定番の不具合を対策したリフレッシュ済み個体を狙え!

JZX100は、中古車市場で依然として高値安定を維持しているモデルだ。しかし、扱われ方が千差万別な中古車だけに、「価格が高いほど程度も良い」とは一概に言えず、1台を見極めるのは容易ではない。そこで頼りになるのが、JZX100を知り尽くした専門店の存在だ。今回は、そんな信頼のおけるショップ「たにぐち自動車」が手掛ける中古車の内容を詳しく紹介していこう。

全国から信頼される「たにぐち自動車」

JZX100オーナーなら誰もが耳にしたことがある、愛知県一宮市の「たにぐち自動車」。中古車販売だけでなく、メンテナンスやチューニングまで幅広く対応。他店で購入した不調車の修理にも対応するなど、まさに“駆け込み寺”的存在として、多くのユーザーに頼りにされている。

実際、顧客は北海道から沖縄まで全国47都道府県に広がっており、まさに“全国区”のショップと言っていい。ウェブオプションでも何度か取り上げてきたが、今回は同社が手がける中古車販売に焦点を当てる。

年式相応の劣化を見越した「リフレッシュメニュー」

「JZX100は1996年デビューですから、初期型ならすでに30年近く、最終型でも25年以上が経過しています。どんなに丁寧に扱われていても、年式相応の劣化は避けられません」と語るのは、代表の谷口さん。

たにぐち自動車では、目視やテスターによる点検、試乗を通じて車両の状態を総合的にチェック。不具合がある箇所には適切な修理や調整を施し、「リフレッシュメニュー」を完了させたうえで、販売車両として店頭に並べている。

経験と知識が光る、独自の車両チェック

20年以上にわたりJZX100に携わってきた谷口さんには、独自の“モノサシ”がある。車両の状態と照らし合わせることで、わずかなズレや違和感も見逃さず、「不調」と判断することができるという。

修理やリフレッシュ作業には基本的に純正パーツを使用。生産終了品については、オリジナルパーツで対応している点も特徴的だ。そこには、「オーナーに長く楽しんでほしい」という谷口さんの強い思いがある。

「JZX100は本来の性能を発揮できていない個体が多いです。若いお客さんほど仕上がったチューニングカーを求めがちですが、まずはノーマルの実力を知ってもらいたい。そのために、リフレッシュメニューを用意しています。購入後にトラブルが出て追加費用がかかるのは、お客さんにとってもマイナスですからね」。

要注意ポイントは「トランクフロア」

トランクリッドを開けた右側、リヤフェンダーとの接合部。新車時に施されたシーラーが劣化してすき間ができていたため、新たにシーラーを塗布。これでトランクルームへの雨漏りを防げる。

中古車を選ぶうえでのチェックポイントは多いが、谷口さんが「ここだけは必ず確認してほしい」と強調するのが、トランクフロア。スペアタイヤ収納部や左右の窪みに、雨水が溜まっていることが少なくない。

主な原因は、トランクパネルの継ぎ目やテールランプユニットのシーラー劣化によるもの。シーラーを打ち直すことで雨水の侵入を防ぐ処置が必要だという。「100系は特にひどいですね」と谷口さん。

チェイサーツアラーV:455万円

今回、5台を撮影した在庫車両の中で、谷口さんが特に推しているのが、このチェイサーツアラーV。1996年式の前期型ワンオーナー車で、これまでチューニング歴はなく、ホイールやマフラー、シートに至るまでノーマル状態が保たれた、奇跡的な1台だ。

唯一手が加えられているのはAT改MT仕様という点だが、ツアラーVではもはや定番とも言えるモディファイであり、むしろプラス評価されるポイントになっている。しかもミッションは純正新品が搭載されているため、コンディションや耐久性についての不安もない。前期型のイメージカラーだったダークグリーンマイカのボディ色にも注目したい。

チェイサーツアラーV TRDスポーツ:468万円

エンジンスペックこそ標準モデルと変わらないものの、フロントバンパースポイラーやリヤ大型ウイングなど、専用パーツの装着によってアグレッシブな外観を演出したTRDスポーツ。マフラーもTRD製に交換されており、生産台数は6000台前後とされている。

「TRDスポーツは水切りモールが黒いんです。なので、エアロパーツだけ装着していても、そこを見れば本物かどうか簡単に見分けられますよ」と谷口さん。これもワンオーナー車だ。

バルクヘッドに貼られたコーションステッカーが、本物であることの証。TRDスポーツには、この前期型ベースのほか、後期型ベース、さらには後期型でフロントバンパーのデザインが変更されたものなど、計3タイプが存在する。

マークⅡツアラーV:440万円

チェイサーよりも販売台数が少なかったこともあり、近年中古車価格が上昇しているマークⅡツアラーV。谷口さんいわく、「人気が集中しているのは純正フルエアロ仕様。サンルーフ付きなら、さらに高値で取引されていますよ」とのこと。

年式相応の経年劣化は見られるものの、走行距離が短く、全体的にヤレの少ない1台。エンジンはノーマルで、メーカーは確認できなかったが、メインパイプがアルスター製、サイレンサー以降がステンレス製の社外マフラーが装着されている。

内装もフルノーマル。4速AT車だけに、大人しく乗られてきたことがうかがえる。また、ステアリングホイールやATセレクターノブ、シートといった身体が触れる部分に擦れやヘタリもなく、新車同様のコンディションを保っている。

マークⅡブリットiR-V フォーチュナヤマハパワー:188万円

JZX100以外のJZ系搭載車も、たにぐち自動車の得意分野。エンブレムが装着されたフロントグリルは、フォーチュナ専用品。走りと実用性を兼ね備えたモデルで、サンルーフ付きの個体は非常に希少だという。ちなみに、フォーチュナヤマハパワーはJZX110マークⅡ iR-Vにも設定されていた。

