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魔改造RX-7はかくして誕生した
RE雨宮GReddy(グレッディ)シリーズの誕生は1989年。ちなみに“グレッディ”というネーミングは、パーツメーカーであるトラストのブランド名に由来する。そのネーミングの響きが好きで、トラストに相談したところ快くOKがもらえたという。以降、東京オートサロンでグレッディの名を冠したチューンドロータリーを発表し続けるわけだが、どの作品も雨宮勇美(雨さん)の熱い想いが詰まっていることは言うまでもない。
雨宮勇美と稲田大二郎(Dai)が思い出を語る!
稲田:グレッディシリーズをこうやって見るのは久しぶりだね。どれもこんなに綺麗な状態で残っているなんて驚いちゃったよ。
雨宮:全部、自分で乗りたいと思うクルマを作ってきたわけだから手元に残しておきたかったんだけどさ。やっぱり、売ってお金を作らなきゃ次を作れないって事情もあったから、大事にしてくれるって人に譲ったんだ。どれも綺麗にしてくれてるんで嬉しいよね。
稲田:で、今回はRX-7ベースのグレッディシリーズとFC3Sの風林火山号が集まったわけなんだけど、グレッディシリーズって結局は全部で何台作ったの?
雨宮:FC3Sをベースにした1989年のグレッディ1から2003年に発表したファイナルまで、グレッディシリーズとしては全部で10台。途中でオーナーが変わって行方不明になったのもあるんだけどさ、調べてみるとFC3Sの4WD仕様として作ったグレッディ7以外は、全部きちんと日本に現存してるみたいだね。残念ながら、グレッディ7だけは海外に行っちゃったみたいだけど。
稲田:グレッディ1って超ワイドなJSSキットをストリート風にモディファイしたやつでしょ? 1989年に作ったクルマが残っているってのは凄いねぇ。
雨宮:嬉しいよね。まぁ、グレッディ1の場合はボディキットとしても発売したから、レプリカも結構あるんだ。でも、グレッディ2から4までは基本的にボディキット化しなかったから、事故ったら無くなっちゃうわけだし、それを言えばグレッディ6なんかもそうだな。今回集まってくれたグレッディはそれぞれのオーナーがリメイクしながら乗ってくれているから、どれも良いコンディション!
稲田:グレッディ2は全身ホワイトでビックリしたよ。あれも当時では新しかったよね。
雨宮:ポルシェ928がカッコ良くてさ。どうにかしてFC3Sで表現できないかなって。それとグレッディ1がワイドボディにしすぎて走りに行くと合わないステージもあったから、あえて50mmワイドに抑えて走りに振ったクルマだったの。完成した当時は、もう毎週湾岸で走ってたからね。
稲田:正直なところ、これだけあると迷っちゃうと思うんだけどさ、雨さんが思い出深いやつってどれなの?
雨宮:どれも気合入れて作ったクルマばかりだから決められないなー。久しぶりに見たグレッディ1なんかはやっぱり懐かしくなっちゃうよね。
稲田:この頃のRE雨宮デモカーは、ほとんど谷田部で乗ったことがあるな。僕にとっても懐かしいね。やっぱり衝撃的だったのがグレッディ3かな。全幅2メートルの大迫力に刺激されて、僕もNSXでワイドボディを作ろうって決心したくらいだから。それはそうと、雨さんって毎年色んなクルマを作っているけど、ああいうアイディアはどこから生まれるものなの?
雨宮:実は東名レース時代から俺の中でのライバルはポルシェなわけ。ブレーキにしてもコーナーリングにしても本当に凄いから、ライバルっていうか憧れだよね。でも、あんな高いクルマは買えないから安い国産ベースで作ろうとしたのがスタート。今でもポルシェは年に2回くらいは欲しくなるよ、カタチが嫌いだから買わないでセブンをチューニングしちゃうんだけどさ(笑)。気持ち良いよ、飛ばしてるポルシェをコーナーでアウト側からパツーンと抜くとさ!
