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気鋭ビルダーの野心作がついに完成!
MAX350馬力の3気筒ターボを6速MTで操る
GRスープラの限定色“マットストームグレーメタリック”でオールペイントされたこのAE86は、エンジンスワップを得意とする“ダディーモーターワークス”が約1年を費やして完成させた超大作だ。なんとGRヤリスのG16E-GTS型ターボユニットを換装しているのである。
G16E-GTSは、1.6L直3ターボで272ps/37.7kgmを発揮。チューニング業界ではそのパフォーマンスの高さや手頃なサイズから、“ドナーエンジン”として注目されていたりするが、そこに目を付けて誰よりも早く行動に移したのがダディーモーターワークスの尾頭代表だったというわけだ。
「エンジンスワップ作業はそれほど難しくなかったのですが、ステアリングラックの位置決めにはかなり苦労しました!」と尾頭代表。
本来、AE86のステアリングラックは前輪中心よりも後ろ(後ろ引きタイプ)に取り付けられるが、そのままではG16E-GTSのオイルパンと干渉してしまう。この場合、オイルパンを加工してスペース確保するのが定石のチューニング法なのだが、「GRヤリスのオイルパンは2次バランサーが内蔵されていて加工できなかったんです」とのこと。
そこで、尾頭代表はAE86と寸法が近く前輪中心よりも前方(前引きタイプ)にステアリングラックを配置するNA型ロードスター(重ステ)用を移植することで対応。ちなみに、ステアリングシャフトはハンドル側に電動パワステ付きのワゴンR用を組み合わせている。
重要なエンジンマネージメントには、フルコンLINKの上級モデル“フューリー”を採用。ただし、G16E-GTSはポート噴射+直噴のデュアルインジェクター仕様で、LINKフューリーでは直噴インジェクターを駆動できないという問題がある。
そのため、ポート噴射インジェクターの信号を直噴インジェクター用に変換するイギリスのECUメーカー、サイベクス製アダプターを併用。これで直噴インジェクターもLINKで駆動させることに成功したのだ。
インタークーラーは水平マウントで配置。パイピングはワンオフのチタンだ。「G16E-GTSの寸法は4A-Gに比べて全長が40mm短いので、AE86のコアサポートを残したままこのレイアウトが実現できました」と尾頭代表。
タービンは純正のIHI製だ。ブースト圧はLINK制御で3段階に切り替えられるようにしており、出力はローブースト:270ps、ミドルブースト:300ps、ハイブースト:350psの設定となる。
一方のミッションは、ZN6純正の6速を流用。中古品が数多く流通していて価格的に購入しやすく、今後しばらくはパーツ供給にも不安がないという理由から選ばれたものだ。
搭載にあたってベルハウジングは4A-G(T50型ミッション)用を使用。その上で、エンジン側とミッション側にそれぞれ開発中のオリジナルアダプターを介することでG16E-GTS型に組み合わされる。クラッチはOS技研のワンオフツインプレートだ。
インテリアはワンシーターのスパルタン仕様。エンジン換装にともない、メインメーターはWindowsタブレットでLINKの情報を表示させるシステムへと変更している。
リレー&ヒューズ関係は助手席位置に集約(普段はパネルで塞がれている)。車体ハーネスまで含めて、これらは女性スタッフの岡田さんによる力作とのこと。
ターボパワーを受け止めるべく、ボディはフルスポット増し+ロールケージで徹底強化済み。シートはホールド性が高いレカロのRMSを導入する。
燃料タンクは純正を廃し、スピードマスターの安全タンク(8ガロン)をリヤトランク中央にマウント。同時にフューエルラインも引き直して、燃料供給不足によるトラブルを徹底的に抑え込んでいる。フューエルポンプはメインがサードの280L/h、コレクター汲み上げ用がアメリカ製だ。
足回りはHYR製の車高調(F6kg/mm R3kg/mm)を軸に構築。リヤのセッティング幅を広げるために等長リンク化しているのもポイントだ。ブレーキはフロントがBNR32純正で、リヤにはホーシングとの関係で初代エスティマ用をゴッソリと移植している。
ホイールは16インチのシェブロンレーシングS1C(F9.0J-3 R10J-7)で、タイヤにはアドバンネオバAD08R(F195/45-16 R215/45-16)を組み合わせる。
重要な駆動系は、クラウン(110系)に使われる7.5インチホーシングを加工流用。デフはOS技研のスーパーロックLSD、ファイナルはエンジンの特性を考慮して4.3に設定されている。
エクステアリはワンオフのワイドフェンダー仕様だ。ボンネットは4A-Gに比べてエンジンハイトが100mm高いG16E-GTSを収めるために、センター部が盛り上がったランフリー製を使っている。
「僕のエンジョイドリフト仕様って感じです(笑)。足回りのセッティングなどが大変ですが、早く全開で走らせたいですね」。ようやくカタチになった“我が子”を眺めながら、嬉しそうに語る尾頭代表(右)。
チューニング&カスタムの原点はクルマ遊びを楽しむこと。それを思い出させてくれるような官能性を秘めた真のGRハチロク、ともあれダディーモーターワークスの卓抜した想像力と技術力には脱帽だ。
●取材協力:ダディーモーターワークス 愛知県豊明市沓掛町神明13 TEL:0562-85-9911
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