ミッションは4速ATから5速MTに換装。走りの楽しさをより引き出すための手直しが行なわれている。1JZ-GTEを搭載しながら、JZX100より年式が新しく、台数も少ない=希少性が高いため、あえて狙ってみるのもアリだ。

クラウンアスリートV:148万円

スポーティグレードであるアスリートが、初めてカタログモデルとして設定されたJZS171。撮影車両は、外装を落ち着いた雰囲気のロイヤル仕様としている点に注目したい。白いボディにガンメタのBBS製ホイールが、大人の雰囲気を醸し出している。

エアクリーナーとマフラーの交換が行なわれている以外は、エンジンは基本的にノーマル状態。もしパワーアップを望むなら、たにぐち自動車ではオリジナルパーツとしてエキマニやタービンを用意しており、リクエストにも応じてくれる。

ミッションは4速ATだが、前オーナーの希望により、パーキングブレーキは足踏み式からサイドレバー式に変更済み。ドリフトベース車を探している人にとっては、検討する価値のあるモディファイと言えるだろう。

オリジナルパーツで実現する万全のユーザーサポート体制

販売車両すべてに“リフレッシュメニュー”が施されているのはもちろん、購入後の手厚いアフターケアを支えているのが、たにぐち自動車の誇るオリジナルパーツ群だ。

たとえば、前述の谷口さんイチ押し車両――1996年式のチェイサーツアラーVを例に挙げてみよう。

この車両では、VVT-iプーリー修理やタイミングベルト交換、カム&クランクシール交換、スロットルECUのオーバーホールといったエンジン系の作業に加え、リヤデフマウント交換や新品5速MT換装といった駆動系、さらにキャリパー&マスターシリンダーのオーバーホールや、ホースおよびディスクローターの交換などブレーキ系の作業も実施されている。

これらの詳細は見積書にも記されており、パーツ代だけでも188万3600円に上る。そう考えると、455万円という車両本体価格にも十分納得できるはずだ。なにより、万全のコンディションが約束されているのだから。

エンジンオーバーホール:2ヵ月に1基のペースで実施中

現在、約2ヵ月に1基のペースで施工されているというエンジンオーバーホール(脱着工賃込み100万円〜)。その内容は、分解したパーツを丁寧に洗浄・点検し、再使用可能な部品は活かすというもの。これは、オーナーの経済的負担を少しでも軽くするための工夫だ。

ただし、クランクシャフトは変形しているケースが多いため、ナプレックで修正。ピストンリングは必ず新品へ交換し、初期馴染みを良くするためにシリンダー内壁のホーニング加工も行なわれる。

VVT-iプーリーオーバーホール:純正より安く高性能

オイル漏れが頻発するVVT-iプーリーは、本来非分解式で新品価格が約4万円。しかし、たにぐち自動車では独自にオーバーホールメニュー(1万6500円)を設定。さらに小加工によって作動レスポンスも向上させ、アクセル操作に対するエンジンの反応を改善している。

入手困難部品も独自対応

新品がすでに入手困難となっているISCV(アイドリング制御バルブ)は、オリジナル商品としてラインアップ。分解して不調の原因となる内蔵モーターを交換し、6万3800円で提供されている。アイドリング不安定やエンストなどの症状が現れた際は、真っ先に疑うべきパーツだ。

純正タービンにインコネル製のエキゾースト側ホイールを組み込んだ耐久強化型の**オリジナルタービン(14万800円)**もラインアップ。装着時は燃料ポンプをサード製265L/hへ交換するのが推奨されるが、インジェクターは純正のままでOK。設定ブースト圧0.8キロのスタンダード仕様のほか、1.0キロ仕様の強化アクチュエータータイプ(15万6200円)も用意されている。

定番人気の5速MT換装メニュー

JZX81〜110系では定番化している**5速MT換装メニュー(61万9160円)**には、新品R154型5速ミッション、純正クラッチキット、MT用ECUのオーバーホール、脱着工賃がすべて含まれる。

新品ミッション単体での価格は26万円と比較的リーズナブルであるため、たにぐち自動車ではオーバーホールが必要なケースではミッションごとの交換を勧めている。

開発中の新製品も多数

ブレーキマスターバック(価格調整中)
純正品が生産終了となったことを受け、オリジナルパーツとして開発中。マスターバックが不調になると倍力が効かなくなり、大きな踏力が必要となるうえ、事故にも直結しかねない部位。現在は試作品で、2025年夏頃の発売を予定している。

ハイレスポンスファンクラッチ(1万9800円)
1JZ-GTEに採用されていたカップリングファン。経年劣化が多く、新品供給も終了しているため、ハイレスポンスな特製クラッチを開発。交換により水温の安定化やエアコン効率の改善が期待できる。

ECUオーバーホール:10年保証付きで安心

純正ECUは、内部の電解コンデンサからの液漏れが原因で不調をきたすケースが非常に多い。たにぐち自動車では、これに対し電解コンデンサを交換し、通電テストを経たうえで10年間の保証付きで販売。

  • エンジン用ECU:6万500円
  • 電子制御スロットル用ECU:4万9500円

いずれも、エンジンマネージメントの中枢だけに、トラブルが起きる前の予防交換が推奨される。

たにぐち自動車オリジナルエンジンオイル

通販で購入可能なオリジナルエンジンオイルもラインナップ。価格は1L:2200円、4L:8800円。鉱物油で、1JZエンジンには粘度10W-40が推奨されている。谷口さんいわく、「国産オイルの2倍長持ち。ロングライフ設計なので、交換サイクルも延びて経済的です」とのこと。

●取材協力:たにぐち自動車 愛知県一宮市浅野字大島9-2 TEL:0586-81-6660

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