあしらったトラックスタイルだけを見れば、カスタムカーとして製作されたように思える8トラだが、このボディワークはD1GP 参戦を目指して性能向上のために手掛けたもの。リヤ周りをカットしたチョップドトラックにすれば、軽量化と低重心化の双方が果たせる…との考えが根本にあり、そこにトラックとしてのカッコ良さも詰め込んだわけだ。
「実はAE86トラックの製作はこれが2台目。というのも、21歳の時に製作したマシンは、ドリフト仲間だった326パワーの春口さんに追突されて廃車(笑) ただ、AE86でD1GPを目指そうと考えた時に、速さを引き出すのにトラック化が効くことを知っていたので、2台目はチョップドルーフによる低重心化も加えました。2003年にこの8トラでD1GP参戦を果たしましたが、チョップド効果を知ったライバル勢が真似をするようになってレギュレーションで禁止されちゃいましたね」とは、板倉さん。
こうして強制的にD1GPから退くこととなってしまった8トラだが、その後はオモチャ感覚でブリスター化など各部をモディファイしつつ、ドリフトイベントで活躍。今回の取材直前にも「せっかく誌面を飾るならトラックらしさをもっと高めたい」との閃きで、突貫作業でBピラー位置を前方へ寄せてくるなど、20年以上が経過した今も自由気ままな進化を重ねている。
2ドアレビンの上部をカットしてトラック化したボディの車重は800kg台前半。今でこそカーボンルーフなどで当然のようになっているボディ上部の軽量化だが、板倉さんは20年以上前に実践していた。
120mmチョップされたトラックボディは、今回の取材に向けてBピラーを225mm前方に移動した上でロールバーをベッド部分に新設。サニトラロングのようなスタイリングを目指して、キャビンとベッドの比率を整えた。
Bピラーの位置変更は閃きからの突貫作業だったこともあり、ドア本体は加工せずにルーフとウインドウの加工でアプローチ。降車時、ドアロックに使用しているボンネットピンに手が届きにくいことは完成してから判明したそう。
心臓部はD1GPを戦った当時のまま、4.5A-Gの4連スロットル仕様となっている。バルクヘッド周りの肉抜きやビレットグリル内のライトを見ても分かるように、驚異的な軽量化が実施されている。
シート後部や上部のクリアランスを詰めていく形でトラック化したため、インテリアは非常にコンパクト。ボディ剛性を確保するためにワンオフロールケージの他、スポット溶接増しも徹底する。
オーバーフェンダー、そしてブリスター化と、求める走りやスタイルにあわせて常に進化を重ねてきた8トラ。D1GP参戦時に装着していたトノカバーは、月日が流れる中で行方不明となってしまったとのこと。
オリジナルに拘った最新チューンを施したり…といった王道からはかけ離れているが、枠に捉われないアプローチも立派なハチロク愛のひとつ。板倉流の味付けで8トラがどのような姿と走りを手に入れていくのか、さらなる進化ぶりからも目が離せない。
●取材協力:H.D.O 広島県福山市引野町273-1 TEL:084-945-0856
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