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トムスに許可を取った上で製作を進めた半公認仕様!
元レーサー志望ならではの拘りが見え隠れするメイキング
往年のスーパーGTファンにはたまらないレプリカ仕様の登場だ。オーナーが目指したのは、2009年にシリーズチャンピオンを獲得した『PETRONAS TOM’S SC430』。エクステリアはほぼワンオフのエアロパーツで構築されているが、この状態で公認車検を取得済みというから恐れ入る。
オーナーはかつてフォーミュラで成績を残してきたという人物。様々な理由で引退を余儀なくされてしまったが、レースへの想いが消えることはなかった。そして「公道でレースカーに乗りたい」という欲望が爆発し、レプリカ製作に踏み切ったそうな。「製作前、トムスに連絡して許可を得ました」とはオーナー。つまりは半公認仕様というわけだ。
とはいえ、レプリカを製作するためには本物の寸法などを知る必要がある。そこでオーナーはツインリンクもてぎに展示されていたPETRONAS TOM’S SC430を2時間かけて調べ上げ、スーパーGTマシンと全く同じタイヤ外径(265/45-18)にブリスターフェンダーの形状を落とし込んでいくところからメイキングをスタートした。
レプリカ製作を進める上で、オーナーが気を付けたのは耐久性だ。長期間ストリートを走り回っても問題ないようにパテの使用を最小限に抑え、全ての造形ベースを鉄板で行う念の入れようだ。そうして多大な労力と時間を費やして完成させたワイドボディ仕様は、圧巻の一言。市販モデルとは桁違いのボリューム感で、まさにスーパーGTマシンの装いである。
リヤビューは予算の都合で後回しとなっている部分が多いが、大型のGTウイングは本物さながらのスワンネック型を装備。ウイング幅は1800mm、ボルテックスによるワンオフスペシャルだ。
エキゾーストマフラーはリヤサスメンバー直後の腹下で解放する。これは大型ディフューザーのインストールを想定したメイキングだ。
ドアミラーはクラフトスクエアのレーシングタイプをセット。これは、トムスに連絡を取った際に譲ってもらった本物のレーシングパーツとのことだ。
ステッカーの配置などは、SC430最終年(2013年)の富士スピードウェイ仕様をトレース。理由を尋ねると「フロントフェンダー上部の曲面デザインが最高速重視の富士仕様で、他とは形状が少し異なるから」とのこと。言われなければ絶対に気づかないマニアックポイントだ。
そしてホイールは泣く子も黙るセンターロック仕様!さすがに本物というわけにはかないが、インパルがかつて販売していた第二世代GT-R用の“M20”をオークションで落札。このホイールは、ハブをセンターロック化するアダプターもセットで販売されていた激レアモデルだ。
まだ製作途中とは言うものの、コクピットもスパルタンな作り込みとなる。ステアリングはスーパーフォーミュラに使われていたという本物を採用。背面にボスを後付け加工することで、一般的な社外ハンドル同様の取り付けを実現している。なお、コラム部のメーターやスイッチ類は配線が難しいため機能させていないそうだが、存在感は圧倒的だ。
PETRONAS TOM’S SC430レプリカに拘り続けるオーナーの想いを体現したストリートレーシングカー。さらなる進化に期待したい。
●取材イベント:W-Option JAMBOREE 2021
TEXT:長谷川実路(Miro HASEGAWA)/PHOTO:長谷川実路(Miro HASEGAWA)/澤田 優樹(Yuki SAWADA)/小竹 充(Mitsuru KOTAKE)