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試作から実走テストまで自らが担当!
開発スピードと改良の速さが魅力!
日産NVCSを流用した可変バルタイキットや、R35GT-R純正コイルの装着を可能にするアダプターなど、RB26DETT=第二世代GT-Rを進化させる独創的なパーツを数多くリリースする岡山県の“ジュラテック”。
代表の久保さんは、元々ブルーフォースレーシングという名前でサンデーレース参戦などを楽しんでいた生粋のプライベーターだ。2000年頃からは自身が乗るGT-Rを速くするために、オリジナルパーツの製作をスタート。そこには、実家がプラスチック加工業を営んでいたことが大きく関係している。

「昼間は仕事としてプラスチック加工を行ない、夜8時に仕事を終えたら工作機械の刃を金属用に交換。そこから夜通し、自分の趣味でGT-Rのパーツを作り始めるわけです。20代の頃は金銭的な余裕がなかったので、チューニングにお金を掛けられない。でも、クルマを速くしたい。それが自分でやるようになった感じですね」。

仕事で毎日触れていたため、マシニングセンタやNC旋盤、NCフライス盤の扱いはお手のもの。「こういうパーツがあればGT-Rはもっと速くなるのでは?」と、久保さんが頭に思い描いたものが次々と形になっていった。それを自分のGT-Rに装着してはストリートで、サーキットで、ドラッグレースでテスト。望んでいた結果が出ればオッケー。そうでなかったり不具合があったりすれば、すぐに原因究明を行ない対策品の製作に取り掛かった。
確かにスタートは「自分のGT-Rのため」だったが、サーキットアタックやドラッグレースで好タイムを連発するようになると状況が一変。お金を払うから同じパーツが欲しいという第二世代GT-Rオーナーが次々とやってくるようになってしまったのだ。

そこで2015年、BFR(ブルーフォースレーシング)を屋号としたパーツ販売会社を設立。2017年にジュラテックへと社名を変更したが、この時はまだプラスチック加工が本業だった。その後、オリジナルパーツの製作に専念するため、2019年にプラスチック会社を退職。ジュラテックとして仕事をしていく覚悟を決めた翌年、今の場所に工場を構えた。
趣味として始めたことが、そのまま仕事に。だからこそ、ジュラテックには他にはない大きな強みがある。それは、本来であれば分業される“企画→設計→開発→製作→テスト”という一連の過程が久保さん一人で完結していることだ。故に、構想からパーツとして形になるまでがスピーディだし、すでに製品化されているパーツでも絶えず改良が加えられ、常にアップデートが図られる。

RB26DETTに日産NVCSを流用し、無加工でIN側カムの可変バルタイ化を実現するジュラテックの代表作「可変バルタイ260度ポンカムVer.2(15万9500円)」。キットには作用角260度、リフト量9.15mmの東名ポンカムが含まれ、NVCSの作動に必要な油圧を取り出すパーツの製作や、カムシャフトへのオイル流路加工などはジュラテックで行なわれる。
その効果は絶大で、特に3500~4000rpmの中速域ではオーバーラップ増大によって100ps、20kgm以上のパワー&トルクアップを達成する。なお、別途RB25純正可変スプロケットユニットや純正電磁ソレノイドバルブ、フィッティングホース類、制御基板などが必要となる。また、ハードチューン向けに専用カム(作用角260度または270度、リフト量10.8mm)を組み合わせたキットも用意。価格はいずれも18万1500円の設定だ。
NVCSの制御に関しては、トラストeマネージはもちろんフルコン制御の車両も新規マップを作成すれば対応可能。ジュラテックではオリジナルNVCSコントローラー(価格2万3100円)も用意している。

RB26DETTのオイルブロックにはヒートエクスチェンジャーが設けられているが、ホースの劣化で水漏れを起こしたり、ヒートエクスチェンジャー本体に鉄粉が回ると洗浄しきれないなど煩わしさも多い。そこで、ヒートエクスチェンジャーを持たないN1用への交換が定番だった。が、油温/油圧センサーが装着できない設計で、新品価格も8000円から20万円まで高騰。その状況を見て開発されたのがRB用オイルブロックVer.2(3万7400円)だ。

また、サンドイッチブロックを使わずにオイルクーラーのフィッティングを接続できるRB用ホース直付けオイルブロックも設定。価格は3万3000円となる。

RB26DETTの泣き所の一つが点火系だ。熱に弱いパワートランジスタやハーネスの劣化などにより、本来の性能を発揮できていないケースが非常に多い。その対策として開発されたのが35コイル流用アダプターレーシングVer.2(3万5200円)。
文字通り、R35GT-R用コイルの装着を可能にするパーツなのだが、チューンドエンジンには必須、ノーマルエンジンでも確実に効果を体感できるほど効果は絶大。R35GT-R用OEM製コイルまで含んだフルセット品も5万4000円で用意されている。

コイル先端に装着する、リークを防ぐためのシリコンキャップも付属する。細身の点火プラグを使うR35GT-R純正(右)に対して、RB26DETTへの流用では点火プラグのサイズに合わせて専用品(左)が用意される。

ブレンボジャパンが取り扱うモノブロック6ポット/4ポットキャリパーとRZ34ニスモ/R35純正380mmローターを、第二世代GT-Rにボルトオン装着するためのジュラルミン製ブラケットも開発。その形状や厚み、リブ&アール補強などで十分な強度を確保するのはもちろん、付属のボルトもクロモリ製強化品となる。価格はフロント用6万8200円、リヤ用7万7000円だ。

キャリパーはブレンボ6ポットタイプR2で片側9万円。RZ34ニスモ純正380mmローターは1枚1万2000円。これにブラケットと専用設計のフレア式ステンメッシュホース(価格2万円)を組み合わせれば30万円弱でフロントブレーキの強化が図れる。コストパフォーマンスの高さは抜群だ。

裾野が広いブレンボ6ポットキャリパータイプR2は、380mmローターと組み合わせても両端のクリアランスにまだ余裕がある。つまり、さらなる大径ローターにも対応できるということだ。久保さんいわく、「405mmまでは使えると思います」とのこと。

久保さん本人にしてみれば、やっていることはプライベーター時代と変わらないのかもしれない。しかし、ジュラテックほど迅速かつ小回りが利くパーツメーカーは他に見当たらないのも事実だったりする。
さらに、そこに加わるのが、久保さん自身も好きで乗っている第二世代GT-Rオーナーとしての“視点”。だから、売れるモノである以前に、まずは『欲しいモノ』という点にパーツ開発の基準が置かれている。それは昔から変わらない久保さんの思いであり、ジュラテックとしてのポリシーでもある。となれば、生み出される数々のパーツが多くのユーザーの心を掴むことにも納得だ。もちろん、第二世代GT-Rのチューニングを得意とするショップからの信頼も厚く、今やジュラテック製パーツは幅広く取り扱われている。
「常に考えているのは、“どうやってクルマを速くするか”ということ。しかも、思い付いたらすぐ形にできる。ECUセッティングもやりますし、何より開発コストが掛からない。こんな風に自分で作って自分で走らせてる機械加工屋さん、他にいませんよね」と久保さん。もはや仕事ではなく、完全なライフワーク。ジュラテックには、今後も何かやってくれそうな雰囲気が満ち溢れている。
●取材協力:ジュラテック 岡山県岡山市北区津高1771-1
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