目次
思い出の実家を残すべく大人の隠れ家として大胆改築
昭和世代のマシンに平成・令和の技術を融合
今回紹介するのは、S110シルビアを筆頭に日産車愛を貫くマニア、上原さんのガレージ。
「元々、この土地は私の実家なんですが、両親も他界し誰も住む人がいなくなってしまいました。更地にして手放す案もあったんですが、私の子供たちもココが無くなくなると寂しいというので残す方向で考えた結果、現在のガレージへの改装を思いつきました」とは上原さん。
立地は上原さんの自宅から徒歩5分程度という好条件。元々は和風平家建築だった建物は、基礎や柱といった構造を活かしつつ、土間を広げてガレージスペース3台分とワンルームの居室を確保。庭だった部分にはコンクリートを敷いて出入りもしやすく、追加駐車スペースも確保した。
保管場所に余裕ができると、つい気になったスポーツモデルを買ってしまうのはクルマ好きの性。こうして、現在は日常の足として使用するステージアを自宅のガレージに、2世代のシルビアとRZ34がこのガレージに保管されている。
「自分でチューニングなどの作業はしないのですが、離れて暮らしている長男(一級整備士)がO/Hするミッションを持ち込んだり、溶接機を導入したりと、作業場としても活用することもあるんです。だから、日に日に機材も増えてきちゃっていますね」と続ける。
ちなみに、クルマ好きとして育った長男は、現在筑波サーキットやSUGOなどで日産マーチのレコードを持つまでに成長している。ガレージへと姿を変えた実家は、クルマ好きな親子のコミュニケーションの場として、新たな思い出を紡いでいる。
ここからは上原さんの長年の相棒であるS110型シルビアを見ていく。高校生の頃からS110に乗ると決め、ガゼールの2000EX-IIを欲していたというほど、その熱量は半端なかったという上原さん。「当時はチューバを吹いていたので、楽器が積めるハッチバック一択。そこで免許を取得して最初に購入したのが、S110シルビアのターボ ZSE-Xでした」。
シルビアを購入すると、ホイール交換など徐々にチューンを開始、その流れでシルビア&ガゼールのオーナーズクラブ「スリップストリーム」に入会し深みにハマり、チューニングをスタート。幕張ゼロヨンなどストリートスポットにも出向くようになったという。
その後、S13シルビアに乗り換え、何台かのファミリーカーを経て、再びS110に戻ってきたのが2001年。当時、久しぶりにハッチバックのS110を見かけたことで再び火がついてしまったのだ。
「ネットで探してみると名古屋でRSが1台売りに出ていたんです。冷やかしのつもりが、一緒に行った息子に背中を押されてつい買ってしまいました。そこから2002年には、現在所有しているハッチバックも購入していましたよ(笑)」。
念願のハッチバックへの回帰だったが、経年劣化からすぐにヘッドガスケットが抜けてしまうトラブルに見舞われた。どうせ手を入れるならと考え、踏み切ったのがS13のSR20DETのスワップ。昭和の車体に平成の息吹を吹き込んだというわけだ。
ちなみに、2003年当時に行なったスワップ作業は、なんと日産ディーラーが作業を実施。当時はZ33がデビューするタイミングで、ディーラーもスポーツカー好きのスタッフが多く、若いメカニックの実習も兼ねて請け負ってもらえたのだとか。
エンジンスワップ後も、コツコツとステップアップを実施。現在はHKS GT-SSタービンと東名パワードのポンカムを合わせ、フルコンのLINK制御で320psを発生させる。コイルはアウディ純正を流用するなど、小物のアップデートも欠かさない。
テールガーニッシュは輸出仕様の200SX純正をセット。ヒロレーシングのフロントスポイラー改やサイドステップなど、外装も当時流のコーディネイトだ。
「スローなペースですが進化を重ねている真の愛車です!」とS110型シルビアへの愛を語る上原さん。その情熱から、これまでも複数のメディアの取材を受けてきた。「永久動態保存」をコンセプトに掲げる彼と愛車の付き合いは、これからも続いていく。