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排気量が倍違う走りをフル乗車で比較する!
どちらも3列シート7人乗り4WDの5速MT車
前代未聞の乗り比べである。そもそもこの2台を比べること自体がおかしいのだが、もしかしたら日本に一人くらい「どっちにしようかな」と悩んでいるマニアな方がいるかもしれないし…。
前置きはそれくらいにして試乗に出る。まずはドミンゴGV-Rからだ。ルームミラー越しに見る2列目以降は結構なスシ詰め状態…なのだが、みんなの表情は楽しそう。ワイワイやるなら、車内の広さはこれくらいで良いのかもしれない。
1.2L 3気筒のEF12型エンジンは良い意味で予想を裏切り、フル荷重がかかったボディを力強く加速させる。カタログスペックは61ps/9.8kgmと頼りないが、6.166という他に見たことがないほど超ローギヤードに振られたファイナル比の効果があって、ゼロ発進からグイグイ前に出ていってくれる。
しかも、面白いのは一般的な5速MTに対して、2速以降のギヤ比が徐々にハイギヤードになっていること。3.166の1速から2速1.809、3速1.161と飛んで、すでに4速が0.810でオーバードライブになる。5速に至っては0.658と、国産スポーツカーに載る6速MTのトップギヤをも上回るウルトラハイギヤードなのだ。
感覚的には1速でタイヤが2~3転したらすぐ2速にチェンジ。そこからは下で粘るエンジンが本領発揮。4速40km/h、5速60km/hの巡航からでもアクセルペダルひと踏みで気持ち良く加速するためストレスを感じない。正直、ドミンゴがこんなに走るとは思わなかった。
操作系は基本的に軽く、ボディが小さいので取り回しが楽! ホイールベース<全高という実に特異なディメンションによって、たしかにコーナーでは重心の高さを痛感するが、リヤをセミトレ式とした4輪独立懸架のおかげで路面追従性は抜群。さらに、それが快適な乗り心地ももたらしてくれているのは言うまでもない。
運転&操作系ゾーン、オーディオなどの多機能ゾーン、収納スペースゾーンと3つに区分されたインパネ周り。パワーステアリングは車速感応型の電動タイプで、フィーリングは良好だった。メーターパネルは中央にスピードメーター、その左に水温/燃料計のコンビメーターが配置されたシンプルなものだ。
GV-RとGVは、なんとツインエアコンを標準搭載! 狭い車内には十分すぎる装備だ。3列目シートの頭上に風量切り替えボタンと吹き出し口が備わり、それに伴ってリヤスピーカーもツインエアコン装着車専用となる。
GVサンサンルーフやアラジンのように回転対座機能は持たない前席。座面も背もたれもクッションが薄めだが、座り心地は悪くない。
左側にアームレストが付く2人掛けの2列目は右側にオフセットしていて、3列目へのアクセスを容易にしている。
3人掛けの3列目は大人が並んで座るには少し窮屈。2列目背もたれを倒してのフルフラットや、折りたたんでのラゲッジスペース拡大なども可能だ。
リヤゲートを開けた右側、こんな部分にラジエターキャップを発見(笑)! 反対側にはリヤウォッシャータンクの注入口が設けられている。
続いて7人大移動でデリカスターワゴンエクシードクリスタルライトルーフに乗り換え。ドミンゴで走ったルートを再び辿る。室内幅はドミンゴより30cm広い1530mm。ワンボックスやミニバンは車内が広いほど良いのだろうが、5ナンバーボディでこの広さなら十分だ。
それと、素晴らしいのがクリスタルライトルーフ。前席は直接的な影響を受けるわけではないが、サンシェードを開けた時にパッと車内が明るく開放的になるのは気分が良い。
P型デリカスターワゴンのガソリン車に乗るのは今回が初。ディーゼルとは違ってアイドリングは静かだし、振動も気にならない。
4G64型エンジンはストローク量100mmという超ロングストローク型で、2.4Lの排気量と合わせてトルク特性は低中速に大きく振られている。ゼロ発進こそ3.967と低めに設定された1速ギヤ比のアシストがあるが(ファイナル比は4.875)、2速からはトルクを活かした走りを見せてくれる。
最大トルク18.7kgmの発生回転数は3500rpm。そこを目安にシフトアップしていけば、7人乗車でも動力性能に不満はない。
前トーションバー、後リーフスプリングを使った足回りは良く言えば張りのある、悪く言えばヒョコヒョコした動きを見せがち。ただし、フル乗車でも腰砕け感が皆無だから、ステアリングを握っている人の安心感は高い。
ステアリングホイールはMOMO製ウッド&レザーコンビに交換。ダッシュボード上のメーターが傾斜計/高度計/内外気温計の3連であることから後期型(前期型は傾斜計/高度計の2連)という事が分かる。メーターパネルにはスピードメーターとタコメーターが並び、右側に水温計、左側に燃料計がセットされる。
エクシードはシート表皮にエンシェールニットを採用。運転席には腰の疲労を低減するランバーサポートが装備される。
2列目は両側アームレスト付きのキャプテンシートでロングスライド&リクライニングが可能。
さらに、2列目は360度パーソナル回転機構付きで、写真のような角度で固定することもできる。回転対座を含む多彩なシートアレンジが、この時代のワンボックス車らしい。
3列目はベンチタイプの3人がけで、スライドと2:1分割でのリクライニング機能を持つ。
2台の7人乗りワンボックスを試乗した率直な感想は、ほぼ予想通りだったデリカスターワゴンに対して、予想を遥かに超えていたドミンゴ…というもの。優劣は付けられないが、好みで言えば自分はドミンゴに軍配だ。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)