「破綻ギリギリのデザイン・・・だがそれが良い!」スバル40周年記念特別モデル『ヴィヴィオT-TOP』を捕獲

これぞ極めつけの脱力系スタイル!

限定3000台で発売されたレアモデル

レックスの跡を継いで1992年に登場したヴィヴィオ。ボディ形状は3ドア/5ドアのハッチバックで、それベースの突然変異種が1993年5月発売のT-TOPになる。

スバル40周年を記念した特別モデルという位置付けで、ボディ架装は横浜の高田工業が担当。同社は日産のパイクカー(Be-1、パオ、フィガロ)やS13シルビアコンバチ、S15シルビアヴァリエッタ、K11マーチカブリオレなどを手がけた、いわばオープンボディ製作のプロ集団だ。

T-TOPは、そもそもがオープンカーとして設計されたカプチーノやビート、あるいはピラーとルーフをぶった切って幌を被せただけという、お手軽オープンのリーザスパイダーとはまるで生い立ちが違うわけで、その手の込みようから90年代前半に世に放たれた軽オープンの中でも孤高の存在だ。

当初、NAの直4SOHC“クローバー4”、EN07を搭載したアプライドAベースのモデルが3000台限定で発売。駆動方式はFF、ミッションは5速MT(52ps/5.5kgm)とCVT(48ps/5.6kgm)が用意された。

翌1994年2月には、アプライドCベースで64ps/8.6kgmを誇るスーパーチャージャー仕様のGX-Tが限定1000台で登場。駆動方式はFF、ミッションはECVTのみとされ、インテークダクト付きボンネットや大型フォグランプ内蔵フロントバンパーなど、外装もベースのGX系にならったものだ。

顔はヴィヴィオそのものなのに、横から見るとお世辞にもスタイリッシュとは言いがたい、アンバランス極まりない3ボックススタイル。それでも何とかデザイン的には破綻してないギリギリを守りつつ、ルーフからリヤウインドウ、テールエンドに至るラインが、外観における一番のハイライトと言っていいだろう。

そんなスタイルだけでもお腹いっぱいなのに、3分割式デタッチャブルトップに電動格納式リヤウインドウを組み合わせ、クローズドからフルオープン(Bピラーは残るが…)まで数パターンのボディ形状を楽しめるのがT-TOPの真骨頂。

左右ルーフだけを外したTバー、センターも取り払ったタルガトップ、そこにルーフの状態とは関係なくスイッチひとつで開閉可能な電動式リヤウインドウが組み合わされば、まさに“鬼に金棒”だ。

左右ドアに備わるエンブレムはT-TOP専用。また、スバルの軽としては初のサッシュレスドアを採用しており、このエンブレムが装着されている部分は、サイドウインドウをバタつかせないためのガイド的な役割も受け持っている。

標準は12インチの鉄チンだが、T-TOPではないヴィヴィオにオプション設定されていた13インチのBBSを装着。1本あたり4kgを切っている軽量ホイールで、155/65R13サイズのミシュランエナジーセイバーが組み合わされる。4輪ストラット式サスに加えて、このホイール&タイヤも軽快なフットワークに大きく貢献。

一方の内装は、まず専用表皮を使ったシートとドアトリムが目に飛び込んでくる。デザインも色使いもビビッドで、T-TOPの性格を最もよく表しているパートと言える。ちなみに、スーパーチャージャー仕様のGX-Tは内装色ブラックでスポーツシート装備…と、素のT-TOPとは180度異なる路線なのが面白い。

センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、マニュアルエアコン操作パネル、2DINオーディオスペース。ダッシュボード上部中央にはアナログ式時計が確認できる。また、ステアリングコラム右側にはリヤウインドウ開閉、リヤデフォッガー、電動調整ミラーの各スイッチが並ぶ。

シート&ドアトリム生地は水色に赤、ピンク、グレーなどがコラージュされたポップなもの。リヤシートは平らな板に薄いクッションを貼り付けただけで、シートと呼ぶにはかなりお粗末だったりする。

独立したトランクルームを持ち、実用に耐えるだけの容量を確保しているのが素晴らしい。トランクパネルを支持する左右のリンク機構も非常に凝った作りだ。また、トランクパネルにはキャリアが標準装備されるのだが、取材車両では取り外されていた。裏側にその名残が見て取れる。

スイッチ操作で開閉するリヤウインドウ。全閉から全開まで、おそらく5~6秒だと思う。ドア内側に貼られたコーションステッカーには「停車中に操作して下さい」との注意書きがあるが、走行中でも開閉は可能。開ければ一気に車内の換気ができるため、ヘビースモーカーには実にありがたい装備だ。

エアクリーナーボックスが目立つエンジンルーム。NA、SOHC仕様のEN07は5速MT仕様が52ps/5.5kgm、CVT仕様が48ps/5.6kgmで、それぞれの発生回転数も異なるなど、ミッションに合わせてチューニングされる。ストラットタワーバーはクスコ製。ネットオークションで落札したそうだ。

ちなみに、このT-TOPのオーナーは都内某所から茨城某所まで、ほぼ毎日通勤で往復200kmほど乗っているそうだが、以前のファミリアNEOより高速を走っていて疲れないのだとか。また、高速メインであれば燃費も22~23km/Lと、今時のエコカーにも負けない数値を叩き出していたりする。

聞けば、オーナーはファミリアNEO以前に初代プレーリーJW-G(思いっきり変態)や初代MPVグランツ(かなり変態)にも長く乗っていたそう。そんなオーナーの愛車遍歴に名を連ねることになったT-TOPは、もう変態グルマと認めざるをえない1台なのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:KY3
全長×全幅×全高:3295×1395×1380mm
ホイールベース:2310mm
トレッド(F/R):1220/1200mm
車両重量:730kg
エンジン型式:EN07
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ56.0×66.8mm
排気量:658cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:52ps/7200rpm
最大トルク:5.5kgm/5600rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/デュアルリンクストラット
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):135SR12

TEXT&PHOTO:廣嶋KEN太郎

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