稲田:雨さんの場合はクルマも良いけど、走りも気合入ってるから抜かれた方も気の毒って感じだ。でも、あれだけワイドなグレッディ3とかはポルシェ相手だと厳しくない?
雨宮:たしかに走りは厳しいんだけど、俺は走りだけじゃなく見た目も負けたくないんだよ。走りはポルシェが良くて、カタチはフェラーリとかカウンタックが好きだから、グレッディ3はフェラーリのテスタロッサに負けない2メートル仕様にしたの。本物と並んでも負けない格好良さというか、存在感を求めてね。でも、ガルウィングドアをカウンタックみたいに真上に開けられなかったのが、どうしても残念でさ。
稲田:それでグレッディ5を作ったわけね。
雨宮:そう。グレッディ5では油圧のダブルアクションにして真上にオープンできるようにした。なんたって油圧だからスイッチひとつでフルオープン、これもカウンタックと並んでも負けない自慢だね(笑)。
稲田:それと同時に、ここからグレッディシリーズのベース車両がFD3Sになったよね。
雨宮:うん。あの当時、FC3Sはやり尽くした感があったから。FD3Sのチューニングも進んで、色々とできることが増えたのも大きいよ。
稲田:そうした作品の中で、グレッディ6はやっぱり特殊だね。AZ-1ベースで、目指したのはマクラーレンF1だったっけ? これは改めて見ても大作。全てを詰め込んだ、夢のチューニングカーという感じ。
雨宮:マクラーレンF1はリヤだけだよ、Daiちゃん! ほら、当時のヨーロッパにはル・マンで走っていたCカーベースのロードカーが結構あったでしょ? そういうのを目指したんだ。足とかミッションはポルシェのCカーのヤツを使ったから走りもいけるし、ちゃんとナンバー付いてるから公道もOK。目立ち度でいったら、グレッディシリーズの中でもコイツが一番じゃないかな?
稲田:間違いないね。このシルエットは秀逸だよ。完成度が高すぎるもん。
雨宮:その後もグレッディシリーズを作り続けるんだけど、RX-8の時代にもなったということで10台目のグレッディファイナルでRX-7ベースとしては一応の区切りを付けた。どのクルマも、その当時やりたかったことが全て詰まっている思い出のクルマばかりだよ。
稲田:となると、FC3Sの風林火山号は異質な感じがするな。これってグレッディファイナルと同時期に発表したじゃない? ベース車両が戻っちゃっているみたいで、ちょっと不思議な感じがするんだけど。
雨宮:いや、やっぱりそれぞれの時代でできることって限られていたからさ。現代の技術でFC3Sを作ったら、どこまでイケるか試してみたくなったんだよ。だって、FC3Sの58秒台なんて当時じゃ想像もつかないタイムだったじゃない。最近は、FD3Sベースでもう1回思う存分やってみたいってのはあるかな。究極のライトウェイト仕様で筑波を走らせたい!
稲田:それはぜひともやってみてほしいね〜。
雨宮:ウチはストリートだけじゃなく、色んなレースに手を出してるでしょ。スーパーGTとかD1グランプリとか。それで分かったことも色々とあるわけ。タイヤとか走る場所が違うから全部ストリートカーに活かせるわけじゃないけど、レースシーンで得たノウハウは本当に大きいよ。
稲田:雨さんと久しぶりに会ったけど、まだまだやりたいことが沢山あるみたいで安心したね。伝説になりそうなチューンドロータリーをこれからも作り続けてくれそうだ。
雨宮:頑張るよ! これからも伝説って言うかさ、とにかくカッコ良いロータリーをバンバン作っていくからファンのみんなもDaiちゃんも期待しててよ!
●取材協力:RE雨宮 千葉県富里市七栄439-10 TEL:0476-90-0007
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